第616話 魔法学校の実技テスト

アグニの日。

今日はアレクの実技試験だ。どんな内容なんだろう?

ブラブラ歩いて到着。受付に挨拶をして校庭へ。少し早かったか、まだ数人しかいないようだ。隅っこで待っていよう。なぜかあの数人は私を見て慌てているようだが。もう金貨一枚持ってこられても相手なんかできないぞ。


「カース!」


おお、マイエンジェル、アレク。制服が似合うなぁ。


「やあアレク。なんだか随分久しぶりに制服姿を見た気がするよ。調子はどうだい?」


「絶好調よ。だってカースにいっぱいして……もらったから……//」


おいおい、真っ昼間の校庭で何を言うんだい。そんなに顔を赤くして。まったく、かわいいなぁ。


「それはよかった。頑張ってね!」


そろそろ始まる時間かな。続々と人数が集まってきたので、アレクも集団に戻っていった。


よく見ると制服が二種類、これはやはり学年違いなのかな。制服が違うもの同士で一対一の対戦か。騎士学校と同じようだ。




おっ、アレクの出番だ。相手は制服が違う男の子、先輩かな?


相手を円から出したら勝ち。そんないつもの魔法対戦ルールだが、アレクの圧勝だった。まるで姉上のように縦横無尽に魔法をばら撒いてゴリ押し勝ち。さすがアレク!


他の相手とも何回か対戦したようだが全てその方法で勝っている。容赦ないな。


「カース君、久しぶりだ。色々大変だったらしいが元気そうで何よりだ。」


「やあアイリーンちゃん。帰りが遅くなってごめんね。バラデュール君にも心配させたみたいだし。」


「い、いや、それは、いいんだ別に……」


なんとレアな光景。アイリーンちゃんが顔を赤らめている。乙女か。


「それよりアイリーンちゃんも腕を上げたみたいだね。さすが首席だよね。」


「ああ、ありがとう。どういうわけかアレックスが調子を落としていたからな。だがそれも今日までのようだ。」


「そうだね。さっきの感じだとアレクは絶好調だよね。」


「おっと出番のようだ。じゃあまた後で。よければ私も応援して欲しい。」


「いいよ。頑張ってね!」


それにしてもアイリーンちゃんも変わったな。初対面の時の汚い面影が全然ない。きれいになればなるものだな。もちろんアレクとは比べものにならないけど。




おっ、そんなアレクとアイリーンちゃんの対決か。これは見ものだ。


先ほどと同様に撃ちまくるアレク。アイリーンちゃんはそれを避けたり槍で防いだりと、あまり魔力を消費しないように対応しているようだ。しかしアレクの攻撃には絶え間がない。そのためアイリーンちゃんには全く反撃のチャンスがない。素晴らしい!


おっ、そうやってジリジリ追い込んでからの氷塊弾が命中した。そりゃあの狭い円の中では避けきれないよな。防御するしかない。しかしそれを許さないほどの威力。素晴らしい! アイリーンちゃんは吹っ飛んでいった。




「カース! 見てくれた!? 私ついにアイリーンに勝ったわ!」


「見てたよ。やったね! すごかったよ!」


ついに? 初勝利でもあるまいに。


「最近ずっと勝ててなかったの。でも今日はカースが見ていてくれたから……」


あ、なるほど。


「うんうん。いい感じだったよ。姉上みたいにめちゃくちゃに撃ってると見せかけてトドメはきっちり狙ってたよね。」


「うん。魔力の無駄遣いではあるけど、結局魔力量を増やさないことには何もできないと思って。次は教官と対戦だからしっかり応援してね!」


「頑張ってね! ぶっ飛ばしておいで!」


「いたた……それでこそアレックスだ。やはりお前はこうでなくてはな。」


アイリーンちゃん、もう起き上がってるよ。あれをくらって痛いで済んでるのか。さすがだ。


「心配かけたわね。もう大丈夫よ。カースが見ててくれるんだから。」


「元々あの決勝戦の時のような力を出されると私に勝ち目はなかったんだ。また手合わせを頼む。カース君にもお願いできるだろうか。」


「いいよ。そのうちね。魔法なしでやろうよ。」


不思議そうな顔をしているが、教えるつもりはない。セルジュ君達にすら教えてないんだから。まあそのうちバレるだろうけど。


「じゃあ行ってくるわね。全力を尽くすわ。」


いよいよアレク対教官か。そう言えば私も何ヶ月か前にここの教官と対戦したよな。あの人は元気になったのかな? 今回アレクと対戦するのは違う人のようだが。


アレクは教官相手でもやはり魔法の乱れ撃ちだ。アイリーンちゃんの時と違うのはきっちり防御されてしまっているところだ。頑丈そうな氷壁でしっかり防がれている。姉上の衝撃貫通があれば終わってるのに。ままならないものだ。




膠着するかと思われた時、教官の足元がなくなった。シャルロットお姉ちゃんも使った落とし穴の魔法だ。教官はつい円の外に手をついてしまった。ゴリ押しと見せかけてからの落とし穴。アレクの戦略勝ちだ。

おお、何やら教官に褒められているっぽい。私まで嬉しくなってしまうな。


「お待たせ。どこかでお茶でもして帰りましょ。」


「すごかったよ。見事な作戦勝ちだったね。」


いつの間にやら魔力量だってだいぶ増えてるようだし、アレクは頑張ってるなぁ。カスカジーニ山でのあれですら糧にしているのかな。偉いよなぁ……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る