1954話 カース無双
カムイが仕留めたうち一匹を残して収納した。だってカムイがもう食べてるんだもん。さっき鳥を食べたばっかのくせに。群れの大半は逃したけど全部獲る必要もないしね。私の三匹とカムイの四匹もいれば充分だよな。最初の雄だっているし。
さあ、散歩続行だ。どんどん進もう。再び尾根を登っていくぜ。
風が強い。そして冷たい。山岳地帯の冬はいつ終わるんだろうね。
それから魔物と出会うことなく歩き続けて、ついに山頂にまで到着した。山頂と言ってもそこそこの広さもあり、この尾根沿いでは一番高い。でも見晴らしはよくない。フラットではあるが雑木が多いせいだな。そんな雑木だが、一部は何も生えておらずぽっかりと空いている。
「巣、みたいだね。」
「そうね。そこそこ手強そうな魔物みたいね。」
鳥系、それともドラゴン系だろうか。巣にしてはフンなどは散らばっていないな。清潔な魔物なんだろうか。
「ピュイピュイ」
たぶんワイバーン? さすがコーちゃん。ああ、そこに鱗が落ちてるのね。
「ワイバーンだって。それなら少し待ってようよ。ワイバーンって美味しいもんね。」
「それいいわね。最近食べてないもの。」
気になるのは、ワイバーンだとすれば少しばかり小さいことか。開け具合からすると体長は大きくても十メイルだろう。でも実際にはもっと小さいだろうな。
「ピュイピュイッピ」
「ガウッガウ」
はは、二人で遊び始めちゃったよ。いつものお互いの尻尾を捕まえるやつ。楽しそうだな。ワイバーンの
それにしても元気だなぁ。私はもう疲れたよ。かなり歩いたもんなぁ。村からどんだけ離れたんだろ。帰りは一瞬だろうけどさ。
だいぶ日が傾いてきたなぁ。ここからだと木が邪魔してあまり見えないほどに。ワイバーンはまだ帰ってこないのかよ。そろそろ夕方なんだから帰ってこいってんだ。
よし。待ちきれないから魔物を集めよう。どうせ魔石がまだまだ必要なんだし。このままアレクの膝枕で休むのも悪くないけどさ。
「アレク、ちょっと強めの魔法を使うね。」
「ええ。魔物を集めるの?」
「うん。そろそろ夕方だしね。暗くなる前に終わらせそうと思ってさ。」
そもそも散歩にきたはずなのだが、いつの間にやら魔石を集める私。働きすぎ?
『火柱』
魔力特盛バージョン。直径五メイルの火柱。山頂にもう一つ空白エリアができるぜ。そしてこれは遠くからでも目立つ。さあ、どんどん集まってきやがれ。
「下から来た魔物は任せるね。僕は空から来る魔物を相手するから。」
「分かったわ。任せておいて。」
『浮身』
さあ。どこからでもかかってこい。
たぶんだけど下からはあまり来ないはずなんだよな。ここってワイバーンの縄張りなんだからさ。大抵の魔物、特に近隣の魔物は近寄りにくいはずだよな。
「ギギギィィィ!」
「ギュイッギギッ!」
「ギギガーガガー!」
おっ、来た来た。まずは鳥の魔物、いきなり
『水壁』
こいつらは猛スピードで目玉を狙ってくるからな。それさえ防げば何てことない。水壁で捉えてやった。
このまま『凍結』そして収納。我ながら鮮やかなものだ。無傷でゲット。こいつらの血肉は猛毒だが羽なんかも高く買い取ってくれるからな。
さあ、次は何だ?
ん? 空の一部が暗くなってる。雲?
だんだん近寄ってくるが……虫か!? それも
あいつらって何匹仕留めても何の意味もないじゃん。魔石はほぼないだろうし素材だって取れない。ほんの少ししかない虫の腸の筋をどっさり集めて作る魔道具があった気もするが……とても集める気にはならないな。第一それって、こいつらみたいな虫とはタイプが違うだろうし。やれやれだぜ……
『轟く雷鳴』
離れてるうちに焼き尽くしてしまおう。見える範囲全てに雷を落としてやった。けど……
うーん……まだいるな。雷だと広範囲には落とせても隙間があるからか。
ならばこれで……
『吹き荒れる暴風』
きっちり全滅させる必要はないよな。こいつで吹き散らしてしまえばいい。
よし。見えなくなった。
立て続けに上級魔法を使ってしまったな。でもこれならまたどんどん集まってくるだろうな。うはうはだね。ドラゴンには来て欲しくないけどワイバーンには来て欲しいなぁ。
でもドラゴンほどの大物だと最高の魔石がゲットできるんだろうなぁ。まだ発注してない装備品としては手袋にベルト、そして帽子があるけど……それもドラゴン革で作れたら最高だよなぁ。でもドラゴンと戦うのは嫌だよなぁ……
うーん、こりゃ捕らぬドラゴンの皮算用だな。
「ゴオオオオオオッオッオオォォォーーーーーー!」
おっ? 何やら大物の気配だ!
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