第5話:現在の世界に帰らねば1

 翌日、徳川泰平は、須賀川さんにお礼を言い、家を後にし、東京駅へ向かった。

 そして1965年10月2日、電車を乗り継いで、東京駅を降りると、また、

以前行った所へ向かうと、壁に、穴が見つかり、もしかして、以前の様に、過去

から、現代に戻れるかも知れないと思い、おそるおそる入って見ると、以前と

同じ様な臭いと湿り気がして、頭に水がかかったと思うと、再び、意識を失った。

 少しして、暗闇の中に灯りが見え、駆け足で、壁から出た所で、頭を殴られた

感じがして倒れた。その後、おい、大丈夫かと言う声で目を覚ますと、数人の

若い男性が、お前、飛び込み自殺しようとしたのかと聞かれ、そんな事されたら、

他の人が大きな迷惑を被るんだぞ、わかったか、甘ったれてるんじゃ無いぞと、

怒鳴られた。とりあえず、すみません、ごめんなさいと謝ると、仕方ねー、

今日は、警察に突き出すのは、やめてやるが、二度と、こんな真似するじゃ

無いぞと、言われ、ハイわかりましたと答えた。


 若い連中がいなくなると、おもむろに立ち上がり、駅のベンチで、意識が完全

に戻るのを待った。30分位しただろうか、気分が戻ると、喉が渇き腹が空いた

ので、キヨスクでパンとジュースを買って、駅構内のベンチで食べて、完全に

回復するまで、2時間近く休み、駅を降りると、以前、謎の穴に入り込んだ駅と

同じ駅だった。カバンの中を探ってみても、書類、株の価格の長期データも無事、

財布の中身は、18万円増えていた。暗くなってきたので、実家へ帰った。実家

に帰ると、お帰りと言うだけで、特に変わりは無く、迎えてくれた。


 そこで、とぼけて、今日は、何月何日だっけと母に聞くと、泰平、どうしたの、

銀行って、そんなに大変な仕事をさせられてるのと言い、1976年1月13日

の夜20時半だと言った。そ、そうーだよね、ただ、確認しただけだよと言うと、

変な子ねと、笑った。その後、風呂には入り、夕食をとって、床についた。


 1976年は1月20日頃から2月6日頃まで、北陸、新潟、山形、青森、

北海道でで大雪の年となった。東京でも1月21日から25日まで、最低気温が

-4℃と、例年にない低温で、一部で水道管が破裂する騒ぎが生きた。3月にな

ると、梅が咲き、普通の年と同じように季節が巡り4月を迎えて、埼玉銀行にも

新人が入行してきた。


 1976年、同じ浦和商業高校出た、1年下の後輩で入行3年目の斉藤志保

さんの仕事の面倒を見るように、上司から言われて、行員の入出金計算の検算の

仕方を教えて、実際に、やってみせて、その後、一緒に検算をするようになった。

その後、1976年4月に、残金が100万円になったので、もう一口100万

円の定額貯金を始めた。株の本を読んでみると、儲かる株は、成長する株は、

技術力のある株で、有名な株で安全な株は、大型株と書いてあり、将来、急成長

する株は、個性的は業態の株だと書いてあった。

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