一章 目覚める者
第1話 転生
とある森の中、一つの人影が起き上がる。
「ぬぅ?此処は……そうか……来たんじゃな……異世界に」
人影……否、少女は小さな手を握ったり開いたりしながら見た目と鈴が転がるような声に似合わない口調で感慨深いといった様子で呟いた。
少女は周りを見渡し、すぐ近くに寝ているダウンジャケットを着た少女と円筒形の被り物をした青年を見つけ、2人に近づき揺すりながら呼びかける。
「お〜いハクノー、
幾度か呼びかけていると、漸く2人が起きた様で
「ふぁあ、何処?ここ」
「んあぁ?知らない天井……」
ハクノと呼ばれた少女が目を擦りながら欠伸をして身体を起こし、之布岐と呼ばれた青年は顔を伺うことはできないが寝惚けた様子で起き上がった。
そんな2人の姿を見ながら少女は呆れた様な表情を浮かべながら口を開く。
「ほれ2人共しゃんとせい!先ずは状況確認じゃ」
「へーい」
「集まるのが早ければ起きるのもはやいんだね、シキさん」
シキと呼ばれた少女はニヤっと笑みを浮かべ
「当然じゃ。ワシは優秀じゃからの」
と嘯く。
「ところで此処は?」
「何処かの森ということ以外判らぬ」
「優秀じゃなかったの?」
「煩いわ」
之布岐の問いにシキが答え、ハクノが茶化す。
「それよりもじゃ、2人共身体に違和感とかないか?」
「ボクは大丈夫だよー」
「俺も問題なし」
「うむ、あとは身体すぺっくの確認じゃな」
「それよりも」
之布岐がシキの言葉を遮り
「2人の喋り方……何?」
「ぬ?」「あ……」
違和感に気付きシキとハクノに問いかける。
「そういえば……」
「うむ……気づかなかったのじゃ……」
「わざとじゃなかったん?」
「うん。自然とこうなってた……シキさんも?」
「そうじゃな、勝手にこの口調になりおるわ」
きっと女神のせいだとの結論に至った。そしてその結論が事実だという事は3人には知る由もない。
「よし、改めて身体の確認じゃ」
気を取り直して都合良くあった近くの泉に姿を映して自分達の身体を眺める3人。
シキの見た目はゲーム通り145cm程の身長、紅い瞳と真白い髪に力を込めただけで折れてしまいそうな程細い手足と腰、そして最も特徴的なのが髪の毛同様の真っ白な毛に包まれたモフモフの狐耳と尻尾を持つ美少女だ。服装は黒を基調として所々に逆十字があしらわれたドレス、そして頭には魔女が被る様な三角帽子からモフモフの狐耳がどういう原理か飛び出していた。
シキは自分が造った身体がちゃんと反映されていることに対する感謝を女神に捧げ、他の2人を見る。
ハクノはシキと同じような身長で、薄紫色の髪を後ろで束ねていて、楽しそうな笑みを浮かべる顔は美しいというよりも可愛らしく、守ってあげたくなる様な少女だった。服装は黒が基本色のダウンジャケットに身を包み、背中には可愛らしいぬいぐるみのような見た目の盾を背負っていた。
之布岐は高めの身長で、青白いローブと黒いズボン、紅いマフラーを巻いていて頭にはストーリー序盤のボスの頭部を象った『ゴーレムヘルメット』を被っていた。
姿の確認を終えた3人は思い思いに感想を言い合う。
「やはり愛いのぅ……流石ワシじゃ」
「ホントかわいいよねシキさん」
「そうじゃろうそうじゃろう」
「ボクは!?カワイイ?」
「うむ、可愛らしいぞハクノ」
「えへへ……」
「あの……俺は?」
「お主は只のゴーレムメットじゃろう」
「比べるのも烏滸がましいと思わないの?」
「…………」
膝を抱えていじける之布岐を見て笑い合う現女性陣。
暫く自分達の見た目で盛り上がる3人は時間も忘れ騒いでいた。
「ところでもう日暮れだけどどうする?」
「「あっ」」
「もしかして何も考えて無かったの…?」
ハクノの何気無い一言が2人の時間を止めた。
「「「………」」」
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