1525話 アラナカ急襲

着地したカドーデラたちはいきなり暴れ始めた。ドロガーも鬱憤を晴らすかのように手当たり次第に暴れまわっている。いきなりすぎるだろ……


「カチコミじゃあー!」

「どこのもんじゃあ!」

「ぶち殺しちゃれや!」

「こっちだぁ! 集まれぇ!」


明らかにエチゴヤっぽいのは攻撃してもいいとして、民間人っぽいのも紛れてるからな……判断が難しいなぁ。よく見れば役人っぽいのもいるし。役人はギルティ……と言いたいところだが、あいつらって契約魔法でガチガチに縛ってやればよく働くだろうな。いったん保留にしといてやるか。


『落雷』


威力をかなり弱くしておいた。間違っても死ぬことはないだろう。そこで気絶しておくといい。


「上にもおるぜぇ!」

「石投げろ石ぃ!」

「弓と矢ぁ持ってこぉい!」

「誰かアルバぁ飛ばせや!」


ああやって抵抗する奴は全員エチゴヤと見なしていいだろう。


『落雷』


カドーデラなら生き残るであろう威力だ。あいつらはどうだろうね。


「なんだぁ! 何事かぁ!?」

「おい! デデテホたちが倒れてんぞ!」

「うっ、焦げ臭え!」

「トルドさん呼べぇ!」


トルド? ここのボスはゼリアテじゃなかったっけ? 他に中ボス的な奴がいるのかねぇ。でも残念。お前たちは呼びに行けねーよ。


『落雷』


こいつは楽でいいや。ああやってエチゴヤどもを転がしておけば続々と集まってきやがる。私はそこを狙い撃ちするだけでいいんだからな。


おっ、狼煙が上がった。だが残念。


『水球』


上空へ登る前に鎮火。

おっと、あっちは鳥か。


『狙撃』


長距離狙撃だって楽勝だ。ホーミングだから外しようがないぜ。




それから数ヶ所の狼煙を消し、数羽の鳥を仕留めた。見える範囲ではアラナカ本部事務所から逃げ出した奴はいないし、新たに突入できた奴もいない。それ以外の奴らがどんな動きをしているのかは分からないが、眼下には少なくとも三百ぐらいの人間が転がっている。魔力の反応的には半分以上が生き残っているが、実際にはもっと多いだろう。魔力がしょぼすぎて反応を拾えない奴もいるだろうからな。


「カース、下から何か来るわ。」


「へー珍しいね。ラセツドリじゃん。」


ノワールフォレストの森で出会ったことがある。あの時はスパラッシュさんと一緒だったなぁ。泣きそう……でも大丈夫!

あの時は少しだけてこずったけど今はもう……


『榴弾』


「ギィイィイビョオォォ……」


ライフル弾を避けるような魔物でも、数百発のベアリング弾は避けきれまい。それにしてもこんな所にラセツドリがいるとはねぇ。あ、誰かの召喚獣か。

やっぱり。死骸が消えちゃったよ。ラセツドリを伝書鳩代わりにしてたんだろうなぁ。贅沢な。さーて、術者はどーこだ?


全然分からん……コーちゃん教えて?


「ピュイピュイ」


あっちね……


空から急襲。おっ、いたいた。


「なっ!? て、てめ『落雷』っえぇおごご……」


終わりっと。一応幹部っぽいから捕まえておこう。


『浮身』

『麻痺』


尋問までする気はない。カドーデラたちに任せておけばいいさ。




さて、多少は落ち着いたようだな。


「アレク、見張りの続きを頼める?」


「いいわよ。どこか行くの?」


「うん。娼館とか遊べる所が多いって聞いたからね。ローランド人がいないか確かめてくるよ。」


「分かったわ。遅くなってもいいけど遊ぶのはだめよ?」


「ははは、遊ばないって。じゃあ行ってくるね。」


「ふふ、いってらっしゃい。」


むふっ。アレクはその言葉とともに私の頬に軽くチュッと。むふふ。




ミスリルボードからゆらりと着地。さてと、上から見た感じだと娼館はあっちか。




あった。ここら一帯が歓楽街ってわけね。アラナカ本部事務所から二百メイルと離れてないじゃないか……あいつら仕事する気ねーだろ……

ここらはまだ混乱が収まってないのか。


「よう兄さん。ここで一番いい店ってどこだい?」


「ああ!? 今それどころじゃねんだよ! そこの美奴楼ビードロにでも行け!」


「おう。ありがとよ。」


びーどろね。いい響きじゃん。高い店なんだろうな?


あれか。へー、入り口の感じからすると確かに高そうじゃないか。まずはここから行こうかね。


「いらっしゃいませお客様。ですが申し訳ございません。ただ今混み合っておりまして少々お待たせしてしまうやも知れません」


「ここの女を全員呼べ。ほれ、これだけあれば足りるだろ?」


足元に落としたのは白金大判を五枚。建物ごと買える値段だろ?


「ひっ!? ご、五億……しっ、少々お待ちくだはいまへぇぇーー!」


おーおー慌ててるね。非常時に非常識な客が大金持ってやって来たんだ。そりゃあそうだろうさ。おっと、ばら撒いた金は回収っと。支払いは後だ。


それにしてもまだ夕方にもなってないってのに客がほぼ満員って……ここの奴らどんだけ仕事してないんだよ。つーかむしろほぼ仕事ないんだろうな。働くのは西と北で、ここの奴らは指示だけ出しておけばいいってとこか。ふーん……生意気な集金システム作ってやがるじゃん。

おっ、さっきの店員じゃないな。女主人って感じの奴だ。へー、歳はいってるが色気むんむんじゃん。


「お客様。お歳に見合わせぬ大層な得物をお持ちとご推察いたします。ですが当館の花は現在全て出払ってございます。ですが、それだけの大金をお持ちなのであれば私自らお相手することもやぶさかではございません」


「本来ならばマダムキャサリンがお相手するのはこの街の支配者層だけでございます。それを本日は特別にお相手してくださるとのこと。お客様は幸運な方でいらっしゃいますな」


へー。それが本当かどうかはともかく、ここが高級店ってのは本当みたいだな。

それじゃあ『麻痺』


「あらあら。慌てる子供は貰いが少ないんですよ? おイタをした子は……お仕置きね!」


マジかよ。隣の店員はピクピクと麻痺してんのに。このおばさんには効いてない。珍しく魔力が高い奴もいたもんだな。まあ、それならそれで……

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