メルシー ミルフォア/LUPICIA 全国区
たしかにわたしは紅茶が好きだった。
学生の頃はよく、リプトンのフレーバーティーを買っては飲み比べてみたり、それこそ大阪LUCUAにあるLUPICIAに赴いて、匂いのテイスティングしてみたり試飲してみたりもしていた。
お気に入りは、ホワイトクリスマス。ホワイトチョコっぽい香りのある紅茶。見た目も白い金平糖っぽいやつが入っていて、まさにホワイトクリスマスっぽい商品になっている。まあ、季節限定ということで、もし見つけたら香りだけでも試してほしいとおもう。
紅茶が好き”だった”、と過去形なのは、他の飲み物も飲むようになったからだ。
いまの職場では圧倒的にコーヒー派が多く、いつのまにかわたしもコーヒー派になってしまっていた。牛乳好きということもあって、カフェオレを常日頃から飲んでたってわけ。
しかしだ。
あまりにもガバガバコーヒーを飲むもんだから、マグカップを持つ手が妙に震えてしまってね。
そう、カフェイン中毒ってやつ?
まさかとは、おもったよね。てっきり都市伝説の類だと。
キーボードもうまく扱えなくなるとか、お仕事に支障出ちゃうじゃん。
ということで、ちょっとの間コーヒーを断つことになった。それこそサントリー伊右衛門特茶ジャスミン、鉄観音やプーアル茶などの中国茶やマテ茶など見境なくのむようになった。
最近になって後輩がオーストラリア土産として、紅茶T2のフレンチアールグレイなんかを買ってきて、紅茶っていいなって改めて感じていた。
*
先日、いつものご近所さんから、うっかり明日開催されるフラメンコ公演のチケットをもらってしまった。
貰う約束をしていたチケット一枚とチラシが玄関に挟まっていたのだが、その後「こういう時は二枚渡すもんだぜって妻から言われたもので。」とわざわざ旦那さんがうちに来てもう一枚わたしにくれたのだった。
ふむ、困ったものだ。
チケットには大人二千円と書いていたので、四千円分もらったことになる。ご好意でいただいたチケットは無駄にはできない。
しかし、急に誘える相手なんて、わたしにはほぼいない。増して、フラメンコに興味がありそうな奇特な人間なんて。
いるのは、わたしの弟子くらいか。
そう考えているうちに、わたしは弟子にDMを送っていた。
『明日暇ですか? フラメンコを観に行きたいかどうか。』
『ハイパー行きたいです。』
即答だった。
翌日、弟子と文化会館に出向いた。
わたしは相変わらず、時間にルーズなところがあるので、着いた頃にはすでに公演ははじまっていた。
公演、といっても発表会と書かれていたので、まあいわゆる素人演技かなと思ってい
たのだが、意外と本格的で、ラテン音楽の生演奏に演者もタップダンスを交えながら踊っていた。
先生のソロ演技も見応えがあって、わたしが好きな岡村ちゃんもこういう部類から派生したのかな、とも感じた。
ご近所さんの出番も無事見届けられたし、まあ、チケットは無駄にならなかっただろう。
弟子も「明日職場に行ったら、わたしの休日は優雅なんでちょっとフラメンコを鑑賞に、とか言っときます」といっていた。
そうか、優雅な休日って、こういうやつなのかもしれないな。
*
フラメンコ鑑賞の翌日、ちょうど、わたしの紅茶好きを知っていた職場の上司から、LUPICIAの展覧会が近くであるということで、会員になったら?と勧められた。
HPで確認してみたところ、その会員になるには税込3240円分のお買い物をしなくてはならないらしい。たしかに学生時代はそれだけ紅茶につぎ込む予算はなかったな。とはいえ、それだけのお買い物は福袋買うか、贈り物の時しかないだろうな、とも。
ということで、チケットのお礼は紅茶にしようとおもったのでした。
紅茶を送るとか、なんてオシャレなん?
その週末、早速近くのLUPICIAに行った。狭いスペースながら、豊富な種類のお茶が並んでいるのでいつも感心する。
紅茶だけではなく、緑茶や中国茶もあったり、それらも果物や花のフレーバーティーがあったりする。お茶も、似ているようで全然違う個性を持っていて、人間みたいだなっておもった。
「どうぞ、試飲していってくださーい。」
と店員さんから受け取ったのは、グレープフルーツ緑茶だった。夏らしいサッパリとした味。
これをご近所さんに送ってもいいのだが、どうせ送るなら、お菓子とかなにかとセットにしたいな、なんて考えていると、ちょうどその上の棚に不思議な小ビンがならんでいた。
半透明の茶色い液体がはいっていて、アールグレイだの、さくらんぼだの、ローズヒップだの書いてある。
そう、ティーハニー、別名紅茶ハチミツだ。
ティーハニーなんて超絶オシャレだし、これもらったら嬉しいだろうなーっておもった。気づけば、買い物かごにそれを入れていた。
フレーバーはゆめ。バニラ香るやつらしい、というのは、さきほど茶葉の香りを試していて知っていた。
あとは、メインの紅茶だけなのだが。
「なにかお探しですか?」
さきほど試飲のお茶をくれた店員さんが声をかけてくれた。
このティーハニーに合いそうな紅茶を聞いてみたところ、近くにあった紅茶を紹介してくれた。それが、“メルシー ミルフォア”だった。
匂いがベリー系でさわやかな感じ、バニラの香りとぶつからないか聞いてみたけれど、まあ問題ないそうだ。
最悪、ティーハニーはヨーグルトとかにつかってくれるだろう。
ギフト用のメルシーミルフォアの缶詰包装、ティーハニー ゆめと、箱代、それから自分用に買ったキャラメレとテオレ、ジャスミン茶の3つを購入、全部で税込3330円。
『予算金額100円以内に無意識で計算できるとかわたしったらなんてお買い物上手』
無事、わたしはギフトも買え、LUPICIA会員になることもできたのだった。
*
帰り道で知ったのだが、“メルシー ミルフォア”とは、Merci mille fois、つまり、たくさんのありがとうという意味だそうだ。
ぶっちゃけ、チケットのお礼としては重すぎる名前のものを選んでしまったな、とおもったのだが、まあいいとしよう。
『わたしは気高い貴族ですから、紅茶をギフトに送るんですの。』
なーんつってな。
投稿ボタンを押した。
今から、渡しに行く。
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