人工知能について思うこと④(終)

「パイオニア減速問題はほぼ解決してるといっていいんじゃないかな。でもその方面はあまり詳しくないので、次の機会に話そう」

「期待しないで待ってます。でも、先生の言うように、人工知能は感情を持たない論が徹底的に通ったら、世の中がつまらなくなりそうですね」

「別につまらなくする必要もないさ(笑)。それに、僕は人工知能が感情を持たないと言っただけで、存在が感情を持たないとは言っていない。どの存在も、人間のような感情を持たないだけで、もしかすると人間には理解できない感情を持ってるのかも知れないよ」

「話が急にオカルトっぽくなりましたが……」

九十九神つくもがみっているでしょ?物は長く使っていると、魂が宿るといった話だよ。怪談と片付けるには無視できない何かがある。龍安寺りょうあんじの石庭を見てると、ただの石が何か意思を持ってるように思えてくることがある」

「まあ確かにそんなことはあります」

「『見えるもの』だけではすくい切れない『残余』の部分が、『見えるもの』より小さいと言う保証はどこにもない。もし人工知能が、人間に理解できない感情を持ったとしても、『理解できない』ことすら人間は気付けないかもしれない」

「なるほど」

「では、僕の好きな荘子の斉物論篇から引用して、このダイアローグをしめくくることにしよう。『庸詎いずくんぞ吾れ謂う所の知の、不知に非ざるを知らんや? 庸詎いずくんぞ吾れ謂う所の不知の、知に非ざるを知らんや?』」

「どういう意味ですか?」

「自分で調べなさい」



 ――終――

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