2412話 駄弁り道中膝栗毛
それからシュガーバはアッシリを呼びにいった。忘れてたわ。うっかり置いていくところだった。
さて、次の目的地はアッシリの村だな。かなり高い山みたいだし登るのが楽しみだ。コーヒー以外にも香辛料とかあると嬉しいんだけどなぁ。
ちなみにさっきの村でとれるクロブの実は甘くて濃厚な香りがするらしい。釘みたいな形をしてるもんだから肉なんかに直接刺して臭みをとるのに使ったり、防腐用にもいいらしい。でも使いすぎると臭くて苦くなるとか。
「アッシリの村はここからどれぐらいかかる?」
「ゆっくり歩いても三日あれば麓まで着きます……」
「麓から村までは数時間だっけ?」
「はい……急げば五、六時間ぐらいで着くかと。」
ふーむ。ゆっくり行きたいのか急がせたいのかどっちだ……
「お前んとこの村でも納品する品物の量をごまかすような不正ってあんの?」
「あります……小石を混ぜたり違う木の実を混ぜたり……」
あるのかよ……バカばっか……
「で、罪は子供が償うのか?」
「そうです……罪によりますけど基本的に一人一度しか使えないので長男以外の全員分ほど不正をやりがちです……」
なんだそりゃ……つまり子供が四人いたら三回は不正できるってこと? しかもバレなければ何回でもやるだろうし……やっぱこの国って征服する価値ないだろ……
それでも香辛料がクッソ高いってことはどこかにボロ儲けしてる奴らがいるんだろうなぁ。想像はつくけど。
「ちなみにアッシリのとこみたいにボーイェを輩出した家は村の中では格が上の方になるぜ。それだけに失敗して帰ったら悲惨な目に遭うけどな」
ボーイェか。隠密系の組織って失敗したら帰れないんだろうなぁ。むしろその場で殺されそう。
「そういや村役とかってのがいるんだっけ? そいつらよりも格上になるのか?」
「ならねえな。『戦士』を輩出したら同格になる場合はあるけどな」
だよね。それより戦士ねぇ。シュガーバより強いかも知れないって奴らだっけ?
「その戦士ってのはカラバにいるんだよな? 普段はそいつら何してんだ?」
「族長やその家族の護衛したり兵士連中を叩きのめしたり、他の部族との戦いになったら出動したりだな。魔王の相手じゃねえだろうがうちの部族内じゃあかなり強い方だな」
へぇ。まるで騎士だな。それなりの地位もあるんだろうし。気になるじゃん。カラバにもたぶん行くだろうし。
あ、騎士ってことは……
「何か魔物に乗ったりするんだっけ?」
駱駝っぽいやつ。カラバで見た気がする。
「ああ、
「ん? そいつらは戦士とは違うのか?」
「ああ、戦士は正確には
固有名詞だらけだが何となく分かった。
「てことは
「ああ、そうだ。そもそも
マジかよ……駱駝は自前で用意するのかよ。それでもなりたいんだろうなぁ。ローランド王国で言えば近衞騎士みたいなもんか? それならなりたい奴らだらけでもおかしくはないが。
後はそうだな……気になったことと言えば……
「さっきの村ってカラバ領なんだよな? てことはボーイェの奴らとか紛れ込んでたりするのか?」
「ああ、いると思うぜ? だからオレらは近寄らねえようにしてたわけだしな。アッシリはともかくオレの顔を知ってる奴がいるかも知れねえからな」
「お前の直の配下ってわけじゃないのか?」
「当たり前だろ。そうあちこち面倒なんて見れるかよ」
幹部業務はそんなにブラックじゃないってことか。
「で、そんな奴がいるとして、さっきみたいによそ者が暴れた場合はどうするんだ?」
「どうもしねえよ。コトの顛末を上に報告するだけだろうぜ? そんで場合によっては税が上乗せになったりするわけよ。失態ってことでな。今回の場合だと兵士連中が叩きのめされてるわけだし村へのお咎めは軽いだろうが兵士どもはロクなことにならんだろうぜ?」
「あー、何の役にも立ってなかったしな。」
「逆に聞くけどよ、なぜわざわざ子供なんかを助けようとしたんだ? あんな奴らはいくらでもいるんだぜ? 次も同じことする気なのか?」
子供なんか、と来やがったか。
「たぶんまた助けると思うぞ。気が向いたらの話だけど、同じような場面を見たら……たぶん気が向くだろうよ。」
「変わってんな……」
子供で思い出した。もう一つ気になってることがあったんだよな。
「子供だけどさ、自ら進んで縛られてたみたいだけどあれはどういうことだ? 役に立たないといけないとかって言ってたけど。」
「そりゃあそうだろ。役に立たないガキなんていても無駄なんだからな。だから長男以外は使う側からすりゃあ便利でいいぜ? 何でも喜んでやるからな」
なんとまあ……一種の洗脳状態だろうか? 物心ついた頃からそうやって育てるもんだから何でも言うことを聞く便利なパシリの出来上がりってことか? むしろ奴隷か? 買えば高いって話だったから安くあげるために?
外道しかいないのかよ……マジで何なのこの国さぁ……
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