第1280話 買い占めカース
さて、街中の食料を買い漁ってやったぞ。他にやるべき事は……
流通の邪魔だな。
この街に出入りする道は私達も歩いて来た一本しかない。全ての商人はそこを通ってやって来るってことだ。ほーら今も新たな商人がやって来た。
「やあこんにちは。行商人の方かい?」
「ああ、そうだが。何かご入り用かな?」
「そうなんだよ。手持ちの食料を売ってくれないか? 全部。」
「おいおい、そりゃ無理だよ。お得意様に頼まれてる分だってあるんだからさ。」
「分かってるって。だから相場の五倍出す。おまけに耳寄りな情報も付けちゃうよ?」
「おいおい、相場の五倍だって? うちの食料全部買ったら三百万ナラーはするよ? そんなに払えるのかい?」
もちろんだとも。だいぶ使ってしまったが、エチゴヤから押収した金がまだまだあるんだから。
「ほい、これでどうだい?」
「現金を見せられちゃあ仕方ないな。で、いい情報ってのは?」
「まあ待ちなよ。現物を渡してくれよ。」
あくまで情報はおまけだからね。
「食料は……と。こいつとこいつ、それからこっちもだな。」
大きな箱にまとめて詰めてあるのね。さすがに行商人の魔力庫は大きいな。
「確かに。では耳寄りな情報を教えよう。」
・今からおよそ六日後、迷宮に無税で入れるようになる。
・この街を深刻な食料不足が襲う。そのタイミングで大儲けを狙うのは自由だが略奪される危険もある。
・特に赤兜が暴徒と化す可能性が高い。
「こんな感じさ。信じるかどうかは自由だけどね。後はそうだな。今から二、三日ほどこの辺にいるから食料を運んできたら相場の五倍で買うよ?」
「二、三日かあ……ギリギリだな。よし、かき集めてまた来るよ!」
「他の商人からも買うからな。俺の金がなくなったら終わりな。 もっとも……」
魔力庫どーん。鉄の塊を見せてやる。
「金がなくなったら鉄で払ってもいい。品質は見ての通りだ。」
「こ、こりゃあ、まさか
「こいつを買うんなら相場通りでいいぞ?」
私は商売人としてはチョロいだろ? 交渉なんぞする気はないからな。
「買ったぁ! 一千万ナラー分ほど売ってくれぇ!」
そう言われると困るな。よし、アレクに『
『アレク、一千万ナラーだと何キロム渡せばいいかな?』
エチゴヤの番頭と賭けをした時に何万トンで何億ナラーって話をした覚えはあるんだが。
「ちょうど百トンね。」
なるほど。それは分かりやすい!
えーっと鉄が百トンってことは……だいたい二メイル四十センチ四方の立方体かな。少しぐらいサービスしてやるか。
「これぐらいかな?」
「いいところね。百十トンぐらいね。」
アレクの魔法は凄いなぁ。
「これでいいな?」
「色をつけてくれたのか! ありがとよ! じゃあこれを売った金で買えるだけ食料を買ってくるからな!」
「おう。待ってるぜ!」
ここと関係ない農村とかで食料不足が起こるんじゃない? 別に構わんけど。あーでも親が子を食うような地獄絵図になったら嫌だなぁ。私はただ、ヒイズルという国が二度とローランド王国に手出しできないようボロボロにしてやりたいだけなのだが。ほどほどに、物見遊山のついでに。
だって本気でやったら高高度からの十万トンメテオで終わりだしね。それをやったらローランドも津波に襲われそうだけど。あー怖い。
この日はこうやって行商人が通るたびに食料を買い漁ってやった。さすがに信用を重んじる商人もいたようで、全部売ってくれたのは八割程度だった。残りの二割は半分ほど売ってくれた。
さあて、明日からも面白くなりそうだ。とりあえず今夜は買った食料の中から高そうな奴を選んで食べよう。でも肉があんまりないんだよな。野菜に果物、酒や魚介類が多いな。
よーし、ガンガン焼くぞー。
いやー美味しかった! たまには野菜中心のバーベキューもいいもんだね。知らない野菜がたくさんあったことだし、思わぬ発見だった。はー満腹満腹。よーし、カムイ。洗ってやるぞー。
「ガウガウ」
分かってるって。ブラッシングもだろ?
んー……うるさいなぁ……誰だよ……ガンガン叩きやがって。朝か……
やれやれ。ピラミッドシェルターの上から顔を出してみる。
「何か用か?」
普通の騎士とカゲキョーの街の奴らか。
「あー、あんたか。いやな、ここで怪しい商売をしてるって通報があったもんで調べに来たんだが」
「心当たりはあるかい?」
「いや、すまんが分からん。むしろ何か迷惑をかけているなら言ってくれ。改めるから。」
そう言って騎士に金を握らせる。金で動く騎士って最低だけど楽でいいよなー。
「いや、何もないならそれでいいんだ。邪魔したな」
「よい旅を!」
「ちょ! ちょっと待ってくれ!」
「そうだそうだ! こいつは行商人を襲っているんだ!」
「どうして捕まえないんだ!」
ん? 身に覚えがないぞ?
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