第1232話 反撃の狼煙
アレクが目を覚ましてくれたことだし、これで動けるな。
『火球』
『火球』
『火球』
船が溶けない程度に威力を抑えて熱を加える。これで船内にいる魔物から魚から全部処分といこう。そうすれば収納できるからな。木造部分は燃えても構わない。金属部分さえ残っていればいいのだ。
「め、名簿が……!」
「どうせ朽ちてなくなってんだろ。諦めろ。」
私と同じ部屋を探しておいて気付かないとは、バカな奴だな。まあ妻子のために自分の組織を裏切るようやバカだから当然か。情報なんてどこから漏れるか分かったものではない。知っているのは私だけでいいだろう。後でアレクにも見てもらうけど。
遠巻きに見物人が集まっているがどうでもいい。ここらの民とは関わりたくないからな。
「燃やしちまったのー?」
「もったいなくねー?」
「金目のもんとかなかったのー?」
「珍しいもんとかさー?」
「なかったぞ。ヒイズルにとって弱点となる名簿があったそうなんだがな。とっくに朽ちて影も形もなかったわ。長年海底に沈んでれば当たり前だよな。」
「つーかさー、旦那なら沈んだ船を引き上げられるんだよなー?」
「おっ!? それってもしかして!?」
「大金ざくざくでウハウハ!?」
「ぜひやろうぜ旦那! 沈んだ船はまだまだあるんだからさー!」
「バカ言うな。さすがにやってられないぞ。今回はほんの気まぐれだ。まあアイリックフェルムを大量に手に入れたのは美味しかったけどな。」
おまけに旧型だけどムラサキメタリックもゲットしたし。魔力が満タンに回復したら、また加工しよう。
「あー、もったいねーなー」
「ぜってー遊んで暮らせるぜー?」
「しゃーねーか。さっさとこっちを片付けようぜ?」
「あーだりー。まあこれが終われば俺らももう騎士やめれるしなー」
それにしても小腹がすいたな。しかしこんな死体だらけの所でランチなんか食べたくはない。コーちゃんは、食べていい? って目で見てくるが、ダメだ。差別と言われようがコーちゃんにはそんな汚いものを食べて欲しくない。
それならもう殴り込みに行ってしまおうか。どうせもう気付かれてるんだろうし。よし、そうしよう。
「バチオ、エチゴヤの拠点があるエリアに殴り込みに行くぞ。だいたいの場所を教えてくれたら後はこっちで好きにやる。お前はその間、こいつに案内させて妻子を探せ。お前の警護はこの狼がやってくれる。分かったな?」
カムイ、悪いがこいつを守ってやってくれ。暴れるのはその後ってことで。
「わ、分かった……」
「ガウガウ」
それから腐れ騎士四人組は……
『炎壁』
船を火で囲んだ。
「お前らはここの見張りな。死体の処理でもしながらでも構わんが、船内に誰も入れるなよ? 何としてでもな?」
「おーいいぜー!」
「つーか実は金目のもんがあるんだろー?」
「じゃあ分け前期待していいか!?」
「いいよなっ! なっ! 旦那!?」
「あったらな。次に中に入る時はお前らも連れてってやるよ。好きなだけ探すといい。」
では、上から空襲といこうか。鉄ボードを取り出して……
「お前らこれに乗れ。」
不思議そうな顔をしつつも、いそいそと乗り込むバチオと紫のやつ。名前は真っ先に吐かせたんだけど覚えてないんだよな。
「な、なあ……俺も……助けてくれよぉ……こんなことがバレたら……絶対殺される……だけじゃ済まねえ……」
無敵(笑)の青紫烈隊も鎧がなければただの人か。
「助かりたかったら全力でこいつの妻子を救出してやりな。場合によってはバンダルゴウまで逃してやるよ。」
「たっ、頼む……エチゴヤは……裏切り者を決して許さないんだ……」
どこでもそうだよ。
「アレクは僕のそばにいてね。一緒に上から魔法を撃とうね。魔力はばっちり回復してるよね?」
「ええ大丈夫よ。カースの魔力ポーションは高級品だけあるわ。ふふ、王都の動乱を思い出すわね。」
あぁ、そんなこともあったなぁ。あの時は上空から千人ぐらい撃ち殺したんだったか。アレクだって何百人と撃ったはずだ。もっとも今日は狙撃ではなく……
『浮身』
ゆっくりと鉄ボードを浮かせる。さあて覚悟しろよエチゴヤ……
下っ端だけでも皆殺しにしてやるよ……
本当は上の奴らも捕まえたいんだけどね……
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