第1120話 ソンブレア村の村長
ううーん、よく寝た。昨日は大変だったなぁ。ふー。さて今日はダークエルフの村、ソンブレア村に行こう。婆ちゃんは元気にしてるかな。
「おはよ。今日はダークエルフの村だよ。アレクは初めてだよね。」
「おはよう。ええ、楽しみだわ。」
村長との朝食を済ませたらいよいよ出発だ。先生にも挨拶をしておかないとな。つーか先生はどこに泊まってるんだ?
「おはようございます。」
おーっとグッドタイミング。先生だ。
「おはよう。フェルナンド殿も今日出発だったかの。」
「おはようございます。先生もですか。僕らもです。あ、忘れてました。これお土産です。」
「おはよう。おや、これは何かな。美味しそうだね。ありがたくいただくよ。」
「フェルナンド殿、それは
人間もエルフも神は同じ。当たり前か。実在するんだもんな。
「左様ですか。それはいい物をいただきました。カース君ありがとう。」
「いえいえ、どういたしまして。じゃあ先生、またお会いしましょう!」
「剣鬼様もどうかお元気で。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
「ああ、みんなも元気でね。また会おう。」
こうして先生達に見送られながらフェアウェル村を出発した。ソンブレア村にはここからひたすら北に行けばいいだけだから気楽なもんだな。前回はアーさんが隠形を使ってくれてたが、今日はアレクに任せよう。
「ソンブレア村にはアレクの首飾りを作ってくれた職人もいるよ。」
「すごいわね。オリハルコンをあそこまで精密に加工するなんて。王族の方にだって不可能じゃないかしら。」
「オリハルコンはホント扱いにくいもんね。」
前回行った時に残ったオリハルコンであれこれ注文を出しておいたからな。どんな仕上がりになっているか楽しみだ。
あれ? おかしいな。そろそろ見えるはずなんだけど。そもそも天を衝くイグドラシルが見えないはずがないんだが。
「アレクも周囲を見てくれる? ソンブレア村のイグドラシルが見えるはずなんだよね。」
「分かったわ。遠見で見てみるわね。」
おかしい。遮るもののない空の上だぞ? なのになぜ見えない。こんなに晴れてるのに。北に進んでるだけなので方向を間違えるはずもない。羅針盤だって使ってるんだから。速度から言えばそろそろ見えてもいいどころか、行き過ぎを心配するぐらいだ。
「ギャワワッギャワワッ!」
コーちゃんが警告している。何が危険なんだい?
「ギャワワッ!」
下? 下に何が……降りてみようか。慎重に……
「アレク、周囲の警戒をお願い。何かが危ない……」
「ええ、分かったわ。」
「ギャワワワワァ!」
え? これ以上降りるな? 下に何が……『遠見』
何だあれ? 小さい池? 池にしては色がおかしいな。ドス黒い紫だ。おまけに汚い緑や派手なピンクのマーブル模様が混じったかのような。ん? 池の真ん中に何かいないか?
あれは……
「ばあちゃん!」
「ちょっと、カースどうしたの?」
「ごめんアレク、降りて! いや、ミスリルボードをお願い! 僕が降りる!」
あれは婆ちゃんだ! あんな所で何やってんだよ! それも……あんなに苦しそうな顔して!
「ギャワッ!」
死ぬ時は一緒だって!? 大丈夫だよ。心配はいらない。なのに私の首から離れないのね。
「ばあちゃん! ばあちゃん!」
浮身を使いつつ、ゆっくり降りる。そして池の少し上空で停止する。
「ばあちゃん! 何やってんだよ! こっちを見てよ! ばあちゃん!」
近くで見るとますますヤバい。顔は苦痛で歪み、口からは悲鳴やうめき声しか聴こえてこない……
「ばあちゃん! しっかりしてよ! ばあちゃん!」
「ピュイピュイ!」
コーちゃんも一緒になって声をかけてくれる。
「ばあちゃん! 起きて! ばあちゃん!」
「ピュイピュイ!」
くそっ、なんだよこの池は……自動防御を張ってるのに見る見る削られていく。別に池に着水したわけでもないってのに。
『ばあちゃん!』
拡声の魔法を使ってやった。ボリューム最大だ。これなら気付くだろう。
「カ、カースぅぅぅ……」
よし、気付いてくれた!
「そうだよ! 来たよばあちゃん!」
「来るなぁぁぁぁ……殺してくれぇぇぇ……痛いぃぉぃぉぉぃい……苦しいぃぃぁぃぃぁい……もぉういやじゃぁぁ……死ぃなせてぁくれぇぇぇ……カァスぅぁぅぁぅぅ……」
「ばあちゃん! 何があったんだよ!」
「カースぅぁぅぅ……来るでなぁぁぃいぃぃ……殺せぇぃぇぃえぇぇえ……ワシをぉぉ……殺しぃてぇぇくぅ……れぇぇぇ……いやじゃぁぁ……痛いぃぃぃ……アァガァァガァーーーー!」
どうなってるんだ……なぜこんなことに……
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