学校で女子更衣室を荒らし回ってる変態野郎。怪人フクロウ男、お兄何でしょ!

雨月 梅雨

第1話 KAC1

「お兄に率直に質問します」

閑静な住宅街、広々とした庭を持つ築10年、2階建て4LDKの一室でベットに腰掛けた妹はヤスリで足の爪を削る兄に問い詰める。

中学生になってから何処かよそよそしく自宅でも子供の頃の様に懐いて来なくなっていた妹の数年ぶり部屋への来訪に兄は少々驚いた。

漫画でも借りに来たのかと茶化してやろうかと考えていた兄であったが、いつに無く鬼気迫る妹の形相にそんな気持ちも失せてしまっていた。

「ん?どうした?何が聞きたい?」

堅い表情を崩さない妹に出来るだけ優しく聞き返す兄。けれど妹は直ぐには話さない。壁に掛けた時計の秒針が静かな部屋にコツコツと無機質な音を立てる。じっと見つめてくるだけで何も言わない妹。その沈黙が兄には妙に居心地が悪かった。

「聞きたいことがっ」

「お兄さ、お兄ってさ、」

「お、おう」

沈黙に耐えられなくなった兄が話の続きを促そうした時、妹は初めて聞くような低い声で話し出す。3歳ほど年下の妹であったが今ばかりは妙な迫力に兄は気押される。

いつの間にか妹の右手には3年ほど部活で使い込まれている竹刀が握られていた。

「お兄が怪人フクロウ男の正体なの?」

「はぁあ?」

妹のその問いに兄は素っ頓狂な声しか出なかった。怪人?フクロウ男?何より其れを

自身に正体なのかと問うてくる質問の意図が理解できない。

混乱する兄に妹は続けて問う

「今、学校で女子更衣室を荒らし回ってる変態野郎。怪人フクロウ男、お兄何でしょ!」

「はぁああ?」

竹刀を振り上げながら先程よりも強く問い詰めてくる妹に兄は思考が働らかない。女子更衣室、変態、怪人、そんな事が頭をグルグル回っている内に妹が竹刀を振り下ろす。

ひらりと竹刀を躱す兄の脇腹めがけ、問いに否定しない事を肯定だと認識したらしい妹の二撃目がせまる

「身内の恥は身内が処理する。更生にはっ、必ずっ、付き合う、から」

ぶんぶんと振り回すたびに速度の上がる竹刀を兄は紙一重で躱し続ける。

「はぁあ?だから、ちょっと待てよっ」

4LDK、2階の一室ではその後しばらくの間争う男女の声が続いていた。

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