1450話 豊穣祭の六部門

玄人オッさんによると二日目は武器あり部門。ただし魔法はなしで、刃物は禁止。


三日目は同じく武器あり部門。魔法が禁止なだけで他は何でもあり。


四日目は魔法のみ部門。魔法以外の方法での攻撃は禁止。双方とも開始位置を動いてはいけないらしい。魔法対戦とほぼ同じルールか。


五日目は何でもアリ。どれに出場するか迷うな……


六日目は打って変わってペット部門。召喚獣でもペットでも家畜でも人間じゃなければ何でもいいらしい。何と言うか……豊穣の神ってバトルジャンキーなのか? どんだけ戦わせたいってんだ……


七日目は一日目から六日目の優勝者によるバトルロイヤル。ここで総合優勝が決まるらしい。総合優勝者が最も神から祝福を貰える可能性が高いとか。


その後に表彰式。領主から各部門の優勝者だけでなく、目を引いた者には個別に褒賞が渡されるらしい。

それにしても一週間に渡ってお祭り騒ぎとはすごいな。さすがは遊びのテンモカだな。


どうしよう……どれに出ようかな。迷うな。全部出てもいいんだが少しダルいしな。四日目と五日目にしようかな。カムイなんか六日目に出たいって言いそうだし。


「カース、どれに出る気?」


「普通に四日目と五日目かな。もしかしてアレクも出るつもり?」


四日目の決勝をアレクと……ってのも悪くないけど……あの時みたいな凄惨な戦いは嫌だぞ……


「ええ。四日目に出ようと思ってるわ。魔法対戦と同じようなものみたいだし、それなら勝算があるわ。カースが相手でもね?」


「へ、へぇ……」


アレクめ。言うじゃないか……ならば受けて立とうではないか!


「それよりカースは二日目とか参加したら良さそうなのに。しないの?」


二日目は刃物なしだからな。私のイグドラシルの棍『不動』なら無敵だよな。命中すればの話だけど……


「はは、やめとくよ。棍術にはまだまだ自信がないからね。」


「ピュイピュイ」


え!? コーちゃんたら六日目に参加するの!? マジで!? いいの? なんか反則じゃないの? 大丈夫なのか?


「ピュイピュイ」


自分は大地の精霊だから……あー、そうだったね。だから土と豊穣の神デメテーラとは関係が深いわけね。あれ? カムイもそんな感じじゃなかったっけ? あいつは精霊ではないけど。まぁいいか。


「おおぉ? 魔王じゃねぇか。こんな所で見物かぁ?」


あらら、蔓喰のゴッゾではないか。


「豊穣祭に参加しようと思ってな。受付がてら見物ってわけだ。お前は?」


「俺も似たようなもんだぁ。おめぇのおかげで幹部会でいい顔できたからよぉ! 来週の豊穣祭にも参加できるってわけだぁ!」


「ひっ……ひぇっ……剛拳ゴッゾさん……!?」


さすがは玄人オッさん。ゴッゾのことを知ってるのか。


「あぁ? んじゃぁあ、てめぇは?」


「へっ、へいっ! 八耳のヒョージや二枚舌のマウなんかと一緒に城門でよくゴザぁ敷いてる藪睨みのサイトでございやす!」


おお、ここでヒョージの名前が出てくるとは。


「ほぉう。そうかそうか。まあ困ったことがあったら言ってくるんだぜ? この俺になぁ?」


「へ、へいっ!」


縄張り的な何かがあったりするんだろうか? よく分からないな。どうでもいいし。


「で、ゴッゾ。お前はどの部門に出る気なんだ?」


「ひっ、に、兄ちゃん! バカ、こちらのお人は!」


あらら、オッさんたら。私の心配なんかしてくれちゃって。


「いいんだよぉ。こいつぁローランドの魔王だぁ。おめぇこそ対等な口ぃきいてっと砂にされんぞ?」


「ま、まおう……ローランド……ひっ、ひいいいいいーーーー!」


あらら。オッさんたら全力で逃げてったよ。それより砂にするって何だよ。氷の魔法と乾燥を強めに使えばできそうかな。


「で、俺ぁ初日だ。伊達に剛拳ゴッゾなんて言われてねぇからよぉ。おめぇも出る気なんかぁ?」


「ああ、四日目と五日目にな。こっちのアレクは四日目に出るぜ。蔓喰からは他に誰か出るのか?」


「さあなぁ? ビレイドの奴がトチ狂ってやがったから四日目か五日目に出るのかも知れねぇなぁ?」


ビレイド……あー、あの誓約野郎か。生意気にもアレクに契約魔法をかけやがったやつだからな。当たったらコテンパンにしてやろう。


「それより魔王よぉ? おめぇ初日に出てみねぇか?」


「バカ言うな。一回戦すら勝てるか怪しいってんだ。」


そりゃあ身体強化を使えば優勝する自信はあるが、魔法禁止だもんな。装備の力でごり押ししてもいいが、それにしたって素手では限界がある。


「そんじゃあ試してみっかぁ? 俺相手によぉ?」


「だから勝ち目がねーってんだ。俺は魔法なしだと非力なお子様なんだよ!」


いや、セブンティーンはもうお子様じゃないな。


「試してから言えやぁ!」


バカっ! こんな歩きにくい客席で殴りかかりやがっ……


「くっそ……痛ぇーじゃねぇか! なんだよそりゃあ!」


防御しただけだ。私の前腕には常にエルダーエボニーエントの籠手が装備されてるからな。白いシャツの下は危険なんだぜ?


「よく拳が折れなかったな。まあそういうわけだ。俺は素手の殴り合いじゃあ勝てないからな。参加もしない。まあお前が派手に戦うところを応援してやるよ。」


素手の勝負か……

別に素直に殴り合う必要はないんだよな。

ドノバン前組合長なんかは関節技も使うって話だったが、結局一度も見てないんだよな。いつもぶん殴ってばかりだったような。関節技か……ヒイズルにはあるんだろうか?

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