学校の先輩と家の幼馴染

さばりん

学校の先輩と家の幼馴染

 俺吉原友樹(よしはらともき)はごく普通の高校生だ。

 俺が通う高校には、学園のアイドルとも呼ばれる清水聡美(しみずさとみ)先輩がいる。聡美先輩は、文武両道なんでも完璧にこなすカリスマとして、学園内で一目置かれている先輩であった。


「今日も清水先輩は綺麗だ…」


 先輩が廊下を通っただけで、男子生徒たちはみな一同に先輩の姿に釘づけになり、うっとりとしていた。

 そんな清水先輩が同じクラスメイトとの方を向いてニコっと微笑んだ。


「なぁ。今俺たちの方見たよな?」

「おう、あれは絶対に俺に向かって挨拶してくれたよな?な?」


 クラスメイト達は、清水先輩に微笑まれ、誰に向けて微笑んだのかをあーだ、こーだ言い合っていた。


「やっぱり清水先輩は相変わらず人気者だなぁ…な、友樹!」

「お、おう、そうだな」


 友達に肩を叩かれ、俺は苦笑いを浮かべながら相槌を打った。

 まあ、クラスメイトの奴らの言い合いはなんも意味がなさないんだよな…俺はそんなことを頭の中で思いながらぼおっと清水先輩の方を眺めていた。

 それもそのはず、何故なら俺は清水聡美の本当の姿を知っているからだ。



 ◇



「ただいま~」


 玄関で一言言うと、ドタドタとリビングの方から駆け寄ってくる。女の子が1人いた。


「お帰り~友ちゃーん!」


 ダボっとしたスウェットに身をまとい、猛ダッシュで玄関の前に来たのは、先ほどまで学園でオーラを放っていたのと同一人物とは思えないニヤーっと顔を緩めた清水聡美であった。


 聡美姉ちゃんは玄関まで俺を出迎えると、ギュっとそのまま俺に抱き付いた。


「はい、お帰りのハグ~!!」


 力一杯に抱きしめられ、色々と成長した柔らかいモノが当たって、俺は身動きが取れずに聡美姉ちゃんが満足するまでじっとするしかなかった。

 満足して俺から離れた聡美姉ちゃんは、ニヤっと笑いながら唇を尖らせた。


「は~い、じゃあ次は、いつものようにお帰りのキスを…」


 俺は徐々に迫ってくる聡美姉ちゃんの頭を手でガシっと鷲掴みにした。


「あ痛っ…」

「何がいつものようにだよ!」


 俺の手から解放されスっと玄関の前に立った聡美姉ちゃんは、顔をプクっと膨らませていた。


「なんでよ~昔はよく『ただいま~お姉ちゃん』っていいながらキスしてきてくれたくせに」

「いつの時の話だよ全く・・・それは小学校低学年までの話だ、アホ」

「むぅ…」


 聡美姉ちゃんは隣に住んでいて、小さいことから一緒に遊んでいたいわゆる幼馴染というやつだった。元々運動も出来て、活発な女の子だった聡美姉ちゃんは、なんでも完璧にこなしてしまいかつ超絶美人だったので、よく近所の男の子からも告白を受けていた。

 しかし、聡美姉ちゃんはその告白を受けたことは一切なかった、なぜならば・・・

 見ての通り、見事なブラコンとでも言えるような、俺への執着心が半端ない甘えん坊構ってちゃんであるからだ。

 学校が終わるなりすぐに帰宅し、毎日こうして俺の家で俺の帰りを待っているのだ。

 俺の両親とも家族のように仲がいいため、合鍵まで持たせてしまっている始末である。



 俺はため息をつきながら靴を脱いで、家に上がる。

 その間もムクっと頬を膨らませながらご不満な様子で俺を見つめていた。


 俺はそのまま自分の部屋に向かうため、階段を上がろうとした時だった。

 聡美姉ちゃんは階段を登る俺を阻止して、前に入って俺を制止させた。


「じゃあ、友ちゃん、一緒にこの後遊ぼう。」


 無邪気な笑顔でそんなことを言ってきた。

 俺は、そのまま無視し、聡美姉ちゃんをはねのけて、自分の部屋へ向かおうとすると、聡美姉ちゃんは俺の腕を掴んで離さない。


「ねぇ、お願い!お姉ちゃんと遊ぼうよ。」


 まるで犬のように、構ってと顔に書いてあるかのように懇願の目を俺に向けていた。


「やだよ。子供じゃあるまいし。」


 そう言うと、今度はニヤっとした上目づかいで大人びた表情を浮かべ、俺の腕をわざと聡美姉ちゃんの胸に挟んだ。


「なっ・・・///」

「じゃあ、大人な遊びなら、お姉ちゃんと遊んでくれる?」


 聡美姉ちゃんは、キョトンと首をかしげ俺をじぃっと見つめてきた。


「いやぁ…それは…」


 俺は思わず目を逸らして口ごもってしまう、それを待っていたかのようにププっと聡美姉ちゃんは体を震わせた。


「あはは…冗談冗談!!」


 俺の腕を解放し、両手で口元を抑えてケラケラと聡美姉ちゃんは笑っていた。


「グッ…」


 俺は完全に聡美姉ちゃんにからかわれてしまった。

 ふいっと視線を逸らして階段を登ろうとすると、再び聡美姉ちゃんに腕を掴まれた。


「ねぇ!」


 俺は再び聡美姉ちゃんに顔を向ける。


「それで…遊んで・・・くれる?」


 無邪気な笑顔でキョトンとした可愛らしい表情に、俺は思わず見とれてしまう。

 俺が何も言わないのを不審がったのか首を曲げて俺の目を覗き込んできた。


 俺は、咄嗟に目を逸らして、一つ咳払いをした。


「はぁ…ちょっとだけだぞ」

「本当に??やった!」


 聡美姉ちゃんは嬉しそうにピョンピョンと跳ねていた。全く、俺は聡美姉ちゃんにいつも甘々な気がする。


「とりあえず、着替えるからちょっと待ってて。」

「あ、着替え手伝ってあげるよ!」

「いらねぇっての!」

「それとも…私を脱がせたい…///」

「そういうこと言うやつとは遊んでやらねー」

「あーごめんってばー」


 そんなやり取りを部屋に向かいながら、今日も聡美姉ちゃんとの甘々な日々は続いていく。

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