第1202話 赤い女騎士
受付から受け取った報酬は私が二百四十万ナラーだった。約束の倍額か、まあ妥当なところかな。ほお……金色の大判二枚に、小判が四枚か。
「滞在費は僕が出すからアレクの報酬は全部お小遣いにしていいよ。お土産代とかさ。」
「ええ、ありがとう。甘えさせてもらうわね。ねぇ……それよりカース……」
「分かってるよ。宿に行こう。早く行こうね。」
アレクったらそんな濡れた瞳で見てくれちゃって。かわいいなぁもう。
「ガウガウ」
腹が減っただって? もうすぐ昼だもんな。宿に着いたら何かあるだろ。ここらで一番の宿だって言うし。
「おう魔王、報酬は受け取ったな? 鮮やかなお手並みだったな。いいもん見せてもらったぜ。」
「おおジンマ。さっきはありがとな。そのうち飲もうぜ。奢るからさ。」
特に役に立ったわけではないが、その気持ちが嬉しいからな。
「おう、楽しみにしてんぞ。んじゃ、せいぜい気ぃつけぇな。俺らに奢るまでぁ死ぬんじゃねぇぞ?」
「ああ。また近いうちにな。」
よし、宿のだいたいの場所も聞いたことだし。何か食べてそれからアレクと……ふふ。
ん? ギルドを出たら囲まれた。こいつらは騎士か? やっぱヒイズルにも騎士っているんだな。
「民間人を襲った冒険者は貴様か! 神妙にお縄を受けろ!」
数十人の騎士の中に一人だけ真っ赤なフルプレートの鎧……暑くないのか?
顔は見えないが……この声は、女か?
「誤解だぞ? あれは真っ当な決闘だからな。それとも本人がそう言ってるのか?」
四人殺しておいて言うのも変だが、そっちは問題になってないのか? 坊ちゃんを痛めつけたことだけが問題になってそうな雰囲気だよな。そう言えばあいつ生意気に権力もあるとか言ってたもんな。
「ふん? 言い訳は詰所で聞く! さっさと来い!」
「話にならねーな? とりあえずこれ見ろ。」
ローランド王国国王直属の身分証だ。王族並みとはいかずとも、それにほど近い身分であることぐらい分かるだろ?
「貴様……ローランド人か! しかも国王直属だと!?」
「そうだよ。それでもやるってんなら相手になるし、この事は国王陛下にも報告する。ヒイズルでこんな目に遭いましたってな。お前、名前は?」
「ふざけるな! 貴様のようなガキが! 偽造に違いない! 者ども! こやつらを捕縛せよぉー!」
うわぁ……頭が悪すぎるぞ……
しかも本人以外誰も動いてない……
「隊長ぉー、あれが本物だったらヤバくないっすか?」
「しかも民間人っつーてもあのボンボンでしょ? ぜってー言いがかりっしょ?」
「あー隊長って中央から来たばっかやけぇーこの辺の事情を知らんのんですよねぇ?」
「来たばっかなのにいきなり鼻薬嗅がされてんすか。隊長らしーや」
「ふざけるなぁー! 私は映えあるヨシノ家のササーラだぞ! 貴様ら如き田舎騎士が逆らうなぁー!」
あれ? いきなり内輪揉めか?
「ヨシノ家っつーてももうとっくに御三家じゃないんでしょー?」
「そーそー。あのボンボンの商会は天王家にどうにか取り入ってるみてーですけどぉー?」
「あんま中央の権勢をここらでひけらかさん方がいーですよぉー? ここにはここのやり方ってやつがあるんすからぁー」
「クウコ商会は評判よくないですよー? 隊長大丈夫っすか?」
ふむふむ。察するにこの赤い鎧の奴は首都、えーと天都イカルガだったか、そこから左遷されたってことだな? しかも名家ぶってるけどとうの昔に御三家とやらから外された程度の家柄か。ローランド王国で言うクワトロA、昔のトライAみたいなもんか。で、ここに来て威張ってるが、部下が全然従わないと。うーん、哀れだな。
「もうよい! 私一人でやる! さあ! 大人しく縛につけ!」
「断る。やるってんなら抵抗するぞ? 性根を入れてかかってこいや。」
「ふっ、虚勢を張りおって! もはや容赦せん!」
おろ、剣を抜きやがったか……ならば仕方ない。
『金操』
普段ならその剣を足の甲に突き刺してやるところだが、今回は……
「なっ!? か、兜が!?」
兜を左右に引きちぎってやった。ようやく顔が見えた。ふーん、そこそこ美人だな。三十歳には達してない、二十代中盤かな?
「次は鎧がそうなる。なんなら服もそうしてやろうか?」
そこそこ胸がありそうだが、どんな下着をつけてんのかねぇ。
「こっ、この変態が! 私の身を貴様のおぞましい欲望で汚そうと言うのか! ローランドの権威がヒイズルの地で通じると思うなよ!」
「で? まだやるのか? そんな脆そうな鎧で?」
「やれやれー! 隊長の! ちょっといいとこ見てみたい!」
「ローランドもんがんばれー!」
「ひゅー隊長かわいいー!」
「早くやれー! 間に合わなくなっても知らんぞー!」
部下にも舐められまくりかよ……
「貴様らぁ! もう許さん! まとめて教育してくれるっ!」
おっ? キレたのか? 剣をめちゃくちゃに振り回してる。危ないな。
『金操』
『麻痺』
とりあえず没収。
そして大人しくしておきな。
「ところでお前らさ。この姉ちゃんだけ鎧の色が違うのは何かあんの?」
さほど興味はないが情報収集は大事だもんな。
「おいおーい、隊長を脱がすんじゃねーのかよ?」
「いいところでやめんなよー?」
「やべぇ魔法使ってんじゃんなぁ?」
「もしかしてもう終わり?」
質問に答えてくれよな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます