第624話 カースの妄想

その夜の夕食時。


「カース、王宮からお召しがあったわ。明日の昼前に参上せよとのことよ。」


「おばあちゃん、分かりました。今回は僕一人ですか?」


「ええ、一人で来るようにとのことよ。」


「分かりました。そうなるとコーちゃんもカムイもダメですね。」


「そうね。明日はお迎えが来ないからうちの馬車で行きなさい。」


一人か。もし今回あの時のような罠を仕掛けられたら即死だな。そうでなくても狙われたら簡単に死ぬぞ……でも行くしかないか。


「ピュイピュイ」


え? 心配?

嬉しいな。大丈夫。無事に帰ってくるよ。


「ガウガウ」


カムイも心配? 私が弱っちいから? あはは……


「とりあえず城門まで行けば後は案内してもらえますよね?」


「そうね。それで問題ないわね。」


「おばあちゃん! カースを一人で王宮に行かせるなんて大丈夫なの!?」


「シャルロット。王宮からの指示は絶対なのよ。分かっているでしょう?」


「それは……そうよね……でも前みたいに!」


「お姉ちゃん。僕なら大丈夫だよ。何があっても帰ってくるよ。うちの姉上もちゃんと帰ってきたよね?」


「カース……」


根拠なんかないけどね。それよりわざわざ一人って指定したのが気になるな。言われなくても王宮にコーちゃんやカムイを連れて行くわけないだろ。いや、カムイのことはまだ知られてないか?

そもそも何の用なんだか。




入浴後。

客室にてアレクとのイチャイチャタイム。アレクって本当に美しいよなぁ。控えめに言っても王国一。正当に評価するならこの世界一ではないだろうか。

そりゃあ、確かに年代別で言うなら母上やエロイーズさんが食い込んでくるけど。この年代なら間違いなくアレクがぶっちぎりで優勝だ。

母上が三十代の部?

エロイーズさんが二十代の部。

アレクは十代の部。


そうなると十代以下の部は?

キアラか?

うーん、確かにキアラはかわいいけど。美しいかと言われると分からない。

よし、ここは暫定でキアラを世界一としておこう。


ならば四十代は?

そもそも四十代で知ってる女性がいない。

母上って実は四十代だったりするのか?

いや、たぶんマルグリット伯母さんかな?

王妃は多分五十代だし。おばあちゃんは六十代だよな。

どいつもこいつも歳が全然分からないってんだ。

それを言うならマリーは反則だよな。二百歳をとうに超えてるって何だよ。


いかんいかん。

せっかくのアレクとのイチャイチャタイムなのに。


母上は『王都の華』『聖なる魔女』

姉上は『虐殺エリザベス』

アレクは『氷の女神』


ならばキアラは一体どうなるのだろうか。

『幼魔神』とか?


怖い。今すぐ王国一武闘会に参加しても優勝できそうなキアラが怖い……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る