1523話 支配のための饗応
カドーデラとビレイドはゴンズを含むここの奴らに何か話しをしている。時折りカドーデラの刀が誰かの耳や肩を斬っているように見えるが、まあ別にいいだろう。それより私は食事の用意だ。見えるだけでも二百人はいるからな。しかも先程まで凍死寸前まで凍えてたんだ。熱々を食わせてやるともさ。
ワイバーン肉はまだまだある。だが、さすがにこいつらのために全てを提供する気はない。だってワイバーン肉ってかなり旨いんだぜ?
そうなると……やっぱオークだな。これだって結構旨いし。おまけにワイバーンより大量にある。
よーし、オーク肉祭りだ。解体しよ……
「手伝うわ。」
「ありがとね。」
解体はアレクの方が上手いんだよなぁ。負けてられないぜ。
「魔王よぉ……何やってんだ?」
「見れば分かるだろ。オークを解体してんだよ。ちょっと人数が多いから肉が足りないんだよ。お前も解体しろ。五等星なら楽勝だろ?」
「そりゃあできるぜぇ……けどよぉこりゃローランドのオークだろ? ヒイズルにゃあんまオークがいねぇんだぜ? 多少失敗しても許せよぉ……」
「魔物はだいたい変わりねーって。内臓を傷つけねーようにバラせばいいんだよ。」
「そんぐれぇ分かってらぁな……」
腸から肛門にかけて糞が詰まってるからな。その辺が可食部に触れると味がかなり落ちるもんなあ。下手すりゃ食えなくなるし。
よし、これで解体は間に合うだろ。なら次は焼きだな。さすがにミスリルボードだけでは足りないだろうなぁ。味付けは無視でいい。自分らで好きにやれってところか。そうなると……
『鉄塊』
『点火』
『金操』
『圧縮』
『コ』の字状に幅一メイルの鉄板を作ってやった。一辺は十メイルぐらいか。これなら全員で一気に食えるだろう。
よぉし、解体が終わったやつを片っ端から焼いていくぜ!
『お前ら! 肉を焼くぞ! こっちに来い! 来て食え!』
拡声を使って人足どもを集める。箸やフォークまでは用意してやらんぞ。熱いのを我慢すれば素手でも食えるだろう。
「ピュイピュイ」
え? 酒が欲しい? うーん……ま、いっか。樽ごとプレゼント。味は知らないよ。あいつらにも飲ませてやってね。ドロガーにはだめだよ。
「ガウガウ」
いいから早く焼けって? 生でも食うくせに。だいたいこの肉は港湾労働者のためなんだぞ?
でも焼くけどね。ううーん、どことなく懐かしいオーク肉が焦げる匂い! たまらんね。
おっ、恐る恐る近寄ってきた労働者たち。いいから食べろってんだ。
「あつっ!」
「うっま!」
「これ何の肉だ!?」
「ん、これなんで浮いてんだ?」
『ローランド王国産のオーク肉だ。ありがたく食え! 鉄板が浮いてるのは俺が魔法で浮かせてるからだよ。』
これだけ広い鉄板を浮かせるのは魔力的には大したことはないが、常に一定の高さをキープする制御力は驚嘆なんだぜ? 分かるかなー? 分かんねーだろうなぁー。
「うっめぇーー!」
「なんだぁこれ!?」
「こ、これは!」
「ぐふっ、な、懐かしい味だ……」
ん? 今のやつ……
『この中にローランド王国の者はいるか? いたら手を挙げろ!』
おお……いるじゃないか! わずか二人だけだが。
『今手を挙げた奴はこっちに来い!』
嫌そうな顔をして、恐る恐る近寄ってきた。二人ともおっさんだな。
「お前ら出身はどこだ?」
「お、俺はアベカシス領のトルネリア……」
「俺はタンドリア領のバンダルゴウ」
見事に東西に分かれたな。だがそんなことはどうでもいい。
「よく分かった。アラキタには他にもローランド人はいるか? いるなら全員集めておけ。故郷に帰してやるからよ。分かったか?」
「あ、お、はぁ……」
「他にはいないはずだが」
「いないんならいいさ。お前らは帰りたいのか?」
「もっ! もちろん! もう一度トルネリアのベリータルトを食うまでは死ねねぇ!」
「俺はどっちでもいいけど、帰してくれるんなら帰りたいかな」
「分かった。帰してやる。それまではビレイドって奴の指示に従っておけばいい。分かったな?」
「あ、ああ……」
「それよりアンタは何者なんだ?」
何者? と言われてもなぁ……何て説明すればいいんだ? ローランドの魔王だって言っても知るわけないだろうし……
好色騎士と聖なる魔女の三男って言うのも血筋自慢みたいで言いにくいし……
当然ながら模範騎士ウリエンの弟とも言いにくい……虐殺エリザベスの弟だなんて、なお言いにくいぞ……
「そういった話は後ね。まずは好きなだけ食べるといいわ。」
おお……困った時のアレク! いいタイミングで助かったよ! ありがとう!
「そ、そうだな……うめぇ……!」
「ありがたくいただくよ」
ぼつぼつと集まってきたな。これで全員かな? あちこちから嬉しい悲鳴が聞こえてくる。我ながら見事な鞭と飴だぜ。これでアラキタはもう完全に落ちたな。エチゴヤに支配されてたんなら相当酷い扱いされてたんだろ? まあ蔓喰の支配も似たようなもんだろうけどさ……少しはマシかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます