1321話 三番隊隊長サザールの挑戦

ピラミッドシェルターは安全地帯の隅に置き、氷壁で隔てておいた。こっち来んなよ。ちなみにコーちゃんは酒飲み隊長と一緒に飲んでいる。カムイは正気に戻った赤兜に体を洗わせている。洗い方が私より下手だと言いながらもまんざらでもなさそうだ。これが寝取られか……違うか。

私はアレクとイチャイチャするから別にいいし。





うーん、よく寝た。あれ? 隣にアレクがいない。先に起きたのかな? 外に出てみよう。


「カース、起きたのね。おはよう。さっそく作ってみたわよ。飲んでみてくれる?」


「おはよ。まさか例の味噌汁まいそしるかな? いただくね。」


昨日の今日でもうできたのか。アレクはすごいな。どれどれ……


「旨い……これは旨いよ! 隊長のやつよりかなり旨いよ!」


味が濃いとでも言えばいいのだろうか。旨味が凝縮されている気がする。あ、そう言えばアレクは『抽出』って魔法を使えるんだったな。それを利用したってことか。よく分からないがここまでしてくれるなんて嬉しいな。


「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


美味しい? それはよかった。さすがアレク。それよりカムイ、どこから帰ってきたんだ? 氷壁であっちとこっちを隔ててたってのに。あ、隅っこに穴が開いてる。きれいに切れてるじゃないか。やるなぁ……

よし、隊長にも飲ませてやるかね。『氷壁解除』


「お、今日は早いな。ん? 味噌汁か……」


「おはよ。うちのアレクが作ったのさ。まあ飲めよ。」


「いただこう……」


ゆっくりと口に含む隊長。こいつは味にうるさそうだよな。


「これは驚いた……どうやったのかは分からんが味噌まいその味が鮮烈に凝縮されている。毎日食うにはキツいかも知れんが、これは旨いな。大したものだ……」


「それはよかった。じゃあそれ食ったら出発しようか。あいつらはどうしてる?」


まあどうしてるも何も全員そこらに雑魚寝してやがるけど。


「見ての通りだ。どうせあいつらも目指す先は同じだからな。起きる前にさっさと出るのもいいだろう……」


「そうだな。そうしよう。」

でも『永眠ながのねぶり


もう半日ぐらい寝かせておこう。ついでに置いてる武器を没収だ。刀を二本ばかり、迷惑料ってことで。魔力庫に収納していないこいつらが悪いのだ。


「迷宮で武器を奪うとは……無体なことを……」


「命を奪うよりマシだろ? 昨夜の無礼はこれで忘れてやるさ。さーて、そんじゃあボス部屋を目指すとするか。」




群れで現れるウェアパンサーを駆逐しながら私達は進む。ちなみに今はアレクが先頭で頑張ってくれている。私は相変わらず筋肉痛が治ってないんだよな。


『氷散弾』

『烈風斬』

『吹雪ける氷嵐』


さすがのアレクも手こずっている。あいつら素早いんだもんな。アレクったらまともに撃っても当たらないから広範囲魔法で周囲のことなど考えず大暴れだ。それで正解だね。接近されたらそれだけでアウトって感じだもんな。さすがにカムイほど速くはないが、私達では接近戦で太刀打ちできないことぐらい分かる。やっぱ迷宮って甘くないね。さすが神域だわ。




それから一時間後……


「はあっ……はぁ……げほっ……はぁはぁ……カース、交代……」


「うん、分かった。アレクは休んでてね。よくがんばったね!」


常に全力で魔法を使いまくった結果、魔力も体力も尽きた。最後のウェアパンサーを何とか仕留めたところで交代だ。


「お前達はいつもこのような戦い方をするのか? 無理に一人ずつで戦わずともよいだろうに……」


隊長の言うことにも一理あるんだけどね。


「それじゃあ修行にならんだろ? せっかく神の試練を受けてるようなもんなんだからさ。」


まあ私達って接近戦だとあんまり強くないからな。集団で連携を使って戦うメリットがあんまりないんだよな。こうやって交代しながら一人ずつ戦った方が効率がいいんだよね。正直魔法なしだったらとっくに死んでるよな。おぉ怖い怖い。


「なるほど……確かにその通りだ。我々のような弱者の戦術など必要ないということか……」


「どうだかな。それはそうと後方の警戒を頼むな。」


「分かった……」


アレクはカムイの上に座って休んでもらわないといけないからな。カムイの上ならいきなり罠が作動したって避けられるだろうしね。


さて、それじゃあ行こうか。


『氷球』


そーれごろごろー。今日は少し趣向を変えて円柱ではなく迷宮のサイズぎりぎりに合わせた球にしてみた。特に意味はない。四隅が空いてるから魔物の大きさによってはスルーされてしまうけどね。


おおー、罠が次々と作動するねー。天井から落ちてくる岩や怪しい液体。横から襲う槍や針。下には当然落とし穴。氷球が見る見る削られていく。削られるだけで壊れるところまでいかないのが罠の威力を表してるね。落とし穴にも落ちないサイズだし。




そして二時間後。ボス部屋に到着した。


「ここは私にやらせてくれるか?」


えー? 隊長一人で勝てるのか? まあいいけど。


「それは構わんが、ヤバくなったら適当に乱入するけどいいよな?」


「ああ、それで構わん……」


さてさて、隊長のお手並み拝見といこうかね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る