瞬きで零れ落ちる涙。

茶々

プロローグ

「ねぇ、痛いんだけど」

「い、痛いってなぁ。あんた…」

 燃える夕焼け。ここは学校の屋上だってのに、こんなにチャイムの音が遠く聞こえるのは何故なんだろう。まるで世界から切り離されたように彼女と二人。黄昏時に女子と屋上と二人だなんてなんてロマンチックなんだ。


 しかし、まさに切り離されようとしてるのは僕ではなく彼女の方であった。


「お、重い」

「頑張りなさい。女の子と二人きりで夕日をみながら、こうやってお互いを熱く感じ合ってるんだから」

 確かに熱い。しかし、そこには皆が思うような男女のアレコレは存在しない。僕の腕にだけ一方的な想い乳酸が時間経過とともに溜まっていくだけである。

「だったら、もう少しだけでいいからとする意思を示してほしいんですけど」

「ふふ、面白いこと言うのね。自殺志願者を前にとしてだなんて。助けられたかったら屋上から飛び降りてないわよ」

 目下の彼女は宙ぶらりんになりながらそんなことをのたまう。いや、確かにその通りなのだが、「はい、そうですか」とその言い分を認めるわけにはいかない。何はともあれ–––


「引き上げますよ」

「しょうがないわね」


 彼女は心底嫌そうに、渋々といった様相で僕に助けられるのであった。

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