1957話 激闘三百連射

くそ……あの位置に魔石は無いってことか。ならばもう一度、今度は場所を変えて……


「ピュイピュイ」


えっ!? マジで!?

あいつの顔、目と口の間に魔石があるの!? すげぇなコーちゃん……


「ピュイピュイ」


へぇ……穴が空いたおかげで魔力の流れが見えたって? ふふ、まんざら無駄じゃなかったってことね。


『徹甲五十連弾』


目と口を結ぶと逆三角形になっている。狙うは……その中心だ。

ちっ……さすがに胴体と違って多少はグラつくのか。動くんじゃねぇよ。狙いがズレるじゃないか。

つーか、一発でどこかの城門ですらぶち壊す私の徹甲弾をこれだけくらってグラつくだけって……ムカつくなぁ……

いや、そりゃあ私が勝手に城門すらぶち壊すって言い張ってるだけなんだけどさ。


『徹甲五十連弾』


おおっと、さすがに魔石を狙われるのは嫌みたいだな。手をぶん回してきやがる。あれに一発でも当たったら……

もう少し下がっておくか。こいつの手は見た感じ一メイルぐらいしかないくせに、二メイルほども伸びやがったもんなぁ。両手が一本に繋がってるとでも言うのか? 河童かよ。


『徹甲五十連弾』


絶え間なく撃ち続ける。その場を一歩たりとも動かさんぞ。このまま一気に決めてやるよ。それにしても……さすがにマシンガンには及びもつかないが秒間五発以上は撃ってるよな。これだけもの弾を……よくもまあ。我ながらすごいぜ。

うおっと、また腕が伸びてきやがった。だが、私に油断はない。当たるかってんだ。


『徹甲五十連弾』


さっきの感じだと、そろそろなんだよな。今のところ危なげなく戦えてるが……

フェルナンド先生もエルダーエボニーエントのここに気をつけろみたいな話はしなかったよな。これだけ頑丈なら他に気をつけるポイントもないだろうしな。

相変わらず手をぶんぶんと振り回してくるが、どうやら三メイル以上は伸びないようだな。当たる気配はない。


『徹甲五十連弾』


くっ……まだ貫通しないのかよ……

さすがに頭が痛くなってきた……

ここら一帯の土中から鉄分が減ってきたんだろう。どんどん魔力消費が酷くなってやがる……そんな状態で五十連弾なんて撃ってるもんだから……くそ、痛いな……

だが、魔力ポーションなど飲んでいる暇がない。今は徹甲弾の制御に全魔力を集中しないと……


「はぁ、はぁ……」


これでも貫通できないのかよ……

何事もなかったかのように……再び歩きだしたエルダーエボニーエント。一体どこに向かってるんだ? 私すら無視すんのかよ……


「ピュイピュイ」


え? あそこって……ワイバーンのねぐら……だよね? なぜあんな所に……


「ピュイピュイ」


たぶん今仕留めないと勝てなくなる? あいつが塒に辿り着く前に?


『風操』


先に塒の外縁に移動した。やってやるよ……

コーちゃんの言うことはきっと私より正しい。コーちゃんが言うならそうなのだろうさ。

別に逃げたって何の問題もないのにさ。ここまでやったからには後に退けない変な意地があるだけだ。


エルダーエボニーエントは淡々とこちらに歩いてくる。一歩に五秒ぐらいかかるようなペースで。だが、確実に近寄ってくる。


まだだ……まだ撃たない。


計算上は次で三百発に到達する。つまり、そろそろ魔石をぶち抜いてもおかしくない。だから、至近距離から確実に決めてやる……


私が奴の射程圏内に入ったか。またも腕を振り回してくる。そんな大振り当たるかってんだ。距離一メイル……ここだ!


『徹甲五十連だっぐおっ!?


くっそ痛いじゃないか……この野郎……腕を短くして二本でぶん回してきやがった……そりゃそうか。近寄ったら両手とも使うわな。


「カース! 腕が……大丈夫なの!?」


「どうにかね……少し待ってて。もう終わるから……」


とっさに頭への直撃は防いだけど……これ左手折れてんな……めちゃくちゃ痛い……

やっぱ籠手がないと辛いぜ……今度こそ終わりにしてやるよ……


『徹甲五十連弾』


顔面ど真ん中に次々と命中する徹甲弾。衝撃貫通だってたっぷりと乗せてある。表面を貫けなくても中の魔石だけ破壊できてもおかしくないと思うが……

この野郎……手から蔦のようなものを伸ばしてきやがった!? そんなの避けるに決まってんだろ! でも徹甲弾は撃ち続けるけどな! くそ……動きながらでも一点を狙うのは楽勝だが、発射そのものがキツいな……

まだか……まだかよ! すでに半分撃ってるのに……頭が痛い……ちっ、いつの間にやら蔦が足に絡んでやがる。だがもう遅い!


『狙撃』


どうだオラァ! 顔面ど真ん中貫通ストライク! やってやったぜオラァ!


「オ、オ、オ、オ……」


おお! 倒れた!

徹甲連弾を撃ちながら狙撃を使うのは大変だったんだからな! おっ、蔦も外れたか。

ん? 本体が……見る見る小さくなっていく……手も足も朽ちるように……


「カース! ついにやったわね! 信じられないぐらい撃ちまくってたわね! すごいわ!」


「あはは。ありがと。ちょっと疲れちゃった。暗くなってきたし早く帰ろうね。」


「そうね! 腕も治さないといけないし! あれは私が収納しておくわね!」


アレクが興奮している。かわいいなぁ。勝ててよかった。魔石はゲットできなかったけど。痛てて……帰ろ……

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