第1059話 領都の自宅あるある

アレクサンドル家に立ち寄り、アレクはお義母さん宛の手紙をメイドさんに渡していた。私は明日母上に会えればいいが。


せっかくなので昼食もご馳走になり風呂まで入ってしまった。ここの湯船もマギトレント製だもんな。あー昼から入るお風呂っていいなぁ。




ちょっと予定より遅れたが領都へ出発。今日で冬休みも終わりかと思うと……何だかなぁ。別に私が学校に行ってるわけではないのだが。




到着。このままアレクを寮まで送って……


「ありがとうカース。最高の冬休みだったわ。また来週末、会えるのを楽しみにしてるわね。」


「うん。僕も楽しかったよ。来週末までもう八日ぐらいかな。待ちきれないよ。」


「カースったら。ありがとう。」


そう言ってアレクはいつものように私の頬に口付けをする。ハッピーだ。スーパーハッピーだ。


今夜はクタナツに帰るとして、とりあえず自宅に顔ぐらい出しておこうか。ねー、コーちゃん。


「ピュイピュイ」




久々の自宅。誰か来てるかな?


「ギャハハハ! だからカースはよー!」

「アッハッハ! だからボスってさー!」

「オホホホ! 旦那様ったらー」

「そ、そうなのですか?」


やはりいつものパターンか。


「ただいま。昼から酒か?」


「おうカースか。久々だな。どこ行ってやがった?」

「あぁボスぅ。元気ぃ?」

「おかえりなさいませ旦那様。」

「おかえりなさいませ。」


いや、違うな。


「よお、邪魔してるぜ。」

「やあカース君。会いたかったよ。」


「バーンズさんようこそ。ジーンもよく来たね。」


クタナツの五等星バーンズさんと用心棒貴族バックミロウ家のジーンだ。珍しい二人だな。


「カース君、やっと君の側にいる準備が整った。これからはずっと愛しい君の元にいたいと思う。」


そういや子供武闘会の後から姿が見えないと思ったら何やら準備をしてたってことか? 気持ちは嬉しいが無理なものは無理だ。


「そばに居るのは自由だけど君の気持ちには応えられないよ? 僕の心にいるのはアレクサンドリーネ一人なんだから。」


「そんなことは知っている。だが君の側にいるのは自由だと言ったな? その言葉、確かに受け取った。」


「あー、まあそれは構わないよ。もちろん連れて行くとは限らないからね。付いてきたいさなら自力で来てね。」


「当然さ。君の負担になる気もない。とりあえず今日から僕もここに住む。いいよな?」


「あー、いいよ。ダミアンも住んでるし部屋は多いしね。ただし部屋はダミアンの隣ね。」


さすがに私達の寝室付近には来て欲しくないからな。


「構わないよ。では今日からよろしく。早速だが用心棒の用命はないか? できればカース君の身辺を護衛したいのだが。」


「うーん……おーい、ダミアン。オメーって用心棒必要か? ラグナにバーンズさんもいるけど。」


「ああ、間に合ってるぜ。だが仕事はいくらでもあんぜ? やるかジーン?」


領都でもクタナツでも仕事はいくらでもあるよな。


「いえ、せっかくダミアン様のお誘いですが僕はカース君の元を離れる気はありません。そんな都合のいい仕事なんてありますか?」


「さすがにねぇよ。カースの奴ぁ年中あちこち動き回ってんだからよ。なぁカース? 結局今日までどこにいたんだ?」


「ん? 昨日までは楽園エデンにいたぞ。ノワールフォレストの森の南東辺りだな。」


「な? ジーンよぉ、こんなカースに付いてまわるつもりか?」


「いえ……無理です……いくらなんでも……ノワールフォレストの森から、昨日帰ってきた……?」


「その通り。昨日クタナツで一泊してさっきクタナツから来たってわけだよ。ちなみにここには顔を出しに来ただけで日没前にクタナツに戻るよ。ちょっと労役があってね。」


「おー、クタナツ代官が無茶やってるそうじゃねぇか。それにしてもオメーが素直に労役とはよ?」


「俺だってクタナツの民だからな。たまには滅私奉公ぐらいするさ。」


今生初のボランティアだ。いやまあ実際には税の一種、労役なんだが。しかしこれで暴動が起こってないってことは代官の統治が上手くいってるってことだな。やるもんだ。


「僕もクタナツに行く! 連れて行ってくれないか?」


いきなり前言撤回かよ。正直なのはいいことだ。


「行ってどうする? 一緒に労役を受けるっての? クタナツは知ってるよね。」


ジーンが男装していた時に同じクラスだったこともあるしね。


「そうだ。クタナツの港湾工事の話は聞いている。人手はいくらあってもいいだろう。同行させてくれ。」


「まあいっか。どんな仕事に割り振られるかは知らないよ。来週末には再び領都に戻ったりしながら一ヶ月の労役をこなすつもりだし。」


土日は休ませてもらうつもりだ。そのぐらいのわがままは言ってもいいだろう。百人分は仕事する気なんだから。


「望むところだ。さっそく今日から同行させてもらう。」


「旦那様? お食事はどうされますか?」


いきなりマーリンが割り込んできた。でもいいタイミング。夕食には早いが小腹が空いてたんだよな。


「軽く頼むよ。」


「はい、かしこまりました。」


しかし我が家も来客というか、住人が増えたものだな。部屋的にはもう二十人ぐらい増えても楽勝だが。


「やっぱりボスはモテモテだねぇ。たまにはアタシのことも可愛がって欲しいもんだよぉ?」


「ダミアンに言えよ……」


「そうだぜ。お前は俺がたっぷり可愛がってやるってのに。それとも俺に飽きたか? ん?」


「バカお言いでないさぁ。アタシみたいな女を構ってくれる男なんてアンタぐらいのもんさぁ。」


「ラグナ……」


「ダミアン……」


「行くぜ。」


「ああ。行くさぁ。」


このバカップルが! 二人とも自室に行きやがった。まるで私とアレクじゃないか……


「カース君。僕はいつでもいいからね。」


何の話か分からんな。うーん、アレクの料理も旨いがやはりマーリンの料理もいいなぁ。あぁ美味しい。

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