204 起動!
「えーっと、プロキオンは魔人族を率いて農業をお願いします」
「お任せを」
魔人族の里で農業開始だぜ。
「それではウェイは蟲人族を率いて建物の建設をお願いします」
「ひひひ、お任せくだされ」
島の方に食堂や家を建てて貰うぜ。
「ミルファクは料理人さんのために鍋とか頼んでも良いですか?」
「武器を頼まないところが帝らしいさね」
まずは食べることが重要だからさ。
「料理人さんはこれから人が増えると思うので、大変だと思いますが料理をお願いします」
「何人か料理に興味がある人を借りますよ」
一人じゃあ沢山の料理を作るのは難しいから、それは仕方ないな。
「アヴィオールはその翼で人の運搬を頼みます」
「ん? ふむ。良く分からないがそれなら我の里から何人か連れて来よう」
良く分かってないようだが、何となく理解してくれているようだ。
「まーう」
「えーっと、お前はとりあえず、適当にしててくれ」
羽猫にとりあえず役目はないなぁ。うん、無い。
「姉さま! 私は!」
「あ、はい。アダーラと獣人族の皆さんは、とりあえず一緒にこの神域の探索をやりましょう」
「任せてください!」
獣人族の皆さんには戦力として頑張って貰おうか。まぁ、でも神域は俺が居ないと入れない場所ばかりだろうから、うん、一緒に行動だな。
「と、そういう感じで皆さんお願いします」
そういう感じです。
「ひひひ、これこそ帝だね」
「ええ。良いと思いますよ」
「ああ、私も協力するさね」
「さすがは姉さまです!」
「おおー!」
「料理ならお任せください」
「まーう」
「ふむ。良く分からないが、これは我が食べても良いのだな? 食べるぞ」
一人目覚めたばかりで状況が良く分からず、うどんのようなものを食べ始めている天人族も居るが、皆、協力してくれるようだ。まぁ、人の運搬は納得してくれているようだから良しとしよう。
と、俺もうどんのようなものが冷める前に食べてしまおう。
もしゃもしゃ、ごっくん。
もしゃもしゃ。
ずずっとスープも飲み干そう。美味しいけど、普通だな! まぁ、渡した魚醤を使えばもっと美味しいうどんになるだろう。
「うむ。これはまあまだな!」
天人族のアヴィオールは綺麗に食べ終えた後にそんなことを言っている。
「精進しますよ」
それを聞いた猫人の料理人さんは余裕の表情だ。まぁ、材料がないから、料理の質が落ちるのは仕方ないよな。そんな中でも普通に美味しいうどんもどきを作るだけでも凄いよな。
そして食事が終わる。
さて、と。
食事が終わった後は大事なことがある。
「えーっと、プロキオン、それではゴーレムを起動しましょう」
俺の言葉を聞いた魔人族のプロキオンが目を輝かせる。待ちに待った瞬間だろうからな。まぁ、蟲人のウェイの言葉を信じるなら、目覚めてもイマイチって感じみたいだけどさ。
「ええ、お任せください」
「で、えーっと、どれを起動するんですか?」
ゴーレムは十二体並んでいる。それぞれデザインや持っている武器が微妙に違っている。
どれを起動するかは重要だよな。
「ええ、それは決めていますよ。あちらのゴーレムです」
プロキオンが向かったゴーレムは弓を持ったゴーレムだった。
弓かぁ。
でも、弓って矢が必要になるだろう? 凄い微妙な気がする。まぁ、でも、これはプロキオンが求めていたことだから、プロキオンが望むままにやって貰おう。
魔人族のプロキオンが弓を持った巨大な全身鎧姿のゴーレムの裏にまわる。そして、そこから魔石を加工して作られた光輝く動力を差し入れる。ほー、そこから動力を入れるのか。
そして、ゴーレムの止まっていた時が動き出す。
弓を持ち直立していたゴーレムがゆっくりと動き、こちらを向いて膝を付く。それはまるで騎士が王を向かえているかのような姿だった。
うん?
動きが止まった?
何かを待っているかのような……。
「ひひひ、動かなくなったね。古すぎたのかね」
「うむ。所詮はゴーレムだな」
「何を言う。そんなはずはない」
魔人族のプロキオンが慌てている。そりゃあ、やっと動いたと思ったものが止まったらなぁ。
でも、何が原因だろう?
どうしたものかと俺は動きを止めたゴーレムの方へ近寄ってみる。
え?
動きを止めたゴーレムの胸部が開く。
え?
俺を待っていたかのような動きだ。
巨大な全身鎧姿のゴーレムの胸部の中は、ちょうど人が一人すっぽりと収まるほどの隙間が空いていた。
まさか、これは……?
俺はゴーレムの開いた胸部の中に手を伸ばす。その手が、俺自身が、ゴーレムの中へと吸い込まれる。
「帝!」
プロキオンの叫び声。
俺はゴーレムの中に取り込まれ、そしてその胸部が閉じられる。
暗闇。
良く分からない状況だ。だが、俺は不思議と落ち着いていた。
……そういうことか。
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