第21話むざむざと破れた約束

あの井の頭公園の約束を交わした夜から一週間が過ぎていた。

街の商店街は夕方になり夕飯を買う主婦や

仕事や学校から開放され家に帰る人達でワイワイ賑わっていた。


モモはゆりのために絵本ギャラリーのトミーファイルに行ってオーナーと話した。

「こんばんは。はじめまして。」

「こんばんは。あなたは何の用?」

「実はいとこが音楽の作曲の仕事をしていて、

 オーナー様の次回作の最後のページの

 音楽を担当したくて、

 いとこの音楽を一度聴いていただけないでしょうか。」


オーナーはモモをみつめポツリと言った。

「いいよ。」


「ありがとうございます。では、明後日いとこを連れてきますね。

 その時音楽も聴いてください。」

「うん。わかった。」



モモは、はりきってギャラリーを後にした。

ゆりちゃんに早く報告したい。楽しみ。


モモはまたも公衆電話を街で探し出し使用した。


プルルルル・・・


「・・・はい。もしもし・・・。」

「ゆりちゃん!?トミーファイルのオーナーと今日話したんだけど

 明後日ゆりちゃんの曲聴いてくれるって!!

 明後日ならいいよね!?」

「・・・ごめん。モモちゃん。実は、宝くじで7億円が当たって

 もう働かなくても一生東京で生活していけることになったの。

 私は音楽やめる。

 


 モモちゃんの芸術活動を応援してる。またね。」

プツッ・ツー・ツー・ツー・ツー


電話は一方的に切られた。








モモは相談する相手を間違えたのだろうか。

あの井の頭公園の夜の約束は何だったのだろう。


モモは泣いた。


そして、めずらしくゆりの好きだったタバコを吸った。

苦くてプカプカ煙が目に染みた。


そうしているうちに夜に終わりを告げモモは茜色に染まった。


進む道は暗闇で黒く煙にまかれ悲しみに暮れても

当たり前のように夜というものは残酷にもあけるのだった。


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