第956話 領都一子供武闘会 第二部

コロシアムに到着。結局アレクは元気になったから参加する気が多少はあるらしいが。ブレンドネクタールが効いたのかな?

さて、ルールを確認しておこう。


・一対一で対戦する

・魔力の使用は不可

・場外に落ちたら負け

・武器は刃物以外なら使用可能

・防具は自由

・ポーションや魔法による回復は禁止


うーん、意外と私に有利な気もするな。逆にアレクにはキツくないか?

今気付いたけどキアラのやつ、昨日の三位決定戦で思いっきり治癒魔法使ってやがったな。私は忘れてただけだがみんなは分かっててスルーしたのだろうか? 普通なら契約魔法が反応してキアラの負けが宣告されるはずだが……


「アレクはどうする? 出場する?」


「いえ、やめておくわ。さすがに勝ち目がないもの。カースは?」


「うーん、出ようと思ってる。まあまあ勝ち目があることだしね。」


「分かったわ。応援してるわね!」


今日はドラゴンの装備が使えるな。ならばこのまま着替えなくていいか。

エルダーエボニーエントの籠手を前腕に、衝撃吸収のサポーターを上腕に。首には防具代わりに拘束隷属の首輪でも巻いておくか。そしてボルサリーノ風中折れ帽で完璧だ。武器は……エビルヒュージトレントの鍛錬棒でいいかな。真ん中から折れてるけど。短いけどこれで突くと酷いことになりそうだ。

おっと、エビルヒュージトレントの手袋もしておかねば。よし、これで完璧。


それにしても、久々にこの首輪を着けてみたけど、やっぱ全然効かない。夏ぐらいから魔力がほとんど伸びなくなったし。私の歳なら当たり前ではあるが、何とかならないものか……

そりゃあ有り余るほどの魔力はあるが、これで満足してもいいものなのか……


「じゃあ、行ってくるね!」


「ええ、期待してるわね!」

「ご健闘をお祈りしております。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


今日はカムイも来てるんだよな。昨日が思いの外退屈だったんだろうか? ちなみにマーリンは来ていない。


さて、受付しようかな。




終わった。私の番号は九十三。今日は何人参加してるんだろうか?


「よぉ魔王ぉ……昨日は世話んなったのぉ……」

「おはようございます。できれば刀を返して欲しいなぁ……なんて……あはは……」


「おお、お前らか。もう大丈夫みたいだな。他に武器はないのか?」


ヒイズルの二人組、セキヤとクワナだったかな?

これだけの人混みの中でよく私が分かったな。あ、装備のせいか。改めて思うが私の服装にはボルサリーノよりテンガロンハットの方が似合いそうな気もするがどうか。


「けっ、俺ぁ木刀じゃあ! ぜってぇ取り返してやんからのぉ!」

「あの、お手柔らかに……お願いしますね……ほんとに……」


「まあ、対戦することになったらな。何を賭けるか考えておきな。」


どうもこいつら剣の腕では私よりだいぶ上っぽいんだよな。まあ装備の力でゴリ押ししてやるよ。


「けっ! せいぜい首を洗ってやがれのぉ!」

「お願いしますね……」


背が高く肉付きもいいセキヤに細身で小さいクワナ。凸凹コンビだな。




「カース君おはよう! 昨日はありがとうね! セルジュ君から聞いたよ。おかげで助かったよ!」


「おおスティード君! もう大丈夫なの!? やっぱ参加するんだね……」


「僕もだよ。」


え!? セルジュ君も!?


「マジで!? 昨日もそうだったけど、えらく珍しいね!」


「少しはダイエットしようかと思ってね。それより昨日はありがとう。おかげでスティード君は無事だよ。」


ダイエット目的で!?


「いいよいいよ。あれだけの怪我だけど助かってよかったよね。バーンズさんはスティード君が相手だから手加減する余裕がなかったんだって。」


「そうは思えなかったけどね……ちなみにこれ見てくれる?」


スティード君が左の袖をまくる。おお、これは懐かしいじゃないか。


「カース君がくれたミスリルの腕輪。これがあったから左手は切断には至らなかったんだよね。」


なるほど。成長でサイズが合わなくなったから、上腕に着けるべき装備を前腕に籠手代わりに着用していたのか。その結果、バーンズさんの攻撃を半分は止めることができたと。うーんミスリルの腕輪が無残にも半分まで切られている。しかも焦げている……どんな攻撃をしたんだ? そう言えばスティード君の腕も焼け焦げていたよな。


「役に立ったようでよかったよ。でもそれ、もう使い物になりそうにないね……」


「捨てる気はないけどね。どこかで直してもらおうと思ってるよ。」


嬉しいことを言ってくれるじゃないか。そんなにも私の贈り物を。


「スティード君の友達のバラデュール君だっけ? 彼は参加するの?」


セルジュ君が問いかける。アイリーンちゃんはもちろん参加するんだろうな。


「参加する予定ではあるね。今日はまだ会ってないから何とも言えないけど。セルジュ君こそ昨日の友達は?」


「ああテリー君?さすがに参加しないよ。テリー君は剣なら僕より上なのに。」


そうそう、アベカシス家のテリー君だったな。




『皆様、本日も領都一子供武闘会へようこそお越しくださいました。本日も実況、及び進行を担当いたします領都の黒百合ことギルドの花形受付嬢マリアンヌでございます。では主催者のダミアン・ド・フランティア様よりご挨拶申し上げます。』


『野郎ども! 昨日はお疲れだったな! 今日は魔力なしの一対一タイマンだ! 辺境に生きる男の生き様を見せてくれよぉ! 今日の賞品はうちの妹だからなぁ!』


『領都のみなさん、おはようございますの。サテュラ・ド・フランティアでございますの。昨日の戦いは手に汗握りましたの。今日の優勝者はどなたですの? 期待しておりますの!』



『それでは一回戦を開始します! 一番から二十番までは第一武舞台へ! 二十一番から四十番までは第二武舞台へ! 読んで四十一番から…………』


さぁて。いよいよだな。昨日と同じく狭い武舞台が八つか。少し燃えてきたぞ。

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