211 絶ち切る

 獣人族の皆さんと一緒に輪っかを抜けて神域へ戻る。

「まーう」

 ああ、羽猫も居たな。居ても居なくても一緒だから、そんなにアピールしなくても大丈夫だぞ。


 と、玉座の間に戻って思ったんだけどさ、ここの巨大ゴーレム――というか、パワードスーツ……これを身につけて探索すれば楽になるんじゃないだろうか。幸いなことに通路は、この巨大な鎧を身につけても普通に通れるくらい広いからなぁ。


 ……まぁ、でも、今回は普通に歩いて探索するか。このパワードスーツはもう少し操作を練習して使い慣れてからだな。


「姉さま、どうしたのです?」

「えーっと、なんでも無いです。先ほどの場所まで戻りましょう」

 俺の言葉に赤髪のアダーラが頷く。


 さあ、出発だ。


 今度は道が分かっているので自分が先頭になって歩く。


 と、そうだ。


 タブレットを通路にかざしながら歩こう。


「姉さま、何をやっているのです?」

 俺の行動を不思議に思ったのか赤髪のアダーラが話しかけてきた。んー、この反応ということは、やはりアダーラにも俺が手に持っているタブレットが見えていないのか。タブレットが見えないアダーラからしたら、俺は、常に手を前にかざして歩いている怪しい人だよなぁ。


「あ、えーっと、敵が潜んでいないか確認しています」

「さすが姉さまです!」

 簡単に納得して理解してくれた。まぁ、そこは、うん、アダーラだしな。


 んで、タブレットをかざしながら歩いている理由だ。アダーラに言ったように敵を探すためだな。姿が見えなかったゴーレムだが、もしかしたら、このタブレットなら感知出来るんじゃあないかと思っての行動だ。


 歩く。


 分かれ道をゴーレムと戦った場所の方に曲がる。


 と、ん?


 しばらく歩くと通路の真ん中に反応があった。鑑定用の待ち時間の目盛りが表示されている。


「ちょっと待ってください。ここで止まってください」

「姉さま、どうしたのです?」

「前方にゴーレムが居ます」

 まず間違いないだろう。


 と、その俺の言葉を聞いた赤髪のアダーラが槍を構え動く。って、おいおい!


「待て」

 俺は慌てて叫ぶ。赤髪のアダーラが槍を水平に構え、飛び出そうとした格好のまま止まる。

「姉さま?」

「えーっと、ちょっと試したいことがあるので自分に任せてください」

「さすが姉さまです!」

 赤髪のアダーラが鋭い瞳を和らげ笑いながら構えを解く。何がさすがか分からないが、このアダーラさん、本当に考えるより動くって感じだよなぁ。それが良い場合もあるのだろうけど、現状だと考え無しの困ったちゃんでしかない。俺が言えることじゃあないのかもしれないけど、もう少し経験を積んで、落ち着きを持って欲しい。


 と、とりあえず本当にゴーレムなのか鑑定の結果が出るまで待って、それからだな。


 しばらくタブレットをかざし続ける。


「姉さま?」

「えーっと、ちょっと待ってね」

 赤髪のアダーラはあまり待てが出来る性格じゃあないようだ。本当に、この娘は……。


 んで、鑑定結果は、と。



 ガーダー

 レベル:1

 エスティアを守る護りに特化した真銀製の自動人形。


 んむ。鑑定結果は予想通りだな。にしても、なんでレベルが『1』しかないのだろうな。作りたてだからだろうか? これ、何処かにゴーレムの制御装置みたいなのがあるんじゃあないか? そこを上手く操作すれば味方に出来そうな気もするんだけどさ、まぁ、今は無理か。うん、考えすぎても駄目だな。


 と、それでは試したいことをやってみるか。


――[シード]――


 まずは蕾の茨槍から種をいくつか生み出す。その種を拾い、ゴーレムが隠れている場所に投げる。


 ……。


 ゴーレムは反応しないな。この程度では姿を現さないか。


 ではッ!


――[グロウ]――


 ゴーレムが隠れている辺りに散らばった種から鋭い天然の槍が生まれる。連なった球体の姿のゴーレムが現れ、そのまま槍の勢いによって空中へ打ち上がる。まぁ、貫けないよな。だが、これで動きは奪った。


 俺は右手の槍を起動し、駆ける。


 ゴーレムを見る。


 ゴーレムの中に流れている魔力を見る。漏れている魔力は微弱――本当に注意しないと流れが見えない。


 蕾の茨槍に魔力を流す。


 何処だ? 流れを絶ち切るのは何処だ?


 ゴーレムの中の魔力を探し、蕾の茨槍で貫く。槍に纏わせた魔力でゴーレムの中の魔力を絶つッ!


 その一撃を受けたゴーレムが、繋がりが解けたのか、バラバラの球体になって散らばる。


 魔力で球体をつなぎ合わせていたのだろう。


「えーっと、もう動かないと思います」

 一撃必殺だぜ。

「さすが姉さまです! また回収して、あそこに戻るのですか?」

 俺は首を横に振る。


「えーっと、多分、今度は普通に持てるくらい軽くなっていると思います」

 今度は完全破壊だ。


 内部の魔力は消えている。


 普通に持てるだろう。


「団長、御屋形様の言う通りです。めっちゃ軽いっ!」

 獣人族の皆さんが楽しそうにバラバラになった球体を持ち上げている。


 これで普通に回収しながら先に進めるだろう。


 さあ、このまま奥にある扉まで探索だ。

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