第1056話 続行武者修行

ノワールフォレストの森をゆっくりと歩く。それだけなのにとても緊張するし疲れる。それはアレクも同じみたいだ。私と違うのは、アレクは自分の後方に風壁を張っていることぐらいだろうか。


「カース、そろそろお昼にしない?」


「そうだね。お腹すいてきたしね。」


『風壁』


昼ぐらいいいだろう。氷壁だと少し寒いしね。さあてこれでゆっくりアレクのお弁当を楽しめる。美味しそう。




「おいしかったよ! いつもありがとう!」

「ピュイピュイ」


「どういたしまして。お昼からも同じようにやるのよね?」


「そうだよ。と言うよりここにいる間はずっとこれでいこう。僕たちにはこんな普通の経験が足りないからさ。」


実は次にフェルナンド先生に会うのが怖かったりするんだよな。スティード君にすら稽古不足を指摘されるぐらいなんだから。だからせめて先生からいただいたこの剣ぐらいは使いこなしておきたいんだよな。


「そうね。私だってアイリーンに負けたくないし。じっくりやるのもいいわよね!」


アレクは私よりだいぶ解体が上手い。料理の腕があるせいかも知れないが。だからだろうか、領都の子供武闘会で弟君の相棒の腹をしれっと斬ってたもんな。私もがんばろう。




さて、昼寝もせずに午後の部開始だ。

時々大きい魔物も出てくるが常識の範囲だ。ドラゴンやワイバーン、ブルーブラッドオーガのボスって程ではない。

苦戦し、地べたを転がりながらもどうにか剣だけで対処できている。


「やるわねカース。さっきのはラスティネイルボアね。いつだったかカスカジーニ山でも見た気がするわ。」


「そうだったかな。手強かったよね。」


剣で猪の相手はキツかった。錆びた釘のような毛皮を持つ猪なもんだから、普通は少しかすっただけでも皮膚が切れる。なもんだから突進を避けつつも横から剣を突き立てること十二回。やっと十三回目で剣が首筋に通り、倒すことができた。かなり疲れた……バカな猪だったからよかったが……

先生だったらすれ違いざまに首を斬り落としてるんだろうな。がんばろ。さて、収納収納っと。


「あら? 解体はしないの?」


「しないよー。さすがに無理だよ。楽園に帰ってからゆっくりやることにするよ。」


こんな堅そうな奴をこんな所で解体なんて無理だ。楽園でじっくり時間をかけて取り組まないとな。




色々あったが、日が暮れる前に楽園に帰った。いやーかなり疲れた。最近はランニングも全然やってなかったしな。この冬休みは体を鍛え直すいい機会だな。先生に会った時に恥ずかしくないようにしておかないと。


「よし、じゃあここらで解体しようか。アレクも結構仕留めたんだよね?」


「ええ。やったわよ。」


現在は楽園の外周。城壁と堀の間の地点だ。ここなら血は堀に流せるし。では、ラスティネイルボアからやろう。


『浮身』


後脚を上にして宙に浮かせる。そして内臓を傷つけないよう慎重に肛門から腹を裂いていく。うーん、こいつの毛皮が丈夫過ぎてミスリルナイフですら切りにくい。私もそのうちドラゴンの牙でナイフでも作ろうかな。


どうにか腹を裂いたら次は内臓の処理だ。と言っても腸なんかはコーちゃんがすぐ食べてしまうから捨てる手間が省ける。肝臓や心臓なんかはキープしておかないとな。それ以外もコーちゃんが食べてない部位をきっちりキープだ。


よし次。

今度はギャングエルクか。鹿も捌き方は猪とあんまり変わらないんだよな。さくさくいこう。


次。

蛇系は毒腺とか魔石以外は埋めてきたから解体の必要はない。


次。

虫系もたくさんいたが斬り捨てて終わりだったな。魔石も小さいから解体すらしてない。


次。

あぁ、こいつか……

デスメタルラビット……なりは小さいが魔境で会いたくないランキングの上位に食い込む魔物だ。

見た目は普通の可愛らしい兎のくせに、動きは素早いし牙は鋭いし油断したら喉笛を噛み切られて即死だし。

かなりギリギリの勝利だった。いくら極悪兎と言えど私の装備には歯が立たなかったようで、ひたすら防御に専念して動きを見切ることを重視した。

そして起死回生の一撃で兎の頭を叩き割った。叩き斬ったのではないところが私の未熟さを表している。だって斬れないぐらい硬かったんだよ……だから無理矢理ぶっ叩いたんだよ……二度と会いたくない。


さて、帰って風呂だな。

いや、その前にあいつらの様子だけ見ておいてやるかな。

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