1418話 繚乱華の乱

食事をしながら軽く世間話でもしてみたが、ここテンモカには実に多彩な店があることが分かった。


全体の六割程度は普通に男が女を買う店だそうなのだが……


他には……


・男が男を買う店

・女が男を買う店

・女が女を買う店

・男が女装した男を買う店

・男が男装した女を買う店

・女が女装した男を買う店

・女が男装した女を買う店

・様々な服装を着せて遊ぶ店

・暴力を振るえる店

・暴力を振るってもらえる店

・食事中に話したくもない変態プレイができる店

・自然な出会いに任せる店

・一緒に酒を飲んで気に入ったら連れ出す店


とにかく多彩だった。おまけに年齢層も幅広いときては、そりゃあ従業員がたくさん必要だわな。


なんでも、ヒイズルでは『遊びたければテンモカに行け』とか言われているらしい。

でも『学びたければイカルガに行け』とは言われてないらしい。なんだかなぁ。




食事を終えて、新たに質問が来ることもなく全員を三部屋に分けて休ませておく。夕方までは宿から出なければ自由だと言い聞かせておいて。


私とアレクはお出かけだ。コーちゃんとカムイには悪いが夕方までボディーガードをしてやってよ。宿の中なら大丈夫とは思うけどさ。


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


その代わり明日はご馳走だからな。楽しみにしててくれよな。


さて、ちょいとあのガキの姉ちゃんの所に行ってみるかな。


「シム、今日はヒョージの奴は来るのか?」


「い、いえ……」


まあ、別に用はないんだけどね。


「店の場所は覚えてるな?」


「お、押忍!」


「それなら問題ないな。行くぞ。」


「押忍!」




歩くこと七、八分。結構近いな。


「ここです!」


ほほう。繚乱華……なんて読むんだ? 昨日更地にした店より高そうだな。まあいいや。入ろう。


「邪魔するぜ。」


「いらっしゃいませ。ご指名はございますか?」


若いお兄さんだね。パリっとした服を着てるね。


「ああ、えーっと……おいシム。姉ちゃんの名前は?」


「バネッサ・オードパンだ! 姉やを出せ!」


「ああ、昨日のガキか。表から入ってくるんじゃねえよ。裏へ回れって言っといただろうがボケ」


態度ががらりと変わったな。まあ当然か。だがいきなりチャンスをゲット。


「おい、お前今俺にボケって言ったなぁ? 聞き捨てならんな。楼主を出せ。お前みたいな下っ端じゃあ話にならん。」


「はぁ? 何言ってんだ? 俺ぁこのガキに言ったんだよ。てめぇもヒョージみてぇなクソと交流つるんでもいいことねぇぞぁ?」


ヒョージはどうでもいいんだよ。


「あ? 逃げてんじゃねぇぞ? お前は俺にボケって言ったんだよ。この落とし前どうする気だ? お?」


我ながらチンピラの真似が上手いぜ。なんせ絡まれた回数ならかなり多いからな。


「てめぇら……買い取りだ何だぁって言いながらよぉ……うちの店に因縁つけんのが目的かぁコラ!? やんならやってやんぞ? うちのケツモチぁ蔓喰だぞ? てめぇ死んだぞコラ?」


おっ、ようやく蔓喰の登場か?


「呼べ。楼主でも蔓喰でも呼べ。ローランドの魔王をボケ呼ばわりしちゃったけどケツ持ってくださいってなぁ!」


「ロ、ローランドの……!? フ、フカシこいてんじゃねぇ! てめぇみてぇなチビが! 魔王って言やあビビると思ってんじゃねぇぞ!」


あーあ。チビって言ったか。私より少し背が高いだけの野郎が……


「そう思うんならよ? 力尽くで叩き出してみろよ? ほれほれ。」


「舐めんなぁーー!」


すごい。見事に思い通りに動いてくれたな。痛って。自動防御をわざわざ解除した上に、拳の軌道上に顔を持っていったんだぞ? こいつ殴り慣れてないわ。


「殴ったな? 父上にもぶたれたことないのに……んんっ、ごほん。まあそれはいいや……

お前がこの店を代表して俺に宣戦布告したってことが分かった。もうお前に用は無いから寝てろ。」


「何だコラぁ!? 今のは手加減し『麻痺』たっとぉ……」


さあて、そろそろ他の奴らも出てきそうなもんだが……ちなみに入口のロビーっぽい所には数人ほど客が入ってたが、ぽかーんと私達のやり取りを見ているだけだった。そりゃそうだ。


「はぁーい、お待たせしましたぁ! 次のおきゃ……あれ? 何事かありました?」


「ああ、こいつが俺をボケやらチビ呼ばわりした上に殴りやがったんだよ。なんだこの店は? 楼主を呼べ。」


女の子相手にあんまり言いたくないけどなぁ。


「へっ!? ニコテムさんが? お客様に!? もも、申し訳ありません! でも一体何が何だか……」


「ああ、いいからいいから。楼主を呼んでくれるか? 悪いようにはしないって。あ、蔓喰でも構わないけど。」


「へっ? つる……いやいや! 楼主様を呼んできます! お待ちください!」


「早くしろよ。間に合わなくなっても知らんぞ?」


こっちはいつでも更地にする気満々なんだからな。当初は穏便に買い取るつもりだったのだが、思わぬ展開でラッキーだったな。

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