二番レジ
寺池良春
二番レジ
それは、いつもの事だった。
普段から行くスーパーの2番レジ。
そこにはいつも一人の同じ店員さんがいる。
だが、誰も並ばないのを不思議に思っていた。
でも、そこはいつも看板が立っていて他のレジへ並んでくださいと書かれていた。
幼心でもそれが疑問であったが、親にいうといつも「レジの調整中だから」と言われた。
だが、親が凄く不思議そうに眉をひそめているのに疑問があった。
なんだか、少し困ったような表情をしていたのを今でも思い出せる。
そのレジの店員さんだが、本当にいつもいた。
どんな日に行っても、時間に行っても、いつも同じ人が立っていた。
雨が降ろうが、雪が降ろうが、土日祝日だろうが。
ずっとその店員さんはそのレジにいたのだ。
それは小さい頃から続いていたから、小学生に上がる頃には不思議ではなくなってしまった。
そんなある年。自分が中学生になる頃、スーパーが取り壊されてリニューアルする事になったという新聞の記事を見た。
通学途中に通る道にあったスーパーだったが故に新しくなることに少し寂しくなると思った。
そして工事が始まった。
隠されるようにかけられた布。
それを見ながら通学する日々が続いた。
そんなある日、いつものように通学している時、ふと見やると布の隙間からある物が見えた。
それはいつも会計に他のレジへ並んでくださいと置かれていた2番レジだった。
そして、そこには案の定同じ店員さんが立っていた。
工事中なのに何でいるんだ?
そう思った自分はジッとその2番レジの人を見ていた。すると、2番レジの人はゆっくりとした動作でこっちへと振り向いてきた。
だが、彼女が動くのを初めて見た自分だったが故に眼は釘付けだ。
その時思い出されたのは、彼女の顔。
だが、思い出せる彼女の顔は暗くはっきりしないのだ。
そう思うとしっかりどんな顔であったか見たくなってしまう。
そしてゆっくりと振り向く彼女と目があった。自分はそれで目を疑った。
そう彼女の顔には、 二つの目と二つの
だが、それ以外が見当たらない!
すると彼女はゆっくりとした足取りで近付いてくる。
その動きを見ていた俺は動けなかった。
その時、彼女の事を作業員が通り抜けたのが見えた。
逃げなきゃマズイ!
そう思った瞬間、体が動いき一目散に逃げ出した。
走って走って、そして後ろを確認する。
その俺の視線の先には誰もいなかった。
一息つく自分。
なんとか逃げられた。そう思ったそんな俺の耳に「いらっしゃいませ」と聞こえてきた。
見れば明るい光で2番レジと書かれ、そこにはあの女が立っていた。
そして、あるはずのなかった口が、顔を覆う皮膚を破って出来ていた。
そんな女の口が動く。
二月二十二日、オゾンスーパーセンター二番館近日リニューアルオープン!
店内、充実の品揃え!お客様をより一層夢中にさせます!
そして更に更に!なんと二十四時間営業を取り入れます!是非新しくなるオゾンスーパーセンターをよろしくお願いいたします!
「どうですかこのCM!絶対良いですよ!」
「いや、なんでホラーテイストなんだよ。二番煎じ感半端ないし」
「いや、これくらいインパクトあった方が目は引きますって!」
「インパクトしか無いだろ!全く、よく考えろ」
「いやいや、客の目を引くのはこれが良いんですって!」
「いや、ダメだろう。全く、わが社の功績二番目だから期待したのに。次!二番目の案を出してくれ」
こうして会議は続くのであった。
終しり
ーーー
END
二番レジ 寺池良春 @yoshiharu-t
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