第3話※




「信じられない、もう諦めていたのに」


寝台の縁に2人で座りながら、兄上がぽつりぽつりと話をしてくれた。


「最初は、可愛い弟が出来たと思っていたんだ。だが時が経つにつれ、ただの好きじゃないことに気づいた。お前は兄上と言って慕ってくれたが、俺はそんなお前を汚してしまいそうで怖かった。だから、俺は距離をあけようと思って騎士団へ入ったんだ」

「僕に会いたくなかったから、騎士団へ……」

「会いたくなかった訳じゃないよ。俺の気持ちがバレて嫌われるのが怖かったんだ」


嫌うなんてことは絶対にない、と断言出来る。


「騎士団へ入っても、家に帰る度フェルはますます綺麗になっていって、どんどん惹かれてくんだ。いつ間違いを起こすか、自分を信用出来なくなったから、もう家へは帰らない思っていた矢先にお前から来た」


兄上にぎゅっと抱きしめられる。額にキスを落とされて、気恥ずかしくて顔が赤くなった。


「好きだ、愛してる。……もう離してやれない」

「僕も、好きです、兄上を、あ、愛して、います」


幸せな抱擁は解かれ、兄上は立ち上がった。


「もう遅いだろう、送っていく」

「も、もうですか?」

「そうだ。俺は何するか分からないよ」

「ぁ、兄上になら、……何をされても、大丈夫です」


「馬鹿言え」と、頭を軽く叩かれた。


「……明後日、また俺の部屋においで。泊まっていくといい」

「は、はいっ」


ちょうど2日間の休みが続いている日だ。兄上と、長く一緒に居れる。嬉しくて口角が勝手に上がってしまう。


「おやすみ、フェル」

「はい、おやすみなさい、兄上」


寮の前で、頬にキスをされる。不意打ちだったので、ビックリして二三歩後ずさってしまったが、急に顔に熱が集まるのを感じた。






「うぅ~~~」


顔が熱い。寝台で顔を覆ってうつ伏せに寝転びながら足をバタバタと動かす。胸が暖かくて、まさに幸福。幸せが胸を満たしてきて、溢れそうになっている感じだ。


「はぁ、どうしよう……。兄上も僕が好きだなんて……」


自覚したのは今日だが、本当はもっと前から、いいや、人生に絶望していた僕を見つけてくれたあの瞬間から、僕は兄上が好きだったのかもしれない。

兄上はずっと一緒にいてくれて、優しくて、強くてかっこいい。考えれば考えるだけ、早く兄上に会いたいという気持ちが募った。






それから何事もなく2日が過ぎ、僕は兄上の部屋にいた。

兄上が紅茶と、一昨日渡したお菓子を出してくれる。綺麗に盛り付けられた焼き菓子は香ばしいアーモンドの香りがした。


「兄上が入れてくれた紅茶、とても美味しいです」

「なら良かった」


兄上がソファで座っている僕の隣に腰掛ける。


「あ、あにうえ……?」


顔が近くなったと思ったら、唇が触れ合いそうになるくらいまで来た。驚いて少し顔を引くと、兄上は楽しそうに笑った。


「夜に恋人の部屋を訪ねてくるというのは、こういうことじゃないの?」

「こっ、恋人!?」

「違うかい?」


少し声色がしゅんと落ち込んだような、そんな感じ。兄上が落ち込んでいる姿なんて新鮮。僕は慌てて首を振った。


「ち、違わないです!恋人、です……」

「それはそれは、安心した」


頭をぽんぽんと撫でられる。子ども扱いは嫌だけど、撫でられるのは好きだから複雑な気持ちだ。


「ん……、っ」


唇が触れ合い、兄上と3回目のキスだ。兄上が顔を少し斜めにしたと思うと、唇をペロリと舐められる。強くつぶっていた瞼を開けると、兄上はこちらを熱っぽい瞳で見つめてきていた。すごく恥ずかしい。


「フェル、強く閉じられては、俺がお前の口内を堪能出来ない」


そう言ってもう一度口付けられる。

今度は唇を少し開いてキスをした。水音が、部屋に響いて何だか変な気分になりそうだ。頭がぼうっとし始めた頃に、胸元がスゥーっと涼しくなった。

兄上は巧みなもので、キスと同時進行で服を脱がしていたのだ。

するりと肩からシャツを降ろされて、上半身が顕となる。女の人のように乳房が膨らんでいる訳でもないが、兄上を前にすると、上半身ですら見られるのが恥ずかしいと感じた。


「あ、あにうえ、……そんなとこ……」


カリカリと、爪で引っ掻くように突起を触られる。するとみるみるうちにそこは硬さを帯び、ぷくりと大きくなってしまった。


「……硬く尖ってきた。あぁ、顔をこんなに真っ赤にして……恥ずかしいのかい?」

「ぁ、……ぅぅ……や、です、そこっ」

「顔も赤いが……こっちも赤い」

「い、じわるなこと……いわないでください」


兄上はそのまま顔を下に落とし、胸に舌を這わせていった。人に肌を舐められるのは初めてで、なんとも言えないぞわぞわ、ぞくぞく、変な感じ。それとともに、背中がびくりと弓のように沿って、身体が震える。


「ぁっ、なめ、ないでっ、あにうえ……っ」


硬くなった尖りを解すように舌でぺろぺろ舐められたり、押し潰されたりした。しまいには歯で軽く挟まれ、コリコリと潰される。痛くはなかったけど、ずっとぞくぞくしていた。もう片方は兄上の手でずっと刺激を与えられていて、僕はもう胸だけでも頭がついていけてなかった。


「あっ、ぁに、う、……ふぁっ」


兄上がベルトに手をかけたところで、僕は待ったを掛けた。


「ぼっ、ぼく、お風呂に入っていないので、だっ、だめです!」

「……そうか、なら先に風呂へ入っておいで。湯は張ってあるから」

「あっ、ありがとうございます」







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