第955話 抑えきれない欲望

アレクサンドリーネは慌てていた。カースがいない間に急いで汗などを拭き取り、下着をつけ、服を着た。寝る時に愛用しているのは、以前カースから贈られたケイダスコットンのワンピースだ。


「ピュイー」


「あ、コーちゃん。起こしちゃったわね。もうすぐカースが来てくれるわよ。」


「ピュイピュイ」


コーネリアスはアレクサンドリーネを心配し、一緒に眠っていたようだが、彼女は意外にも元気になっていたようだ。そしてベッドに座り込む。カースが来るまでに一人遊びの後片付けを終わらせることができ、安堵していた。


そこにタイミングよくドアが開かれる。


「お待たせ! これ飲んで! ゆっくりとね!」


こんなにも自分を心配してくれるカース。その気持ちがアレクサンドリーネには何より嬉しい。カップからは果実の甘く優しい香りが漂っている。ゆっくりと口に含む。ああこれはペイチの実とオランゲの実だ。冷たさが汗ばんだ体には心地よい。一口分を口に含み、やや味わいを楽しんでから嚥下する。すると、どうしたことだろう……体の奥から力が湧いてくるかのようだ。下腹部が熱い……これではまるでカースのあれを飲んだ時のようではないか。いや、それ以上だ。

すでに精神的には元気なつもりであったが、魔力、体力ともに完全に回復してしまった……

これは一体……


「か、カース? これは一体何なの? ただの果汁ではないの……よね?」


「へへー、これはね。この前少し話したネクタールだよ。そのままだと味がないから果汁で割ってみたの。美味しかった?」


カースは得意げな顔をしている。


「ええ、とってもおいしかったわ。冷たいのに体が熱くなってくるほどに……」


そう言ってカースに抱き着こうとするアレクサンドリーネ。体が、下腹部が熱くて仕方ないのだ。カースに鎮めてもらう他ない。


「ねぇ……カース……」


『拘禁束縛』


「えっ、カース?」


身動きが取れず、魔力も封じられてしまった。これからカースのお仕置きが始まるのだ。アレクサンドリーネはもう待ちきれない。


『快眠』


しかし、カースはアレクサンドリーネを眠らせてしまった。


「そ、そんな……」


多少は抗うものの魔力を封じられた状態でカースの魔法に抵抗できるはずもなく、アレクサンドリーネの意識は沈んでいった。


「よし。これで一晩寝たらきっと元気になるぞ。コーちゃん、悪いけどもう少しアレクを頼むね!」


「ピュイピュイ」


カースはそれほどまでにアレクサンドリーネの体が心配なようだ。そして彼女をベッドに横たえて、自分は風呂に入るべく寝室を後にした。そろそろキアラ達は風呂から出ている頃と見ているようだ。







あー、よく寝た。もう朝か……

ん? 何やら股間が生温いぞ?









〜〜削除しました〜〜









ふぅ。アレクめ、朝から可愛いじゃないか。さーて朝食は何かな。


ベレンガリアさんとキアラは起きているが、シビルちゃんは寝たままか。起こす必要もあるまい。寝たいだけ寝ればいいのだ。私も大会がなければ寝ていたいんだけどね。


「キアラは今日も出るのか?」


「うーん、出たいんだけどー、シビルちゃんが今日は領都をウロウロしたいって言うからー。」


「そっか。じゃあお小遣いをあげような。楽しんでおいで。」


「わーい! カー兄ありがとー!」


「カース君私には?」


「あるわけないじゃん。昨日だってあれだけ奢ったのに。」


全くベレンガリアさんときたら……

キアラには金貨一枚だ。大金だな。いやーキアラが大会に出なくて良かった! これで今日は安心だな。


「お昼もカー兄と食べたいよー。どうしたらいーい?」


「じゃあ昼ごろにコロシアムに来てくれるか? お弁当を一緒に食べような。」


「わーいおべんとー!」


後でリリスに多めに頼んでおこう。キアラは無邪気でかわいいなぁ。さて、そろそろ出発しようかな。


「じゃあベレンガリアさん。キアラを頼むね。」


「ええ、行ってらっしゃい。アレックスちゃんと朝から一回戦、次が二回戦目になるのかしら? 頑張ってね。」


「そ、そうだね……がが、がんばるよ……」


ベレンガリアさんめ……悪いやつだ。キアラの前で下ネタはやめてくれよな……

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