1830話 快刀乱麻ウリエン
それから一時間後、全員が起きたので行動再開だ。と言ってもボスを探して飛び回るだけなのだが。
しまったな。さっきの赤兜は放逐しないで捕虜にでもしておけばよかった。あいつらならボス部屋の場所も知ってるだろうしな。次の奴を見つけたらそうしよう。
それともここで待っているのもありか? 十一階の出口を目指す奴らがわらわらとやって来るだろうからな……
うーん、でもそれだと奥まで行けないような下っ端の赤兜しか仕留められないってことになる。もちろんジュダにだって追いつけないだろうし……やっぱ素直に進んだ方がいいだろうな。幸いと言うべきか、さっきの赤兜からいいものゲットしたことだしね。あまり関係ない気もするけど。
なんと、時の魔道具劣化版。昼と夜が分かるだけの簡易的なやつだ。正式名称は『
この魔道具の問題点は魔力庫に入れると狂ってしまうことだそうだ。分からんでもない。私の魔力庫なんてほぼ時間が止まってるレベル、高性能だからな。陰陽計も止まってしまうもんな。
だからアーニャに預けた。朝が来たことと夜になったことを知らせてくれる係だ。前の二つの迷宮ではこのあたりを適当にしてたからな。それでよく体調とか自律神経とかが狂わなかったもんだよな。アレクとイチャイチャしまくってたからだろうか。
ようやくボス部屋発見。ここに着くまでに空中でもそこそこ魔物がいて厄介だったんだよな。なんせ吹雪の中に白い鳥って。見にくいったらなかったよ。しかも小さいくせに嘴は鋭いし。そりゃあまあ敵ではなかったけどさ。
ついでとばかりに上空から赤兜を発見次第狙い撃ちにしてやった。あいつらほとんどがムラサキメタリックを纏っていたもんだからどの程度のダメージを与えられたかは不明だけど。地面に大穴を空けて追い落としたりしたし。早めに脱出できなければ終わりだろうね。
さて、ボス部屋への通路は岩山の中腹にある洞窟だった。さっきまでの階層よりは少しだけ上の方ってとこかな。飛んでる私達には関係ないね。洞窟を少し進むと、ほーら広くなってる。ここまでは同じだな。
ではボスは何だろう。
ボス部屋の扉を開けて、中に入る。全員が中に入ると勝手に閉まる。いつも通りだな。
ん? えらく小さいな……体高二メイル程度の鶴か。あの嘴は長いし鋭いな……
「カース、僕がやっていいかい?」
「いいよ。兄上も退屈だもんね。」
「そういうわけでもないさ。ただこいつは滅多に戦える魔物じゃないからな。」
へえ、そうなんだ。確かに私も初めて見るけど。
『クケェェェェェェーー!』
おっ。いきなり魔声かよ。私達の誰にも通用してないけどね。少しうるさい程度だ。
兄上は前に出る。私達は壁際まで下がる。あ、一応言っておこうかな。
「兄上ー。言ってなかったけど僕らって今八人いるよね。その場合ってボスが普段の四倍強くなるそうだよ。がんばって!」
「ああ分かった。ありがとうな。」
兄上には関係ないよな。だいたいこの魔物が普通はどの程度の強さなのか知らないし。
ほう。まっすぐ飛んでくるか。いくら兄上でもあの嘴に正面から貫かれたら即死……当たり前か。
さあ、どうする兄う……え!?
「ふう。いい訓練になったよ。出番を譲ってくれてありがとうな。」
何の小細工もなし。前から高速で迫る鶴の魔物を正面から断ち割っただけ。しかも嘴の先端から尻尾まで、きれいに真っ二つになってるし……あの堅そうな嘴が。恐るべき切れ味……
「さすが兄上だね! その剣もすご、あれ? それ刀じゃん。兄上そんなのも持ってたの?」
兄上とくれば近衞騎士団の正式装備を使ってるイメージだけど。
「ああ。これは今朝国王陛下からいただいたんだよ。武器庫で見つけたとのことでね。フェルナンド先生からも話には聞いていたけど、すごい切れ味だね。」
国王め。さっそくかよ。ちゃっかりしてるな。武器庫なんてどこにあったんだろう? まあ、あそこも広いもんなぁ。
それにしても兄上ったら。今朝もらった刀をボス相手に試し斬りとは……やるね。
「それはよかったね。あ、魔石が落ちてるよ。お土産にいいんじゃない?」
「ははは、それもそうだな。では遠慮なくもらっておくとするよ。で、えーっと、あそこから出ればいいのか?」
「そうそう。ボスを倒すとあんな風に扉が開くからね。」
それは先ほどまでのボス部屋も同じなんだけどね。
そして一度の宿泊を経て私達は十九階まで到着した。ここまでに出会った赤兜は五十人弱ぐらいだろう。十四階を過ぎたあたりからほとんど出会うこともなかったが。この分だと二十階以降に多くいるのか、それとももう大半が外に出てしまったのか……どっちだ?
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