第48話 MRI検査

あと20日でアキレス腱断裂から1年になる。

1ヵ月ぶりで、主治医のO先生のところに行く。

MRI検査のためだ。

前回、MRIで状況を確認して欲しいとお願いしたからだ。

朝早く、県リハ(県立リハビリテーションセンター)に行き、

診察の順番を取る。

5番だ。

MRI検査は、予約で朝一の9時半からで、

その後の診察の順番取りだ。

MRIも何度か撮っているので、勝手は分かっている。

左足を固定するため、身体の右半分がやや台の金属部分に触れるので、冷たい。

足首の撮影だが、首下までドームの中になる。

これが、閉所恐怖症の人には無理だという。

目をつぶっていればいいと思うが。

ヘッドフォンから、誰だか分からない歌声が流れる。

カバー曲ばかりだから、曲は分かる。

その歌声が消えるほどの大きな打撃音が何度も発生する。

動かないで下さい

と言われるので、全身に力が入り、肩が凝ったり、疲れる。

20分ほどだが、もっと短い時間で出来ないのか、

エコーのように簡単に撮影出来るようにならないのか、

と毎度思う。

MRIを撮り終えて、整形外科の受付に戻ると、

20分ほどで診察室へ。

O先生、

「どうですか。何か変化はありましたか。」

「大きな変化はないかも知れませんが、以前ほど痛みはありませんし、

宇両足でのつま先立ちは出来ます。」

「前回の注射で良くなった感じがしますか。」

「初めての時ほどの変化はなかったですが、ジワジワ効果は出た気がします。」

前回と今回のMRIデータを比較しながら、

「水のような固まりがあるのですが、やや小さくなっています。

アキレス腱も反骨組織でくっついているんですが、

それなりに機能しています。ベストな状態ではないですが、

このままでもいけるんじゃないかと思いますね。」

「真面目にリハビリしてますよ。1年もリハビリ続ける人はなかなかいないでしょ。」

「頑張ってると思いますよ。U先生からもうかがってます。」

手術回避。

まあ、私の中では、結論は出ていることだが…。

O先生、3月で転勤だとU先生から聞いていたので、

それを確認しようかと思ったが、やめた。

「次は、何もなければ、3月に。」

3月、最後なんだね。

同じ日、U先生の診察。

「今日、MRI撮ってきました。」

「どうでしたか。」

状況を話して、つま先立ちも出来るというと、

やってみてくださいと言われて、

両足で立ってみる。

「右足に重心はかかりますね。」

ふくらはぎを掴むと足首が多少動く。

「今日は、動きがいいですね。癒着はあるので、いい時と悪い時があるみたいですね。うちにもエコー入るんで、これからは僕も注射出来ます。

O先生は、3月までなんで、今まではO先生が主治医なんで、僕があんまり出しゃばらないようにと思ってやらなかったです。今後は、しっかり診ていきますんで。」

U先生との信頼関係は、とても築けそうにない。

もし、あの日、県リハの当直がU先生だったら、

保存療法も可能だと言って、その選択肢を示してくれただろうか。

今でも、保存療法ではね~などと言う。

私は、保存療法だから駄目だったとは思っていない。

たまたま色んな事が重なって、順調でなかっただけだと思っている。

むしろO先生には感謝している。

手術、入院となったら、どれだけ大変だったか。

1人暮らしなので、子供たちに戻ってもらう必要があったろうし、

確定申告や会社への連絡など多くの作業が出来なくなっただろう。

在宅だったので、PC作業は出来る。

いつもより早く確定申告出来たし、

仕事が出来ない分、色んな資料を作成出来た。

出費もほとんどなしで乗り越えられた。

助かったのだ。

その結果として、回復に時間がかかっているわけだが、

歩けてるし、ゴルフも出来ているし、

仕事もそれなりに出来る。

今年、還暦を迎える。

若くはない。

それなりでいい。

病院で車椅子や松葉杖の患者さんを見かけると愛おしささえ感じる。

リハビリは、まだまだ続くのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る