第1143話 解毒の効能
宴の翌日。今日からは本格的に死汚危神を使って実験を行う。スライムはもういないからそこらの魔物を捕まえたり、ミスリル炉で燃やしたりだ。
しかし、その前に最も大事な実験がある。
それは……
『解毒』
『解毒』
私と母上が同時に解毒を使う。対象は百ミリル程度の死汚危神。
結果は……
「効果ありね。でも……」
毒は消えた。ただし私の魔力も半分がなくなった。母上に至ってはほぼ空っぽだ。
「私は休んでるわね。カムイ、守ってね?」
「ガウガウ」
カムイはずっと暇そうだったもんな。母上を頼んだぜ?
「カース君はもう少し勉強が必要だな。魔力任せの解毒も悪くないが、ちと無駄がすぎる。」
さすが伯父さん。インテリか。
「どんな勉強をすればいいですかね?」
「簡単に言うと毒の種類と効果を覚えておくことだな。一口に毒と言っても種類も効き目も千差万別だからな。」
「あー、例えばマスタードドラゴンの毒ならどんな効果だからどうやって解毒するってイメージを持っておく感じですか?」
「そうだ。マスタードドラゴンの毒なんかは常人ならば指先が触れただけで全身まで爛れてしまうほどだ。あれはもはや半分呪いでもあるな。」
「なるほど。確かにそれをただの毒としか認識してなかったら無駄な魔力を使ってしまいそうですね。てことはこの毒沼も呪い的な一面があるんですかね?」
「恐らくな。エルフ達はそんな細かいことは気にしてないようだが、重要な点だと思うぞ?」
なるほど……毒と呪いか……
考えてみれば禁術『毒沼』なんて呪い以外の何物でもないよな。使ったが最後、数百年も死ねずに苦しみ続けるなんて。こんな魔法誰が作ったんだよ。まさか神か? 初代毒針に呪いのような祝福を与えた神もいることだし、他の神を殺したがっている神が編み出したとか? あり得る話だな。
そうなると……王都に帰ってあっちの毒でじっくり練習するべきかな。ここでは魔力が切れるまでとことんやるわけにはいかないからな。
「伯父さんの容器だったらここの毒は汲めますかね?」
「いや、ダメだった。魔力庫に入れるのも危険だから持って帰らない方がいいな。」
「そうですね。王都に帰りましょう。そこで勉強しなおします。」
ちなみに昨日魔力庫から排出した毒の結晶はフェアウェル村の村長にプレゼントした。意外と興味深そうにしてたんだよな。
さて、そうと決まれば残った魔力であれこれやってみるかな。
「マリー、母上の護衛をカムイと交代してくれる? こっちにカムイが必要なんだよね。」
「かしこまりました。」
「ニンちゃんウチは?」
「じゃあ解毒を使ってもらおうか。」
「いいよー!」
「ガウガウ」
よし、カムイ。やる事は前回と同じな。ミスリル炉で毒を燃やしてみるから、上から出るものの中に毒が混ざっていたら教えてくれ。
「ガウガウ」
『
さて、今回はミスリルが溶けるギリギリまで加熱してやるよ。一体何千度あるんだろうか。熱くて堪らん。
よーし、いくぜ。
『水操』
まずは少量、五ミリルってとこかな。焚き口から投入すると……一瞬で蒸発し、上から抜けていく。見た目は煙に色すらない。
「ガウガウ」
よし、問題なしだな。きっちりと燃え尽きている。ならば次々行こう。
十ミリル……二十ミリル……五十ミリル……
「ガウガウ」
「クロミ! 周囲一帯に解毒!」
「分かったし!」『解毒』
よし。効いてるな。
「クロミ、いい感じだ。その調子で頼む。次からはもっと出ると思うから。」
さらに加熱。そして『水操』
今度は百ミリル。
「ガウガウ」
『解毒』
カムイといいコンビじゃないか。
「あんまり効いてないよ。その量が限界みたいねー。」
「分かった。」
ならば魔力が続く限り、五十ミリルずつ、毒を燃やす!
何回繰り返しただろう。百回やったとしても五リットル程度か……
くそ、やっぱ焼け石に水かよ。そのまま解毒するよりはだいぶマシだが、沼の毒は少しも減ったように見えない。ごめんよ……婆ちゃん……まだまだかかりそうだ……
魔力のごり押しでは到底終わりそうにない。確かな、効率的な方法が必要だ。それが分かっただけでも収穫だな。残り魔力は一割。今日のところはフェアウェル村まで帰って、明日王都に戻ろう。
もう総代教主ジャンは使い潰して問題ないな。いや、伯父さんがまだ使うかな。
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