1827話 ジュダ・フルカワの独白
それでもボスは少しだけ大きいサスカッチでしかなかった。やはりカムイが瞬殺した。
さて、いよいよ六階か。ジュダの野郎はどこに隠れてやがる?
まずは安全地帯を探すとしようか。
おぉー寒い……ここって冬の北海道より寒いんじゃない? この無敵の鎧がなかったらとっくに凍死してるかもね。あーあ、疲れたなぁ……
くっそぉ……なぜ天王たる僕がこんな所に逃げ込まなきゃなんないんだよ……
だいたいあの魔石爆弾の直撃を食らってなんで生きてんだよあのガキ……そりゃ核並みってのは嘘だけどさ……それでも一つの街を灰にするのに不足ない威力だぞ? 必死になってイカルガまで帰り着いたら沿岸部を冒険者どもがうろついてるしさ……ぴーんと来たね。魔王のガキは生き残ってる。そして僕を探してるってね。
幸い僕が気付いたのはかなり沖合いだし、奴らにバレてはいなかったようだ。魔法の腕が違うんだよ、低脳な冒険者どもとはな? ここは一旦逃げ……いや態勢を立て直す必要がある。だからタイショー獄寒洞までやってきたのさ。
ババアを閉じ込めてるヤマトゥオ村の方が近くていいかとは思ったけど、あそこにいる赤兜どもは雑魚ばかりだからな。数も少ないし。
そこそこ重要な施設だから魔王にちょっかい出されると少し困るんだよなぁ。てゆーか魔王め……僕の天道宮をいいように破壊しやがったよな……本当に魔王なのか? 頭がおかしいだろ? 僕は一国の王だぞ? それを話し合いもせずいきなり攻撃って……あーやだやだ。野蛮人ってやだねぇ。せっかくじっくりお喋りして洗脳してやろうと思ったのにさ。全然効かないでやんの。何なのあいつ? バケモンだろ。あ、魔王か。
だが、ここまでは追ってこれまい。例え来れたとしても、ここには三百を超える赤兜がいるからな。それに赤兜だけじゃない。魔王を殺すのにうってつけの奴だっている。問題はどこまで奥に入り込んでいるかが分からないことだが……おっと、ようやく最初の赤兜を発見した。六人か。
「お前たち。精が出るな。」
「て、天王陛下!? ど、どうしてこのような場所に!?」
一瞬は身構えた赤兜どもだったが、洗脳魔法がバッチリ効いているからね。すぐ僕だと分かり跪いた。うんうん。君ら原始人はそうでないとね。
「命令だ。現在ここに潜っている全ての赤兜を集める。全員外に出るよう伝えてこい。聖女にも、あの男にもだ。」
「はっ! かしこまりました!」
よし。行ったか。迷宮内じゃあ伝書鳩も使えないからな。こうやって人を使って集めるしかない。迷宮の入口で赤兜に命令してもよかったんだけどさ。やはり僕が直々にここまで来て正解だったようだな。早さが違うね。
はたして魔王が攻めてくるのが先か、全員で迎え撃つのが先か……
さて、僕はどうしようかな。ここは六階だし……十階まで行って出る方が早いだろうな。それに道中で他の赤兜を見つけて命令すればより早く集まるだろうしね。
いくら魔王でも三百もの赤兜で囲めば敵じゃない。ここの奴らは全員ムラサキメタリックを持ってるからな。お前の無理矢理な魔法なんかじゃビクともしないぞ。数の力で踏み潰してやるからな? ふふふふ……
あ、そうだ。魔王のガキは生意気にも超いい女を連れてたな。二十歳すぎの色黒ギャルに二十歳前の正統派ローランド美女。おまけに純朴系黒髪ナチュラル美少女とバリエーションが豊富だ。僕のためにわざわざ貢物を届けてくれたと思えば魔王の暴虐も許せてしまうかな。特に黒髪の子は好みだね。擦れてなさそうで純粋そうなところがたまらないね。
でもあの黒髪の子ってどこかで見た覚えがあるんだよね。天道宮で会った時は無防備だったから少しだけ洗脳魔法が効いたけど。一人だけやけに弱かったから狙い目だよね。人質でも何でも使い道はありそうだ。もしここにまで連れて来てるんだったらラッキーだな。日夜ヒイズルのために苦労してる僕に迷宮の神からのご褒美かな?
おっと。ここは六階のボスか。はいはい瞬殺瞬殺。
いっそのこと、このまま迷宮を踏破しちゃおうか? そして適当に祝福でも貰ってさ。そうすれば魔王より強くなれるかな?
いや、だめだな。とてもそんなダルいことやってられないね。だいたいもう踏破するまでもない状態だし。
それにやっと天王になったんだからさ。僕が在位のうちはもう遊んで暮らすのさ。さもなければこんな野蛮な世界なんか……
そもそも治世だ政治だなんて知ったことじゃないっての。なんせ僕は天王なんだから。そこらの原始人とは格が違うんだ。ムラサキメタリックだって僕がいなけりゃ役立たずの金属でしかなかったんだぜ? 僕が天才だから無敵の鎧として活用されてるんだからな。
それをちょっとローランドにちょっかい出したからってギャーギャー言いやがって。どいつもこいつも原始人のくせに生意気だよね。下等で生意気な原始人は躾けてやらないとね。
あ! 生意気で思い出した!
あの黒髪の美少女! アーニャじゃないか!?
エチゴヤの上納品にしては珍しく最高品質の美少女だったもんだから契約魔法なしでねっとりじっくりと可愛がってやってたのに…… 身体は反応するくせに、淫らな嬌声を抑えきれないほど乱れるくせに、僕を愛すると決して口にしなかった女だ……
薬を使いまくって一晩中責めても、焦らしまくって自分から求めさせても。どんな淫らなセリフを口に出しても、決して僕を愛するとだけは口にしなかった……生意気な女だったな。
だから洗脳魔法どころか改変魔法で心をぶち壊してやった。二度と戻らないように。男の、いや求める者全てにとっての肉奴隷となるように。バカな女だ。嘘でも僕のことを愛すると言えば側室にしてやって、贅沢な暮らしをさせてやったものを。風の噂ではどこかの島で奴隷相手に股を開く肉便器になったと聞いたがね。ざまあみろ。
それがなぜ? 当時のままの姿で? 確か四、五年前のはずだが……
僕の改変魔法は僕にすら解けない魔法だ。灰が木に戻らないように、溢れた水が盆に戻らないように。心を変えてしまう魔法だからな。これは契約魔法や呪いではないため解呪も効かない。我ながら素敵な魔法だと思う。
それなのに……
まあいい。もしも本当にアーニャなら……また可愛がってやるだけのことだね。ふふふ……
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