第1275話 いざカゲキョー洞窟へ
さあ、私の不躾な質問にどう答える?
「き……」
き?
「きっさまぁあーーーー! 畏れ多くも天王陛下に向かってぇぇええーー! よくもそのような口をぉぉーー! 許せぬ! 許せぬぞぉおおぉぉーー!」
あらら、キレた。ちょっと『陛下』をつけずに天王って言っただけなのに。おーおー、目の色まで変わっちゃってまあ。
「悪かった。この国のことをよく知らない愚か者の言葉だと許して欲しい。」
軽く頭を下げておく。
「ふぅーふぅー……分かったか! ジュダ・フルカワ天王陛下はヒイズル唯一絶対の王! 何人たりとも蔑ろにすることは許さん!」
「よく分かった。あんた程の男を心酔させるぐらいだ。偉大な国王だということがよく分かった。だからヒイズルはいい国なんだろうな。」
「ふふふ、分かればそれでよい。ジュダ陛下は偉大なお方なのだ!」
うーん感情の起伏が激しいな。どっしりとした見た目とは大違いだ。そう言えば赤兜も国王には絶対の忠誠を誓っているって話だったな。代官もそうなのか。だから代官になれたのか、それとも代官にしてもらったから忠誠を誓ったのか。メリケイン連合国からの流れ者なのに国王にまでのし上がった男、ジュダか……
「では早速
「うむ、健闘を祈っておる。」
代官がこういう奴ならこの街をめちゃくちゃにしても心は痛まないな。正直さっきまでは少し悪いかなーなんて思っていたが。昨夜の宿屋にしてもムカついてたしね。門番の騎士は悪い奴ではなさそうだったが平気で金を受け取るような奴だし。やっぱこの国は腐ってるわ。いやまあローランド王国だってそんな清廉潔白な国でもないけどさ。
それから、副官に馬車で迷宮入口まで案内してもらった。
「ではまずそちらで契約魔法を受けていただきます。よろしいですな?」
「ああ、構わない。」
「いいわよ。」
詰所らしき場所へ案内される。ふむふむ、書類タイプの契約魔法なのね。
迷宮内で手に入れた物を金額に換算して八割を税として支払うと。全く問題ないな。サインをすると体を微弱な魔力が走った。契約魔法がかかった印だ。
「内部には何人も迷宮騎士が入っております。くれぐれも揉め事を起こさぬようご注意くだされ。冒険者もされておいでなのでご存知でしょうが、いかなる揉め事も死に損ですゆえ。」
「分かってる。好んで敵対する気はないさ。」
そこには数人ほど赤い鎧に身を包んだ騎士もいた。あれが赤兜か。迷宮がどんな所か知らんが、そんなフルプレート鎧で上手く動けるのか?
「では入口はこちらです。だいたいのご予定ですが、どのぐらい内部に滞在するおつもりで?」
「うーん、ノリで決めるつもりだけど……早くて夕方まで。長くても明日の夜には出てくると思う。まずは様子見かな。」
「内部はそこまで広くはありませんが、その代わり長く深いです。迷って出られなくなることもあります。くれぐれもご油断めさらぬように。」
広くないけど長く深い? よく分からんな。まあ行けば分かるか。ルートについてはアレクもカムイもいるから大丈夫だろう。
よし、では行こう。初めての洞窟探検だ。ワクワクしてきたぞ。入口なんかめっちゃ普通の洞窟だな。よーしレッツごー。ドレスからドラゴンの装備に着替えたアレクと腕を組んで歩くぞ。
なるほど……入口こそどこにでもある洞窟っぽかったが、一歩中に入れば全然違う。幅五メイル、高さ五メイル程度の正方形を立てたような通路が延々と続いている。時々左に通路があったり突き当たりで丁字路になってたり。こりゃ迷うわ。しかも洞窟なのに暗くない。昼間、とまではいかないが夕方程度の明るさだ。やっぱここって神域だわ……
「ガウガウ」
魔物? どこに……何ぃ!? いきなり目の前五メイル付近に現れたぞ!? 四匹も……しっかり魔力探査しながら歩いてたのに!? 意味が分からん!
『風斬』
だからと言って相手ではないんだけどね。今のはコボルトかな。久々に見た気がする。
何ぃ!? し、死体が消えた!? 解体しようと近づいたら……消えてしまった……
後には親指サイズの魔石が四つ残されて……どうなってんだこれ? 解体をしなくていいのは楽だが、素材が手に入らないのか? いや、でも海の天国館では迷宮産の肉だと言われたものを食べたよな? つまり……魔物によって落とすものが違うってことか?
何だそれ……ゲームじゃないんだぞ……
しかし、この意味不明さも神域あるあるだよな。まあいい。どうせ私がやることは変わらない。少し待とう。
「カース? どうしたの? 拾わないの?」
「うん。少し待ってね。今回は何も手に入れる気はないんだ。ちょっと実験もしたいしね。」
「そうなの? 私は全然構わないけど……」
本来の予定だと倒した魔物を全てほったらかしにしてアンデッドだらけにしてやるつもりだったんだよな。いきなり計画変更だよ……まったくもう……
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