第38話 買い物
知識その他色々仕入れて村を発つ。鶏がかわいそうなんで、十分村から離れ人目がなくなった休憩時間に箱庭に転移して置いてきた。
取り敢えず土魔法の壁で囲み、鶏を放す。生き物は飼わないつもりだったのをあっさり撤回。水辺も草地もある、放し飼い万歳。
今回の旅の目的は牛肉と豚肉、小麦を安定して手に入れられる場所に転移ポイントを設定すること。
豚は実はカバラにもいた。ただ残飯だけならともかく汚物も食ってる掃除屋扱いだったんで見なかったことにした。あれは無理。
食べ物は俺のいた世界に似ている、ただ季節や天候の影響を受けて供給が不規則なのと、料理の仕方が保存食系か食中毒を恐れているのかしっかり火を通す系ばかりなだけで。あと豚からもわかる通り素材を良くしようと言う方向には行かないみたい? 「たくさん収穫したい」が優先。
神々の様子からして同じ素材から好きなようにカスタマイズして世界を作っている風だったし、一応その中でも俺が飛ばされても生きていける世界を選択してくれたみたいだし、似ているのは当然といえば当然かもしれない。
似ているからこそ違いがきつい。おなじお米だけど、白米と玄米くらい違うかんじ?
俺は健康的な肉を求めてはるばる行くよ!
「馬、頭いいな」
そしてファレルとミナに少し乗馬を習っている。
この世界、長距離を楽に移動しようと思ったら馬に乗るか馬車に乗るか。一応習っておくことにしたのだけど、馬がよく馴らしてあって乗れさえすればあとは馬が運んでくれるという……。
「よく調教されておとなしい馬を選びましたから」
「普通に移動するぶんには馬任せでいいね。魔物や野盗に襲われた時に馬を御せるようになっとかないと」
ぐふっ。そういうわけで早足から始まって、ちょっとした斜面を降りるやり方、自分が疲れない乗り方、馬が疲れない乗り方などなど次の街に着くまで数日。ノアールの身体能力が反則なので覚えたけど、馬によって癖が違うのでこれでパーフェクトとはいえない。
馬は二頭、俺が基本ロゼでいて二人乗りだから。馬が疲れちゃうので、ミナのお胸から離れるのもしかたないんでファレルと馬にも乗ってます。
食料は箱庭経由でファレルの家に転移すればどうとでもなるのでかなり楽な旅だと思う。家に行ったらパン酵母の元の入った瓶を振って蓋を開けて外気に晒すのも忘れない。おいしいご飯のためには努力は惜しまないよ!
順調だったのがいけなかった。
「おい。なんでここにいる?」
うっかり追いついちゃったよ!
借りた馬を戻し、新しい馬に借りかえる貸し馬屋の前でカディたちが出てきたところに遭遇。
俺たちには食料を手にいれるための狩とか釣りの時間はいらなかったし、先行してたカディたちが邪魔な魔物をある程度倒してたはずだし、追いつくのは当然といえば同然だ。
「ご飯のバリエーションを増やしに?」
幸いロゼでミナにくっついてたからよかったけど、ノアールだったら契約期間が終わってないミナが追求されるとこだった。二ヶ月だからそろそろ終わっちゃうけどな。
まだ俺のお胸ですよ〜。
カディにベリっとされないように位置取ってミナのお胸に顔を埋める。ふふん。
「なるほど。でしたら次のトローアの町までですね?」
「!?」
流れる動作でハティにべりっとされて微笑まれた。なんで参戦してくるの!?
「今日は旅の準備に充てて明日は出発でいいな? さっさと馬を預けて新しい馬の予約しちまえ」
そしてカディに引き渡される。
「あっしのお胸〜〜〜!!」
なぜだ!?
「だからなんで普通に私って言えないんだ、お前」
カディがうろんな目を向けてくる。
「バルグ殿たちはどうしたんですか?」
何気ない感じで話しかけ、カディから俺を奪取するファレル。そのままミナのお胸に戻してくれていいのよ?
「ヤツといるとどうにも腹が立ってな。ギルドから書状を出してもらって四人揃わねぇと手続きできねぇようにした。王都に着くまで別行動」
肩をすくめてみせるカディ。
「あんたらは急ぐんだろ? こっちはのんびりだよ」
ミナのお胸に戻りました。ここが定位置だとぺったりくっついて主張しておきますよ。
そしてミナの言う通り、なんで一緒に行く流れなんです?
「ミナ殿は契約がそろそろ切れるのでは?」
笑顔のハティ。
なんだろう? カディはともかく、ハティは親切だけど俺にそんなに興味なさげだったのに。
「迷宮で助けられたしね、こいつに永久就職さ」
「!?」
このお胸は俺のもの!?
大興奮でたぷたぷしたらカディにまた引っぺがされました。尻派といいつつさてはたぷたぷしたいんですね? 譲りませんよ?
「こいつと離れるとどうも胸がざわつく。少しましになったかと思えば、近くにいたわけだ」
「――最初はカバラなのかと思いましたが。考えられるのは私たちが仕えるべき方がロゼのそばに現れるということ」
『盟友紋』優秀すぎる。
「ここで言い合っていても仕方がありませんね、馬を返して明日の予約だけ入れてきましょう。続きは宿で」
場所は町の入口近く、人通りはないけどちょっと目立つ。大きな町か、カバラみたいに迷宮があるなら町の入口にそれなりに人がいるのかもだけど、畑に行くのは日の出とともになので今の時間、町の出入りは少ない。旅人も少ないしね。
そしてお買いものタイムです。
この町はカバラより小規模でカバラより雑多じゃない。そして雰囲気の変化は木と土の家になってるのが大きいかな。
チーズの種類が増えた! 俺の感覚では臭いものも多かったんだけどだいぶ慣れてきたし、好物ですよ!
「先に必要な物を買いましょう。あまり量が多くなると馬が疲れてしまいます」
ハティにやんわり止められる。
「トローアのほうが種類が多いですし、品質もいいです。作っている場所にゆけばあるいは手に入れられるかもしれませんが、いいものは高く売れる町に流れるんですよ」
えーって顔をしたからか、俺の目的がトローアに行くこと自体ではないのを思い出したのか、ハティが付け加える。
そういうことならと旅行用の品を整える。俺がじゃなくてファレルたちがだけど。
と言っても、お店は旅支度用の用品が集まってる雑貨屋一軒と食料品店の一軒だけだけど。パン屋は別にあるみたいだけど、今回寄らない。
食料品店にあった一回焼いて半分に切ってもう一回焼いたパン。保存性抜群で一回水にくぐらせて食べる。ここから主要な町は川沿いにあるので普通の保存用のパンより人気がある。俺は水よりスープにつけた方がいい気がするけど。
他にはいざという時のための無茶苦茶硬いビスケット。木の実、干しイチジク、蜂蜜酒。蜂蜜酒の値段が上がったのはカバラから離れたせいだろうか? 物価が安定しない。
旅の準備は面倒だけど楽しい、チーズも二種類買ってもらった。
「お父さん、これ買って〜」
小さい子が親の手を引いて揚げ菓子をねだっている。
「お父さん、チーズもう一個買って〜」
「誰がお父さんだ!」
カディを見て言ったらぐりぐりされました。
「お母さん、チーズ買って〜」
言い直してもぐりぐりされましたよ。
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