1483話 戦い終わって

医務室を出るとゴッゾやカドーデラがちょうど来ていた。


「魔王さん、行くんでしょ? いい店用意してやすぜ。」


「ピュイピュイ」


私よりコーちゃんが先に返事をするのはもはやあるあるだな。コーちゃんあるある。


「おめぇビレイドごときにえれぇ手こずってやがったなぁ? どうよ、あいつぁ強かったんかぁ?」


「うーん、強いかって言われると微妙だが、厄介だったかって言われたらその通りだな。なんせこっちの攻撃が全然当たらなかったからな。その辺のことも酒飲みながら話してやるよ。」


「こいつぁ驚きやしたぜ。魔王さんに厄介と言わせるたぁ。ゴッゾにゃあ絶対無理でしょうからねぇ?」


「カドーデラさぁん……そりゃあねぇよぉー! 俺だって素手の勝負なら魔王ぐらいさぁ……」


それにしてもゴッゾは私とカドーデラでは口のきき方が全然違うよな。カドーデラみたいに敬語使えとは思わないけどさ。


「お前らって明日は参加するのか?」


「アタシはしやせんぜ。魔王さんみてぇなバケモンと戦うなんて冗談じゃないですからねぇ?」


「俺ぁ参加すんぜ? カドーデラさんの分までおめぇをぶん殴ってやんぜ!」


「まあ、対戦したらな。」


明日はどんな感じで始まるんだろうな。今日のように十メイル程度の距離を開けて開始したら私にかなり有利なんだけどね。


「おう魔王、待ってたんだぜ?」


お、傷裂きずさきドロガーだ。


「豪華なメンバー連れてやがるな……」


乱魔キサダーニもいる。


「なんじゃあ? 俺らに何か用かぁ? おぉ?」


「ゴッゾは黙ってな。今夜はみんなで飲むんだからよ。いいよなカドーデラ?」


「傷裂ドロガーと乱魔キサダーニですかい。アタシぁ構いませんぜ。楽しい夜になりそうですぜ。なあお二人さん?」


「ふん、人斬りカドーデラかよ。ヤチロの鬼刃おにばがテンモカで何してんだかよ?」

「豊穣祭に参加しに来たに決まってるだろ。お前三日目を見てねぇのかよ……」


「そんなことぐれぇ知ってんだよ。そんなことのためだけにテンモカに来たんかどうかと聞いてんだよ!」

「俺が知るかよ! カドーデラに聞けばいいだろぉが!」


「あぁん? やんのか? この傷裂ドロガー様とよぉん?」

「お? なんだこら? やったろか? お前の魔法なんざ乱魔で全部防げるんだからな?」


この二人……実は仲良しなのか?


「飲む気がないんなら置いてくぞ? せっかく奢ってやろうと思ったのによお……」


「ちっ、魔王に免じて勘弁してやんよ!」

「そりゃ俺の方だ!」


「ぎゃははは! おめぇら魔王に頭が上がんねぇのかよ! 五等星のくせによぉ!」


あーあ。ゴッゾまで絡んできた。バカばっか。


「あぁん? お前はぶん殴るしか能がねぇんだろが! おらぁ! この俺を殴ってみろや!」

「ドロガーに任せるぜ。俺は脳筋野郎とは相性が悪ぃからよ」


「カドーデラ、行こうか。バカは放っておいて飲もうぜ。」


「ええ、ご案内いたしやす!」


「ああっ! 待ってくれよカドーデラさぁん!」


コントか! ゴッゾはカドーデラべったりだな。ごっつい体に凶悪なツラしてるくせに。


「ぎゃはは! お前こそ人斬りに頭が上がんねぇでやんの!」

「ヤチロの鬼刃はいつ丸くなるのかねぇ……」


「ピュイピュイ」


コーちゃんが急かしている。早く飲みたいよね。さあ行こう。




到着したのは……何だ。昼間の店じゃん。風情があっていいけどさ。


「魔王さん! わざわざ来てくれてありがとうございます!」


あらら。会長じゃないか。こんな酒の席にまで顔を出さなくてもいいのに。ヨーコ・ミナガワって言ったかな。


「やあヨーコちゃん。お出迎えありがとう。きちんと挨拶できて偉いね。」


前世のクソガキどもとは大違いだよね。かわいいから頭なでなでしちゃう。キアラは今頃どうしてるんだろ……


「てめぇ……会長に……」

「えへへ……こっちです! どうぞどうぞ!」


ゴッゾが何か言ってるが知らん。文句があるなら止めてみやがれ。


「ほぉん、あれが蔓喰の幼怪ようかいヨーコ・ミナガワか。あんな顔して若者頭かしらも剛拳も頭が上がらねんだよな?」

「らしいな。どこがすげえのかさっぱり分からねぇ。分からねぇところが逆に恐ろしいぜ……」


ドロガーもキサダーニもバカのくせに難しいこと考えてやがる。意味ないだろうに。今夜は楽しく飲むんだよ。頭が空っぽなお前らにはちょうどいいだろ。






宴もたけなわ。ヨーコちゃんは寝てしまったのでカシラが連れて帰った。

アレクは私とイチャイチャしてる。いつもの超かわいい泥酔バージョンだ。アレクも魔力がだいぶ低下しているから酔いやすいんだよね。私はさっきポーションを飲んだから二割ちょいまで回復した。これだけあればそうそう悪酔いをすることもない。


ちなみにビレイドのことはカドーデラだけに話した。こいつの口からゴッゾに伝えれば悪いようにはならないだろう。もちろんカドーデラも第四番頭が何をしてきたのか想像もつかないらしい。そりゃそうだ。

こんな時は母上に相談したいものだが……いやいやだめだ。それは旅が終わってからの土産話ついでだ。それまでは自力で解決せねば。


他人の身体を操ったり、他人の中に意識だけを潜り込ませる魔法と言えば『禁術・心身傀儡』だっけ? 私が自分の手で自分の首を絞めさせられたやつだ。でもあれってそんなに長くかけっぱなしにはできないよな。母上は宮廷魔導士なら誰でも使えると言っていたが、それでも使いっぱなしにできるとは思えない。

うーん、分からん。やっぱ第四番頭に会ってからだな。でも私のことだから聞く前に殺してしまいそうなんだよな。第三番頭アガノからもろくに情報を引き出せなかったし。

まあいいや。最終的にエチゴヤや天王ジュダを全滅させれば同じことだ。地道にやればいいさ。ふぅ、酒がおいしいなぁ。


カドーデラはコーちゃんと差しつ差されつ。

ゴッゾとドロガーとキサダーニは飲み比べ。

私はアレクを膝枕して、寝顔を肴にちびちび飲んでいる。うーん、いい夜だなぁ。


あれ? 何か忘れてるような……

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