1580話 アレクサンドリーネ VS デュラハン

「お楽しみだったじゃねぇか。」


ドロガーうるせぇよ。でも、さすがにバレバレか。さっきここを離れた時のアレクを顔を見れば。


「まあな。」


「金ちゃんばっかりずるーい! ニンちゃんウチもぉーー!」


悪いが無理だな。


「まあ息抜きは大事だぜ。もっとも何を抜いてんだか知らねーがよ?」


ドロガーめ、それは上手いこと言ったつもりか?


「それはそうと、そろそろいい頃じゃないのか?」


「ああ、さっき終わったみたいだぜ。あの赤兜どもはなかなかの手練れだな。」


ここの扉って押してみないと開くか分からないんだよな。サービス悪いわー。中に誰もいない時は開けっぱなしでいいだろうに。


「カース、次は私がやるわ。今ちょっと魔力が充実してるから。その間アーニャを頼むわね。」


「分かった。いいとこ見せてね。」


ふふ。なんだかアレクが元気になってる。魔力も充実か……ぬふふ。


「カズマカズマカズマーー!」


おっと、アーニャが私の左腕に絡みついてきた。




現れたボスはやっぱりデュラハン。

おっ、今回は余裕かましてないな。いきなり猛スピードで突っ込んできやがった。私たちは退避っと。


『風球』

『火炎旋風』


おおー! いきなりえげつない! 強風で突進を止めてから炎で囲むとは! おっ、デュラハンの奴は素早く馬車から逃げやがった。なかなか鋭い動きを見せるじゃん。それにしてもアレクもクロミに負けない高温の炎を放ったもんだな。魔力特盛でごり押しか。骨を燃やすのって簡単じゃないもんね。


『氷壁』


剣を振り上げ襲いくるデュラハンの前に氷の壁が立ちはだかる。が、一撃で断ち割られた。さすがにデュラハンの剣筋は鋭いな。身の丈ほどもある大剣を軽々と扱ってやがる。やるな。


しかし、アレクにすれば一瞬だけ足を止めればもう充分。その間に……


『火柱』


やはり葬儀にも使う魔法だけあってアンデッドには効果抜群! 範囲は狭くても効くよな。さすがにじっとしててはくれないから燃え尽きはしなかったが、かなりのダメージがあったと見える。一気に動きが鈍くなった。

おっ、デュラハンの野郎、生意気に左手に鞭を持ってやがる。右手に大剣、左手に鞭か。だが無駄だな。その鞭はすでに先端が床に縫い付けたかのようにがっちり凍らされている。さすがアレク。


ほう、デュラハンも判断が早いな。鞭からすぐに手を離し、アレクに向かって突進してくる。接近戦ではアレクに勝ち目はないが……


『氷壁』


うまい! 足元に小さく氷壁を構築しデュラハンを転ばせた! あいつの弱点って足元なのか?


『火柱』


転ぶことを見越してあらかじめ準備していたのだろう。発動がえらくスムーズだったな。


『金操』


むっ? デュラハンが炎の中から大剣を投げやがったか。危なかったな。だがアレクはそれも予想していたのだろう。その手はさっき見たもんな。やはりスムーズに金操きんくりで炎の中へと叩き返した。これは勝負あったか? 全然見えないけど。


だが、問題は……デュラハンの首が見えないことだ。今までのパターンからすると、ボディを仕留めた! と思わせておいて首だけが襲ってくる……はずなんだけどな。見当たらないな。どこに潜んでやがる? まさかボディと一緒に燃えてるわけでもあるまい。アレクだって油断せずに周囲を警戒している。


「だめっ! 金ちゃんそこから離れてぇーー!」


どうしたクロミ!?


「くっ!」


アレクも忠告に従い燃えるデュラハンから距離をとった、が……倒れた!? どうしたアレク!


「クロミ! ボードとアーニャを頼む!」


「いいけどニンちゃんでもあれに近付くのはヤバいし。すぐ戻ってね?」


一体どうしたことだ? まさか魔力枯渇とは思えないが……ええい! 考えてる暇はない! 今デュラハンに襲われたらアウトだからな!


すぐさまアレクを助けないと……

ちっ、何だこれ……何か歪な魔力の流れが……

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