第1233話 討ち入り

南東部の山手側か……


紫の奴の言う通りに飛び、到着した。一瞬だよな。


「普通の民家とエチゴヤの拠点、区別はつくか?」


「いや……無理だ……確かにあそこのほとんどはウチのものだが……無関係な奴らもいることにはいる……」


なんだよ……いきなり作戦変更かよ。上から火球を落としまくってやろうと思ったのに。

仕方ないか。バチオの妻子のこともあるしな。彼女らに罪はない……巻き込んでは可哀想か。素直に降りてからにするか……


「とりあえずこの中で最重要拠点ってあるか?」


「一応あの建物だ……」


「分かった。お前は生きてバンダルゴウに行きたければ必死にこいつの妻子を助けてやれよ?」


「あ、ああ……」


カムイ、頼むな。


「ガウガウ」


「じゃあアレク、行こうか。」


「そうね。」


素直に建物に入る。


『風球』


もちろんドアをぶち壊して。


「こんにちはー。エチゴヤさーん。」


「てめっ! 何もんじゃあ! ここをどこじゃあ思うとるんかぁ!」


いきなりテンション高いな。『氷弾』どうせ下っ端だろ。死ね。


『氷球』


おっ、アレクも始めたな。


「あんまり僕から離れないでね。」


「ええ、分かってるわ。適度にやるわね。」


おっ、奥からドタバタと出てきたな。


「なんじゃあてめぇらぁ!」

「調子んのってってとブチ殺されんぞぉ!」

「おお? あの女ぁ殺すなよ! ぜってぇ高く売れんぞぉ!」

「ぎゃははぁ! こいつぁいいぜ『氷弾』


お前らの話なんか聞く気はないんだよ。さっさと死ね。




結構いたな。二十人ちょいってところかな。上役っぽい奴は全然いないけど。

皆殺しにしてから金目のものも拾ってみた。大判小判がざっくざくとまではいかないが、それなりの金額にはなったか。重要拠点なだけあるな。ここに悪事の証拠があったり、囚われの人々とかもいるかも知れない。一応もう少し家探ししてみようかな。


「カース、こっちに地下室があるみたいだわ。」


「よし、行ってみようか。」


ふむふむ。ここは武器庫か。品質がよく分からないが全部貰っておこう。どこかで売ればいいや。

それからこっちは……牢屋……か? ちっ……嫌な匂いがしやがる……


『金操』


「逃げていいぞ。ここの奴らは皆殺しにした。」


「あ……あなた……」

「助けて……くれるの……」

「でも外に出ても……」

「…………今さら…………」


「歩けない奴は言え。ここは後で燃やすからな。さっさと逃げないと知らんぞ。」


ふむ、歩けない奴はいないようだ。全員女か。


「他にも牢屋はあるのか?」


「お、奥に……」


あっちか。


生意気に頑丈そうな扉で仕切ってやがる。要人でも監禁してんのか?


『金操』


無理に破らなくても鍵開けにも重宝する魔法なんだよな。こっちは違うタイプの臭さだな。暗いし。『光源』


あー、拷問部屋ね。趣味のいいことで。


「うう……たすけ……」


「オッケー。」


手足を拘束されて拷問の真っ最中を放置されたった感じか?


「ほれ、一口飲めよ。」


「がふっ、す、すまない……」


「扉は開けとくから早く逃げろよ。」


さすがにこれ以上奥はなさそうだな。これだけ探しても下っ端しかいないし。エチゴヤってのは命令系統どうなってんだよ。


「アレク、次行こうか。」


「そうね。この辺り一帯を灰塵と化してしまうのもいいわね。」


あれ? あいつら何やってんだ? さっさと逃げろって言ったのに。


「何やってんだ? 早く登れよ。」


「開かないのよ! 閉じ込められたのよ!」

「それに扉が熱いわ! きっと火をかけられたのよ!」


おやおや。しぶとい奴が生き残ってたのか。


「じゃあ下がってな。それからアレクはこいつらを守ってあげてくれる?」


「ええ、いいわよ。」


『水壁』で全員を囲ってから……『水球』


下から天井をぶち破る。地下室入口の扉を破ってもいいのだが、この方が意表をつけるだろう。


『浮身』


ほーらいた。なかなか強そうに見える奴が。


『風斬』


「くそがっ!」


へぇ、いい盾持ってんだね。でも残念、無駄だよ。


「ぐうあっ! なっ、これは……?」


『風斬』


「ひぃがぁぁあ!」


エリザベス姉上直伝の衝撃貫通、それにアレンジを加えた斬撃貫通だ。姉上だってやってたしね。盾で防いでも意味ないぜ?


「お前、名前は?」


「あぁ!? ざけんな! 誰が言うか!」


右手右足を失くしたくせに元気だな。下っ端ではないと見た。


「いいのか? このままだと死ぬぞ? この高ぁーいポーション欲しくないか?」


「うるせぇ! 俺ぁ命なんか惜しく『氷弾』


残念。いい情報源になるかと思ったのに。


『アレク、こっちはもういいよ。上がっておいで。水壁を解除するからね。』


それから数秒後、アレクと下にいた奴が登ってきた。もちろんアレクの浮身によってだ。


「よく燃えてるわね。さっさと出た方が良さそうね?」


「そうだね。もうここらの建物を片っ端から潰していこうね。おっと、お前たちは避難した方がいいぞ。浜辺に大きな船があるから、そこまで行けば怠惰な騎士が守ってくれるさ。」


「そ、そんな……」

「助けてくれるんじゃ……」

「あたしもう歩けない……」


「ほれ、高級ポーションだ。一人一口までにしときな。これ飲んで治らなければ諦めろ。」


あそこから出してやっただけでも感謝して欲しいんだけどな。


「情報が、欲しくないか?」


おっ、こいつは拷問部屋から助けた奴か。


「有益な情報ならな。とりあえず出るぞ。」


火の勢いが強くなってきたんだからさ。私達は平気でもお前らはヤバいだろうに。


さーて、こいつは拷問されるほどのいい情報なんか持ってるのだろうか。話を聞くのはここらを焼け野原にしてからでいいだろう。

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