1767話 カース復活

ふぅー。間に合ってよかった……

めっちゃギリギリだったし。カムイの奴もさぁ、見てたんなら助けてくれよな……マジでアレクの首が切られるとこだったじゃん……寿命が縮んだぞ……


「ピュイピュイ」


うん。分かってる。カムイも頑張ってくれたんだよね。それよりコーちゃんだよ。牙を二本打ち込んでくれたんだって? それでコーちゃんの生命力を私に注いでくれたんだよね。ありがとね。


「ピュイピュイ」


え? 問題があるって? 精霊の力を人間である私に無理矢理注いだもんだから私の寿命がだいたい五年ぐらい縮まったって……マジで縮んだのかよ……

いや、まあ問題ないけどさ……アレクが助かったんだからさ。全然問題ない。


「ピュイピュイ」


いやいや。コーちゃんが謝ることじゃないって。その分コーちゃんだって無理したんだよね? それであんまり元気がないんだよね?


「ピュイピュイ」


平気だって? コーちゃんたら。いつもありがとね。おかげで魔力も体力も全快したし。アレクの声ですっきりと目覚めることもできたしね。思うにアレクは、自分が呼べば私は必ず目覚めるって信じてくれたんだろうね。嬉しいよね。


よし。それじゃあ気を取り直していこう。まずはこいつらの取り調べからかな。


『水壁』


天道魔道士の野郎二人を閉じ込めてと。


『落雷』


さあて起きてくれるかな?


「ぐうっ……」


おっ、カムイが引っ張ってきた男が起きた。


「おはよう。お前も天道魔道士なんだろ? まずは名前を聞こうか。」


「儂の名はナミノシ・ツジノウ。天道魔道士四傑の一人である」


『火線』


「効くかよ。」


『風斬』


「あぎゃっうぉ……」


レーザーのような熱線を放ってきたが無駄だ。逆に左手を斬り落としてやった。あの瞬間の感覚は覚えている。

母上の風斬に一歩近付いたんだよな。確か最後の記憶は……大番頭の首をぶち斬った時か。あれからどれだけ時間が経ったんだろうな……


「き、貴殿は……一体何者……」


「そんなことも知らずに来たのかよ。ローランドの魔王って言えば分かるか?」


「…………シューホー大魔洞を攻略したと聞いた。傷裂ドロガーと共に……」


「その通り。別に信じなくてもいいが俺がその魔王だ。で、お前らは何しに来た? たった三人で攻めてくるって舐めてんだろ。」


この二人からもあのチビ女と同じ程度の魔力は感じる。そこそこ手強い魔法使いだな。


「わ、儂らはだだ……様子見に来ただけだ……バカ兜どもがあたふたしてたから……軽く鼻を明かしてやろうと……」


「ん? 天王の命令で来たわけじゃないのか? 魔王の首をとってこいとかさ。」


「天王陛下が儂らに命令を下したことなど……ついぞ記憶にないわ……」


ん? どういうこと? さっぱり分からん。


「おい、正直に言え。約束するならその手を治してやるぞ?」


『火線槍』


「だから効かねーって。」


劣化ドラゴンブレスって感じかな。領都で出会ったクリムゾンドラゴンの収束ブレスに近い。威力は全然近くないけど。そりゃあドラゴンと比べちゃあだめだわな。


『風斬』


右手も斬り落とした。


「せっかく助けてやろうとしてるのにさ。話す気ないってことでいいな?」


「天王陛下に忠誠心などないが、生きて虜囚の辱めを受ける気はない……殺せ」


難しい言葉を使ってんじゃないぞ。だいたいこいつの言うことが本当なら赤兜関連の情報なんてろくに知らないんじゃないのか?

名前とかどうでもいいことはペラペラ喋ったくせに。


永眠ながのねぶり


そして水壁から出して、傷口を『乾燥』

とりあえず殺すのは保留だ。クロミに実験して欲しいことがあるからな。


さて、もう一人を起こすとしよう。


『落雷』


だめか。全然起きない。魔力が枯渇しまくってるからか。こんな時はアレクの『覚醒』がベストなんだけどなぁ。ドロガーの『激痛』でもいい。


よし。こいつらを連れて洞窟に戻るか。クロミの手が空いてたら頼もう。だめなら縛って寝かせておけばいい。一応斬り落とした腕もキープしておこうかな。態度次第では治すようクロミに頼んでもいいし。


そろそろ夕方かな。私はどれだけ寝てたんだ? 今になってめちゃくちゃ腹がへってきた。

エチゴヤの山から脱出して、魔石爆弾付きの鳥を仕留めたところで魔力が切れた。それからぼんやり起きたのが夜中だったか。どうにか大番頭を殺したんだっけ。確か左足を斬られたんだよな……うわぁ……傷は治ってるけどドラゴントラウザーズがざっくり切れてる。参ったな。直せるのかこれ? ウエストコートには穴が空くし散々だな。


戻ろ……




「かず、カース! 大丈夫なの!? さっきはいきなり起き上がってたけど!」


「ああ、ばっちり元気になった。チョベリバってやつだ。」


「多分それ違う。」


「あれ? 違ったっけ? まあいいや。それよりアーニャは大丈夫なの?」


「当たり前じゃん。私何もしてないもん……強くなりたいよ……」


「じゃあクタナツに帰ったら一緒に修行だな。生き残るために一番大事なことから教えるよ。」


「え? そんなのあるの!? 何なに!?」


「帰ってからのお楽しみ。それより腹がへったよ。何か食べたいな。」


「あ、でもアレクさんが起きてないと……」


あぁそっか。私の魔力庫には食べ物が入ってないもんなぁ。ここはアレクとクロミが頼りだな。ドロガーも多少は持ってそうだが。あ、女達の分も必要か。うーむ……


「ちょっとオワダに行ってくる。あいつらを連れて。ついでに食料を仕入れてくるわ。たぶん一時間で戻ると思う。」


私の魔力は満タンだからな。オワダ往復ぐらい何の負担でもない。


「分かった。私は見張りぐらいしかできないけど……気をつけて行ってきてね。」


「ああ。じゃあお前達。オワダに行くぞ。そうすれば次の便でバンダルゴウに渡れる。よかったな。」


あまりの急展開に女達は話に付いてきてないようだ。別に構わないけど。

ここは危ないしな。さっさと安全な所へ逃しておかないとね。


それから赤兜どもに連行された奴らのこともどうにかしないとな。キサダーニが先に行ってるんだったか。


いよいよとなれば、天道宮にメテオ一発で終わらせてやるさ……

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