2309話 目利きのセヒーリ
甲板に着地。さて、酒の続きといこうか。
「魔王殿、見せてもらったぞ。全く危なげのない戦い方であったな。
さすがによく見てやがるな。かなり遠かったろうに。
「あれは僕がよく使う魔法で
強めの魔物相手だとあまり効かないんだよなぁ。ライフル弾が効かないってどんだけ強いんだって話だよ。魔境あるあるだけどさぁ。
「ほぉう? そのような複雑な工程をあの一瞬でこなしておるとはの。さすがは魔王殿じゃて。ところで老婆心ながら言わせてもらうが、鉄塊の工程は必要なのか?」
「あー、言いたいことは分かります。弾を作り置きしておかないのかってことですよね?」
「なんだ、分かっておったのか。ならばなぜあのような効率の悪いことをしておるのだ?」
んー、答えにくいなぁ。一言で言えば私がなまけてるからってことになるんだけどさぁ……
「あの弾に使うぐらいの魔力だと作り置きしててもしてなくても誤差みたいなもんなんですよ。だから普段からこつこつ作るのが面倒で作り置きしてないってわけなんです。」
「なんとまあ……剛気な話ではないか。金操を使っておきながら誤差とは。さすがは魔王殿だ。まざまざと見せつけられた思いだの」
金操は発射するのに使うから作り置きには関係ないんだけどさ。
逆に作り置きが必要な場合だってあるよな。魔弾とか白弾とか紫弾とか。あれって作り置きしてないとどうにもならないよなぁ。紫弾なんて魔力庫に出し入れするだけで魔力を食いまくりなのが参るし。そんなのを撃ち出すんだから魔力の消費がとんでもないんだよなぁ。一発で私の全魔力を
「魔力量だけは多いもんで助かってます。」
その上ヒイズルで鍛えたおかげで効率もよくなったしな。ん、待てよ? 魔力量が実質二倍になったことを思えば……もしかしてキアラに負けてないのではないか? 単純な魔力量では私を一割ぐらい上回っていたが、そこまで悲観することもないのかも……
「はっはっは。どこが魔力量だけなものか。発動までの早さ、複数の魔法を同時かつ精密に制御。しかも遠く離れた魔物に難なく当てておったな。つくづく魔王の名の通りではないか。さあ、もっと飲まれるがよい。こんなに頼もしいことはないぞ」
いやぁ照れるなぁ。やっぱ宮廷魔導士ってよく見てんのね。
「いただきます。スペチアーレ男爵に乾杯。」
「なんのなんの。魔王殿に乾杯だ」
「ピュンピュイ」
「セヒーリ様にも乾杯。」
ふぅ……うまい。ひと仕事した後の一杯っていいね。しかも、さっきより少し冷やされているじゃないか。その気遣いがにくいね。さすがイケオジ、やるねぇ。
「そういえば魔王殿、そのフレスベルーガはどうするのだ? 食べるのであれば料理長に任せるのも手がと思うが」
「ガウガウ」
あー……
「うちの狼ちゃんが丸焼きにしたのを食べたがってるんですよ。ですのでこちらでやろうかと思います。」
実はカムイの奴、食堂に行きたくないだけだったりしないよな?
「ふむ、そうか。船で火気は厳禁なのだが、魔王殿なれば問題あるまい。船から少々離れて焼かれるがよかろう」
「ええ、分かっております。」
みんなにもお裾分けしてやろうと思ったんだけどな。カムイがそう言うんじゃあ仕方ない。丸焼きにしてやろうじゃないの。明日でいいか?
「ガウガウ」
おう。私も少し楽しみだしね。船から離れてやらないと火気も心配だけど魔物が集まってくるのも心配だしね。
そうなると、羽根をむしるのも明日でいいか。むしる前に軽く焼いたりするしね。
「ところで魔王殿は向こうに着いてからはどうされるつもりなのだ?」
「特に決めてはないですね。色々揉め事はあるそうですけど、気にせず歩き回ろうと思ってます。」
かなり広いらしいしね。ヒイズルでは歩いて一周する前に飛んでしまったもんな。今回こそ、なるべく歩きで移動するつもりなんだよね。
「そうか。魔王殿たちならば何が起ころうとも対処できよう。だが、なるべくならあちらの者と揉めて欲しくはないがな」
「分かってます。一族全員で復讐に来るんでしたね。コーヒーやコットンの生産に響くって聞いてます。」
「分かってくれるか。それらの産物がローランドでも生産できればよいのだがな。今のところ成果は上がっておらん。蛮族のような奴らだがそれでも腕は確かだからな」
不思議なもんだよなぁ。蛮族みたいなのに食えない物を育てるなんてさ。まあ何か理由があるんだろ。魔物だって多そうだし、肉には不自由しないとかさ。さすがに酒を作るほどの技術はないのかな。南の大陸産の酒なんて聞いたことないし。
「気をつけておきますね。」
例え一族総出で復讐しようにも私らが飛んで逃げたら終わりだよな。それともグリーディアントみたいにどこまでも追ってくるんだろうか。そもそも揉めなければいいだけだし。あまり人里に近寄らなければいいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます