1769話 懐柔するカース
アーニャは寝てしまった。私の肩に寄りかかって。仕方ないな。このままでもいいが、どうせ寝るんならしっかり寝て欲しいことだし、洞窟内に運んでおこう。
『快眠』
『浮身』
それからアレクの隣あたりに『水壁』
クロミの魔法ほど心地よくはないだろうが適温にしてあるので風邪をひくことはないだろう。
さて、見張りの続きといくか。
それにしても、せっかく集めたローランド人を連行とは……天王の野郎……生意気なことしやがって。こちらに対する人質のつもりか?
まさかいきなり天道宮を破壊されることを警戒して? ふーむ……いよいよとなれば人質が居ようが気にすることはないが、好んで殺したいとも思わない。当たり前か。
うーん、見張りだけってのも退屈だな。
よし、尋問しよう。
洞窟内に戻ってクロミに魔力を吸われた男を連れてきた。うるさくしてもいいように『消音』も使ってと。
で、弱めに『落雷』
「はっ!?」
おっ、一発で起きた。
「よう。お前って天道魔道士なんだって? さっきの奴は四傑とかって言ってたけど、お前は?」
「こ、ここは……確か私は……」
「お前、魔力が空っぽだよな。多少は回復したみたいだけどさ。ここには見物に来たそうだな。で、まだやるか?」
「体が動かぬ……魔力もほぼない……貴殿はどなたか?」
さっきの奴にも言ったんだけどな。
「ローランドの魔王だよ。ドロガーと迷宮を踏破した者だ。お前も聞いたんだろ? 神の声をさ。」
「なっ……貴殿が! 姿は見えぬがその声からするとまだ若いようである。その歳でよくも迷宮を踏破したものだ。感服
『暗視』ぐらい使えよ、と言いたいところだが魔力が空っぽだもんな。
「信じるのか? えらく物分かりがいいな。まあいい。お前ら天道魔道士ってどうなんだ? 天王から放置されてるって聞いたが。」
そこそこ魔力が高いってのになぜ天王は有効に使わないんだ? 赤兜なんかを重宝してるみたいだけどさ。
「確信はないが、天王陛下は我らかもしくは魔法がお嫌いなのではないかと睨んでいる……」
「なんだそれ? 誰だって魔力があるし、天王だってタチの悪い洗脳魔法使ってんじゃん。それなのに魔法が嫌い?」
単純にこいつらが扱い辛いって線もあるかな。やたらプライド高そうだし。でもそれならさっさと洗脳すればよさそうなもんだね。分からんわー。
「確信はない。そうでもなければ我らのような天道魔道士を放置する理由がない。あのようなバカ兜ばかりが……」
あー……なるほどねぇ……分かるような分からんような。
「つーかお前らさ。ヒイズルで出世の見込みがないんならローランドに行けばいいじゃん。紹介状書いてやろうか? 国王陛下に。」
「なっ……貴殿はそれほどのことができると言うのか?」
「できるな。俺これでも
もうないけど。
「そ、その話、もう少し詳しく聞かせてもらえぬか!?」
「別にいいけど。もう一人の男はどうする? 生きて虜囚の辱めは受けんとか言ってたけど。」
「知らぬ。あやつにはあやつの考えがあろう。私は私の道を行くだけのこと。それが天道魔道士の誇りというものだ。」
そうなの? 私にしてみればどうでもいいことだけど。
「じゃあ今から天都に戻ってローランドに行きたい奴らを全員連れてきな。条件は付けるが国王への紹介状を書いてやる。」
「ま、誠か! それはありがたい。我らは天道魔道士とは名ばかりで閑職に追いやられているのでな。磨いた魔力を活かせるのならこんなにありがたいことはない」
「ああ、本当だ。だから約束だぜ? ローランドに行くまでは俺の言うこと聞いてくれよ?」
「無体なことでなければ従うと約束しよう」
ちっ、効いてない。上手く躱しやがったな。
「いいだろう。改めて約束だ。実現不可能なことを言う気はない。ローランド王国国王に紹介状を書くことと引き換えに俺のために働いてもらう。これでどうだ?」
「いいだろうっあうっおごっ……ふぅ……思ったより強力な魔力が……」
よし、かかった。絶対服従じゃないのが微妙なところだが使えるうちは使ってやろう。この件が終わってまだ生きてたら紹介状だってちゃんと書くさ。
「おっと、もちろんだがローランド人に危害を加えるようなことはするなよ? 約束だぜ?」
「ふむ、こちらから手出しはしないと誓おう」
また効いてない。こいつやたら慎重だよなぁ。クロミにあっさりやられたくせに。
「自衛を除き、ローランド人に危害を加えない。この約束ならいいだろ?」
「いいだろっおおっおおっ……ふう……」
まあこんなもんだろう。この条件だとドロガーやクロミは条件外だけど、まあいいか。
「じゃあさっさと戻って仲間を連れてきな。使える奴は使ってやるからさ。」
「心得た。しばし待たれい」
これでいい。深夜の見張りをこんな野郎と行うのは嫌だからな。
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