第13話 復帰?
装具は、強力なマジックテープで固定するので、
所謂向う脛を締め付ける。
痛いな~
ハンドタオルを挟んでみる。
いくつかのブログに
装具は、室外でも室内でも装着したままなので、
靴底を拭かなくてはいけないとあった。
しかし、今回私がもらったのは、
室外と室内用に靴底が取り替えられるようになっていた。
雨の日のために、大きめの靴カバーもついている。
そのうち歩き方も慣れるだろう。
2回目のお店出勤。
ビールを切らしていた。
こういう夜の飲食店は、配達店を持っていて、
一部は、鍵を預けて配達してもらったりする。
うちは、少しでも安くするため、
ビールは、私が運んでいた。
中瓶1ケースは、かなり重い。
駐車場から運んで、階段は、何度も休憩して運ぶ。
今は、それが出来ないし、私ほど力のないあきちゃんにも頼めない。
「ビールないんです。」
で済ますか。
いや、それはまずいよね。
思ったように買い物が自由に出来る状況にならなかったことに
少々打ちひしがれていたが、
こんなことしてる場合じゃない。
車に乗って酒屋に行った。
松葉杖をついて、1本の日本酒を手に取るが、
右手、左手に持ち替えながら1歩ずつしか進めない。
カウンターで、ビールの配達を頼みたいと言うと、
レジの子は、店の場所が分からないと言って、
男性に変わった。
「今日、そのビル行きますよ。7時40分頃ですね。分かりました。」
配達料はかかるもののこれで安心。
空瓶も持って帰ってもらえる。
本当は、色々買い物したかったが、両手に松葉杖ではやっぱり無理。
階段を1歩ずつ上がる。
ビールがドアの前に届いていた。
ちょっと、遅かったか。
冷蔵庫にもう1本しかなかったビールを補充。
9時になっても誰も来ない。
先週来た人は来ないだろうし。
10時前。
T君現る。
私のいた家電メーカーの後輩にあたるT君。
実際に接点はないが、Facebookを見て心配してくれていた。
「あら、1人?みんなと飲み会じゃなかったの?」
「はい、皆は、ラーメン行きました。後で来ると思いますが、
僕は、ラーメンいらないし、ママさんに会いに行かないとと思って。」
「ありがとう。」
「元気そうでよかった。足は、どうなんですか?」
装具の足を見せた。
T君の奥さんも同じ会社の正社員。
娘が2人いる。
まだ、30代。
去年のお店のクリスマス会に家族で参加しないかと誘ってみた。
早めの時間に始めるし、厳選したお客さんばかりだからと。
残念ながら、娘さんのクリスマス会と被った。
「今年のクリスマス会には、家族で参加します。だから、それまでお店は続けて下さい。」
彼が、真面目な顔をして言った。
その頃、同じ職場のメンバーが揃ってやってきた。
「どうなんすか、足?」
「切れた時、音しました?」
色々質問。
教育長も教育調整監と、最後だからとご来店。
税理士のDさんも。
「確定申告ももう落ち着きましたか?」
「今日、全て終わりました。」
笑顔で、
「今日は、どうしても来ないといけないと思って。」
「ありがとう。当分、ゴルフも出来ないんだけどね。」
「落ち込んでるみたいだったから、心配してたんですよ。」
イケメンに心配してもらえて、嬉しいです。
そんなこんなで上機嫌。
来週からは、平日も営業予定。
車で行くからお酒は飲めないが。
階段が、まだ不安だが、もう休んでもいられない。
帰宅して、湯船にお湯を張る。
どれくらいぶり?
浴室は、最も危険な場所なので、湯船には入らない。
今まで通り椅子に座ったままだが、
一度も洗えなかった左足を湯船につける。
温まる。
それにしても汚い足。
お湯をかけながら、ゆっくり擦る。
ついでに、浮いて来る垢だかなんだかを
すり落とす。
とことんやりたくなるけどそれはね。
足首も少し動かしてみる。
焦らず、少しずつ。
だって、もう毎日洗えるんだから。
クリスマスまで… うん。
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