1526話 皆殺しのカース

終わった。少し痛めつけてから『拘禁束縛』を使っただけで。


「くっ、私の美貌に目が眩んでこのような狼藉を! 今に見ておれ! アラナカ騎士団が集結して貴様を血祭りにあげてくれるからな!」


アラナカ騎士団? 騎士っぽい奴なんていなかったぞ? だいたいもしも騎士がいたらそれってアラカワ領の騎士ってことになるじゃん。つまりこのおばさんはエチゴヤ配下の者を勝手にアラナカ騎士団って呼んでるだけだろ。ぷぷっ。それに今それどころじゃないからな。こんな娼館なんかに構ってる場合かってんだ。


ん? なぁに奥の方をチラチラ見てんだ?

ああ、プレイを終えた客が出てくるのを期待してんだな。こいつがここの楼主なら客が出てくる時間も把握してるってわけか。

おっ、早速階段を降りてくる足音が……


「ゼリアテ様! お助けくださいませ! 狼藉者でございます!」


それにしてもこのおばさんたら、言葉遣いがころころ変わるな。まあ、当たり前か。私もそうだし。それより今、このおばさんゼリアテって言ったよな?


「おっ? どうしたマダム!? んんっ? もしかしてそっちのガキに何かされたんか?」


「そうなのです! お助けくださいませ! こやつ私の身体に目が眩みこのような真似を!」


そんなわけないだろ……


「お前がゼリアテか。アラナカを仕切ってるんだってな。アラキタはさっき落としたぜ。ゴンズはもう俺の配下だ。」


少し違うけどね。


「ああ? 何言ってんだこのガキ? アラキタからここまでどんだけ時間がかかると思ってんだ? しかもあのスカスカ頭のゴンズを配下にしただ? 嘘ならもちっとましな嘘つけや」


ぷぷ、スカスカ頭だってよ。


「ゴンズはお前のことをええカッコしぃのヒョロガリ野郎って言ってたぜ。」


嘘だけど。


「ガぁキぃい〜てめぇ俺が誰か知らねえようだなぁ! このアラナカで俺に盾ついて楽に死ねると思うなよ?」


さっきゼリアテかって聞いたじゃん。知ってるって。


「おうてめぇら! このガキ半殺しにしとけ! 別に死んでも構わねえが生きてたらアラニシで使い潰してやらあ!」


ゼリアテの後ろから現れたのは三人。こいつらもこの非常時に遊んでやがったのか?


『狙撃』


「おっ、まえら……」


もちろん瞬殺。


「お前みたいな田舎者なら知らなくてもしょうがないがな。俺の名はカース。これでもローランドの魔王だなんて呼ばれててな。この前も豊穣祭で優勝した。ま、その程度には強いと思ってくれ。」


「ロー……ランドだと?」


「ついでにオワダではアガノだっけ? あの番頭もぶち殺したぞ。で、何が言いたいかと言うとだ。お前、助かりたいか?」


『狙撃』


「いぎっ!」


返事を聞く前に大腿部に一発。まずは痛い目を見せておかないとな。


「心配するな。後で治してやるよ。それで返事は? それともエチゴヤらしく戦って死ぬか?」


おっと、私としたことが。いかんいかん。


『闇雲』

『消音』

『浮身』


おばさんを隅に移動させておいた。ゼリアテが女の前だからって無駄な意地を張ったら面倒だからな。


「ほら、これでもう大丈夫だ。お前が日和ったなんて誰にもバレねぇさ。


「舐めんなガキぃ! こっちぁ命かけてこの島ぁ乗っ取ったんだぁ! てめぇごときしゃべぇガキにちっと脅されたぐれぇでイモぉ引いたらこの先生きてけねぇんだよ! やるんならさっさと殺しやが『狙撃』れっごあ!」


「残念ながらまだ殺すわけにはいかんな。お前が色々と歌ってくれないと後が面倒なんだよ。例えばローランド人を集める時なんかさ。」


「ほぉん? てめぇローランド人を助けてぇってのか? へへっ、それなら俺の言うこ『氷弾』とっひゃ!?」


「手癖が悪いな。そのまま貼り付いとけ。」


生意気な手だ。魔力庫からポーションか何か取り出そうとしやがったから手の平を貫いたついでに氷で床にくっつけてやった。


「くひゃひゃあ! ローランドの女なら何人かいたぜぇ! だが遊びすぎたせぇかよぉ! どいつもいつもガバガバんなっちまってよ? アラニシ送りんなってんぜぇ! げひゃひゃあ! どうよ!? お前みてぇなガキがイキがって英雄気取るなんざ百年『金操』早ぇべべべーーーーとおっぴゅっ! んむむむむむ! んむーんむーー! おぼっ……」


この外道が……よく回る舌を持ってやがるから……引き抜いてやった。情報が欲しかったが残念だ……『風斬』


魔法解除。

再びおばさんを私の目の前に寄せる。


「よく見ろ。お前もこうなるか?」


舌を抜かれ、首だけになったゼリアテを眼前に突きつける。


「ひっ! ひいぃぃぃーーーー!」


あらら、気を失っちゃったよ。魔力は高いくせにだらしないな。代わりに悲鳴で何人か集まってきた。まあちょうどいいか。


「この中にゼリアテの腹心みたいな奴はいるか? いるなら助けてやってもいいぞ?」


「あ? なんだこのガキぃ?」

「おい! あれゼリアテさんじゃねぇか!?」

「は!? マジか!? どうなってんだ!?

「まさか!? あのガキかぁ!」


「そうだよ。俺が殺した。お前らもエチゴヤだな? ゼリアテの腹心はいないのか? それなら全員殺すぞ。ちょっと機嫌が悪いんでな。」


ゼリアテのせいで……


「ざけんな!」

「もう殺す!」

「ゼリアテさんの仇ぃ!」

「死ねやぁ!」


『狙撃』


誰が腹心かなんて分かるわけない。だから全員殺した。


さて、この屋敷の捜索は……仕方ない。一部屋ずつ行くか……




「きゃっ! な、何よアンタ!」


「お前はローランド人か?」


「ち、違うけど……」


「邪魔したな。」


次行こ。


「なんじゃあ! 今いいとこなん『麻痺』っだ……」


「ひいっ! 何なのよ!?」


「お前はローランド人か?」


「違うわよ!」


「邪魔したな。」


次……




繰り返すこと二十数回。女だけの部屋もあればプレイ中の部屋もあった。今って非常時のはずなんだけどなぁ。どいつもこいつも危機感が足りないね。

で、ローランドの女はいなかった。詳しく話を聞いたわけではないが。


詳しく話を聞くのは気を失ってるおばさんからの方が効率がいいってもんだ。アレクに起こしてもらおう。やれやれ……

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