第1157話 ノヅチ VS スライム
以前スパラッシュさんとノヅチに遭遇した時は十分ほどで吸引をやめて姿を消したはずだ。
しかし、今回は……もう二十分は吸い込み続けているではないか。砂、魔物、スライムを問わず。だが、スライムもかなりの大きさだ。ここから見るにおおよそ四割が消え失せているが、残った六割でノヅチを取り込もうとしている。いかなノヅチの巨体といえども湖そのものと化したスライムから見れば小さいものだろう。
そして現場にはノヅチとスライム以外何も見えなくなった。あれだけいた魔物が全て消えてしまったのだ。せっかく植えたイービルジラソーレも。
胴体全てを攻撃するスライムに対して、口からしか吸い込めないノヅチ。見た目には徐々にスライムの体積が減っていってるが全体的なダメージが大きいのはノヅチの方だったりしないか?
「アレク、どう見る? もしかしてノヅチが負けそうじゃない?」
「どうかしら? あれだけスライムに覆われているのに胴体が全然溶けてないのが気になるわ。それにまだ全身が見えてないのも気になるし。」
うーん、一理あるね。
「ピュイピュイ」
え? ノヅチはそろそろ飽きそう?
なんだよ飽きるって……
あっ! ノヅチが地面に引っ込もうとしている! スライムはまだ半分ぐらい残ってんのに! まだ帰るな!
ちっ、飽きたってんなら刺激を与えてやるよ!
『超圧縮業火球』
大爆発で目を覚ましやがれ!
キノコ雲が立ち込め空は噴煙で覆われた。さて……あいつらはどうなったか……
「カ、カース……今の魔法って……」
「ああ、ただの
「すごいわ……天変地異だわ……あんな風に煙が上がるだなんて……初めて……」
おっ、アレクの顔が紅潮してるな。さては……ぬふふ。かわいいやつめ。
それはさておき、現場はどうなったか……『烈風』
全ての煙を晴らす。
ほほう。ノヅチめ、穴からだいぶ体を出してやがる。無傷かよ……
そして私をロックオンしたかのようにさらに体を伸ばしてきやがった。
一方スライムは残り半分だった体積のうち、さらに半分が吹き飛んだように見える。ただ、あくまで吹き飛んだだけであって全部が消し飛んではないんだよな……バラバラになってるくせにうにょうにょと元に集結しようとしいるパーツもある。そういやこのスライムどもは群体だったな。キモいわー。
うーん、めっちゃこっちを吸ってくるではないか。ノヅチめ、私よりスライムを吸えってんだ。だが、私が本気で逃げようとする速度にはとても及ぶまい。
それにしてもどんだけ穴から出てくるんだ?
もう全長一キロルは超えてるぞ……しかも奥の方になるに連れ、だんだん太くなってやがる。
スライムの真っ只中を通るように逃げる。さあ、吸え。全部吸い込みやがれ!
ノヅチの体は穴から出れば出るほどスライムの餌食となっている……が、ノヅチの勢いは全く衰えない。出れば出るほど吸引力まで上がっているかのようだ。こいつはいい。私は無事でもスライムはそうはいくまい。どんどん吸い込まれてしまえ!
そして逃げる。すっかり引き離したな。追ってこれまい。後は待つだけだ。
「カース……凄かったわね……」
「うん。びっくりだね。ノヅチがあんなに伸びてくるなんて。」
「ピュイピュイ」
え? ノヅチが喜んでる? 何それ?
「ピュイピュイ」
寂しがってたって? 魔王も勇者もいなくなったから?
あー、ノヅチって魔王のペットだったんだっけ? 主がいなくなって勇者によってヘルデザ砂漠に放たれてそれっきり。だからずっと寂しがってたってこと?
「ピュイピュイ」
全く理解できないな。コーちゃんやカムイはペットではないが、かわいい仲間だ。しかし
まあいいや。さーて、どうなったかな。『遠見』
うわー、まだノヅチのやつ暴れてるよ。おかげでスライムはほとんど見えない。今回の作戦は大成功だな。さすが私。
結局スライムがあんなにも大きくなった理由はさっぱり分からないけど気にすることはない。スティクス湖をこれほど広げてしまった私に原因がありそうな気もするが、知ったことではないのだ。
あれ?
ノヅチが帰らないぞ?
用が済んだらさっさと穴ぐらに帰れよな。事が済んだらさっさと帰る女こそ最高って誰かが言ってたが。スライムがいなくなったらもう用はないんだよ。あんな危険な奴がヘルデザ砂漠の底に住んでるってのは恐ろしい話だが。呼ばなきゃ出てこないっぽいし。『都合のいいノヅチ』ってか。
うーん、こいつが帰るのを見届けないと安心してここを離れられないのだが……
飛び散ったスライムだって処理しないといけないってのに。
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