第1092話 アレクサンドリーネの長兄と次兄
昨夜は楽しかったな。あれからフランツの部屋に場所を変えてみんなでワイワイと盛り上がった。その最中にふと気付いたんだ。遅まきながら……
ベレンガリアさんがいないことに。
つまり、キアラは一人で王都に来ているのか? なんて危ないことを……普段なら母上はベレンガリアさんに同行しろと言うはずだが……クタナツはクタナツで色々あるから今回はキアラ一人ってことか。もおー、心配させやがって。でもかわいい子には旅をさせろって言うしな。キアラだって一人で王都往復ぐらいもうできるだろう。はー、すごい妹だ。
さて、今日は王都で買い物をしてからサンドラちゃんを訪ねている。私とアレクとコーちゃんで。
サンドラちゃんはこの春、中等学校を卒業し四月からは高等学院だ。なんと学校の寮ではなく、スティード君、セルジュ君と三人で暮らす借家を既に手配済みだとか。さすがに学校付近は一等地だから少々離れてしまうのだが、サンドラちゃんは特待生だし、スティード君も特待生みたいなものだ。セルジュ君は普通かな。三人とも違う学校だけに一緒に住んだ方が時間が取れるってことかな。それにしてもサンドラちゃんが元気そうでよかった。スティード君とセルジュ君には領都で会えるか、それとももう王都に向かって出発してしまったかな。
今思えば、クタナツから王都に来るんなら一緒に連れて来ればよかったな。明日は領都に立ち寄ることだし、もし居たら乗せてあげようかな。
サンドラちゃんに会った後はアレクの兄に会いに行く。長男の方だ。私が言うのもなんだが、かなりのシスコンらしくアレクをかなり可愛がっていたらしい。何年も会ってないくせに。
着いた。第二城壁内の借家。上級貴族にしては慎ましい暮らしをしてんのね。ちなみに二男のアルフォンスさんとは途中で合流した。うん、アルさんと呼ぼう。つーか案内されなきゃ到着できないわな。
アルさんが呼び鈴の魔道具を押す。これがあるってことは、やっぱ慎ましい暮らしか。
「はぁ〜い〜だれでしゅか〜」
幼女だ。幼女が扉を開けた。なかなかやるな。無用心だけど。
「やあ、アデルちゃん。父上はいるかい?」
「あ〜おじしゃ〜ん! ちちうえ〜!」
アルさんは案内を待たす中に入り込む。私はアレクの後ろで小さくなっていよう。
「ぬおおおぅ! アレックス! アレックスか! 来たか! やっと来てくれたんだな! 何度か王都に顔を出したらしいのに全然来てくれなかったじゃないか! よし! 今日から一緒に暮らそうな! おっとこいつは娘のアデライード三歳だ! 好きなものは俺だ!」
「兄上、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。アデライードちゃん、初めまして。あなたの叔母のアレクサンドリーネよ。」
「あでるでしゅ〜さんしゃい〜おばちゃん?」
うーむ、アレクがおばちゃん……似合わないにも程があるな。一緒に暮らす発言はスルーか。
あ、ウリエン兄上のところには赤ちゃんが生まれてる。てことはあの母上がおばあちゃん……似合わなすぎる。あ、姉上に届けるものがあった。後で寄ろう。ここからまあまあ近そうだし。
「それで……そこにいるチャラチャラとスカした格好した男がっ……!」
「ええ兄上、カース・マーティンです。魔王と言えば知らないはずがないですわね?」
「初めまして。カース・マーティンと申します。この服装はこだわってますので変更できませんよ。」
そもそもチャラチャラなんかしてないっつーの。ちょっと人よりオシャレなだけさ。
「ほほぉう? ふぅん? へぇえぇ? ほおぉう? そぉんなチャラチャラした格好で? アレックスを守れると? ほほぉう? 魔王様はすごいねぇ? あっ! あれは何だ!?」
長男が指を差した方を全員が見る。仕方ないから私も見る。そしてお約束のように後頭部に衝撃。
「ふん、そんな油断してるからそうなるん……だ?」
私に不意打ちなんか効くわけないだろ。木刀の方が折れてるよ。最近は体表密着型自動防御をいつも張ってるからね。ちなみに弱点は鼻と口だったりする。
「兄さーん。てっきりアレクを狙ってくるかと思ったら甘いっすねぇ? ちなみにアレクも油断してませんから狙っても無駄なんすけどねぇ?」
変な言葉遣いになっちゃったよ。この兄ちゃん面白いから、からかいたくなるんだよな。
「お前に兄さんって言われる筋合いぁねぇんだよぉぉぉぉぉーーー!!」
「うわぁーんちちうえこわぁ〜い」
「ああっ! アデルぅ! 怖くない怖くないよー! ほぉーら高い高ーい!」
「うわぁたかぁーい!」
なんだこれ?
「さ、用も済んだし帰ろうか。」
「そうね。かわいい姪の顔も見たし。じゃあアルフレディア兄上、アルフォンス兄上お元気で。」
「待てええええーーーい! 帰りたくば俺を倒していけぇーーー!」
面白い兄ちゃんだなぁ。二男はまともなのに。あ、後ろから殴り倒された。奥さんかな。どことなくアレクママと似たような上級貴族オーラを感じるな。
このあと、兄ちゃんを除く全員で楽しくお茶会となった。お義姉さんのいれてくれた紅茶はおいしかった。うーん満足。
なお、奴は途中で目を覚ましたので私が拘禁束縛をかけておいた。さすがにアレクの兄だけあってかなりの魔力を消費させられてしまった。さあ次に行こう。
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