2541話 囚われのコーネリアス!?

結局門番は上に取り次ぐとだけ言って中に入った。コーちゃんがいるのは分かってんだから隠しても無駄無駄ぁ。

なお宝貨はチラ見せしただけで渡してない。


十分ぐらい経っただろうか。門番が少し偉そうな男を連れてきた。


「当家の白蛇に何用ですかな?」


「当家の? うちの白蛇だが? それはともかく、この家にいるなら案内してもらえるか? 迎えにきたんでな。」


「当家に入り込んできた以上それは最早当家のものですな。この者が何と言ったかは知りませんが用件はそれだけですな?」


ふーん……そういうこと言うんだ。もしかしたらコーちゃんが世話になったかも知れないし、それならお礼も必要だと思って正面から訪問したってのに。


「それならいいわ。邪魔したな。」


「またのお越しをお待ちしております」


イラッ……




「どうするのカース?」


「とりあえず呼んでみるね。」


正門から少し離れた。ここで……


『魔力探査』


うん。間違いないね。やっぱコーちゃんはあの建物内にいる。


『コーちゃん、聴こえるかい? 今近くにいるんだけど出てこれるかい?』


これでいい。後は待つだけだ。


「少し待とうか。たぶんすぐ出てくると思うよ。」


「それなら問題ないわね。コーちゃんたら心配させるんだから。」


コーちゃんにしては珍しいね。カムイと二人でいなくなることならたまにあるけどさ。




「ピュイピュイ」


コーちゃん! 塀の上からぽとりと落ちてきた!

待ってたよ! やっぱ無事だったんだね!


「おかえりコーちゃん。」


「無事でよかったわ。」


「ガウガウ」


「どうやって呼んだんだよ……」


それでコーちゃん、どうしたことだったの? 誘拐されたわけじゃないと思うけど……


「ピュイピュイ」


あらま……そうだったんだね。それならまぁ、仕方ないのかな?


「えーっとね、コーちゃんが言うにはさ…………」


シュガーバが連行された建物を離れて私達の宿へと向かおうとしていた途中で迷子の子供を発見したのね。泣いてる子供を放っておけないコーちゃんはくるくる回ったりして慰めているうちに懐かれたのね。コーちゃんかわいいもんね。


しばらくそうしているうちに家の者が発見。コーちゃんを追い払おうとしたところ子供が激しく抵抗したのか。よほどコーちゃんに懐いたと見えるね。

で、家に帰ろうとするも子供がコーちゃんを離さない。コーちゃんがその気になれば容易く離れることはできるんだろうけど、コーちゃんとしても子供の泣き顔は見たくなかったわけね。

それで仕方なく家までお持ち帰りされちゃったわけか。で、着いたら着いたでお菓子やらミルクやら出されてご機嫌だったのね。酒も催促してみたけどさすがに通じなかったのか……


そうこうしているうちに何やら催し物が始まったらしい。数人の吟遊詩人が来て歌や演奏を披露したとか。門番が間に合ってるって言ったのはこのことだな。

それが楽しかったせいで時間を忘れて滞在しちゃったのね。


「楽しかったのね。それなら仕方ないわね。」


「自宅に吟遊詩人呼ぶとはどんだけ金持ちなんだよお」


「ピュイピュイ」


あらま、そうなの? コーちゃんったら優しいんだから。


「コーちゃんがね。その子が寝るまではここにいるって。寝たら帰るってさ。」


「コーちゃんたら優しいのね。」


あ、そうだ。だったらコーちゃん、その子にこれをあげてよ。コーちゃんがいなくなっても寂しくないようにさ。


「ピュイピュイ」


コーちゃんとカムイの姿が刻まれたミスリルコイン。宝貨にも見える芸術品だぜ。

尻尾で器用に受け取るコーちゃん。こうやって行く先々で人と交流するのも旅の醍醐味だからね。行ってらっしゃいコーちゃん。


「ピュイピュイ」


落ちてきた塀を再び登っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る