スマホ

もう一人の自分

私が持ち歩くこの小さな四角い箱の中には、

現実世界とは違う、もう1人の私がいる。

本当の私が、そこにいる。

現実世界の私は、明るくて強くて、

笑いの絶えない、元気っ子。

けれど、それは本当の私じゃない。

本当の私は、このスマホの中にいる。

本当の私は、笑うことが嫌いで、

病みやすい弱い人間で、承認欲求の塊で、

誰かに支えてもらわなきゃ死んでしまう。

現実世界では、本当の私は生きていけない。

強い人間が勝ち残る、醜い世界。

だから、私は強い人間を演じることにした。

本当の私をこのスマホに閉じ込めて。

今日も私はスマホを開く。

偽りの仮面を外し、本当の私になるために。