2月号 それでもこの冷えた手が 1
少女はその冷えきった冷たい手を擦り合わせ、息を吹き掛けながら、辛うじて立っていた。
「このマッチを擦れば、少しは温まるかしら?」
少女は風を避けて路地に入り込み、震える指先で何とか一本、マッチを取り出した。
「あぁ、あったかい…」
温かな炎は少女の冷たい手だけではなく、心にも染み込むように温めてゆく。
「あれは何かしら?」
炎から目が離せない少女は、マッチが燃え進み、指先が炎に近づくのも構わず見つめ続ける。
「美味しそうなご馳走…」
瞬きもせず炎に見入る少女の瞳孔は開き、口からは涎が垂れる。
「あっ、ああ、待って!」
消えてしまった温もりを求めて、少女はすぐにマッチを擦る。
「お父さん!お母さん!」
炎の中に、死んでしまった両親が見えた。
「私も、私もそこへ逝きたいの!」
雪の中に膝まずき、少女は祈る。
「どうか私を死なせてください…」
少女の雪よりも冷たい頬をつたう涙が落ちる前に
少女の意識は堕ちた。
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