第484話

おじいちゃんは孫フィーバーで酒が美味しかったらしく、かなり酔っているように見える。


「エリザベスは何か欲しいものはないのかぁ? おじいちゃんに言ってみなさい!」


「わぁいいの!? おじいちゃん大好き! 新しいドレスが欲しかったのぉ!」


金持ちのジジイに貢がせるホステスのようだ。アンリエットお姉さんやシャルロットお姉ちゃんまで群がっている。みんなご機嫌だからこれをウィンウィーンと言うのだろう。


「カースは欲しいものはないのかぁ? 遠慮することはないんじゃぞぉ? おじいちゃんに言ってみなさい!」


ちなみにギュスターヴ君はそそくさと部屋に退散したようだ。反抗期かな?


「うーん、じゃあ拘束隷属の首輪で一番強力なやつってないですか? もしくは重ねがけできる新技術とかないものですか?」


二個三個と重ねて装着できるなら簡単に解決するんだが、どうだろう?


「はっはっは、無理するでない。あんな物を付けたら何もできなくなってしまうぞ?」


「いや、もう付けてます。あんまり効かなくなってきたもので。これです。よかったら付けてみてください。」


私の首輪を外しておじいちゃんに渡す。サウザンドミヅチの革を貼り宝石で装飾してあるのでオシャレなチョーカーにしか見えないだろう?


おじいちゃんは酔った眼でシゲシゲと見つめてから装着してくれた。


「がっ! なんじゃこれは!? 拘束隷属の首輪にしては強すぎる! 何もできんではないか!」


「あ、忘れてた。それって僕が限界まで魔力を込めて作ったやつなんです。だから少しキツいのかも。」

「ピュイッ」


「お前というやつは……酔いが醒めてしまったぞ……しかし、任せておけ! 用意してやるからな!」


「わーい! おじいちゃんありがとう!」

「ピューイ」


抱きついておいた。ついでに首輪を回収だ。


「ねえシャルロット。カースってこんな奴なの。張り合わない方がいいわよ。」


「エリ姉……そうね。私は私でコツコツ頑張るわ。やっぱり循環阻害の首輪からかしら。」

「ピュイッ」




「ところで姉上、これ母上からの手紙。それからこれは僕からのお土産。兄上の分もね。」


「あら、ありがとう。アンタにしては気が回るじゃない。何これ? 出来損ないの靴下?」


それは面白い発想だ。


「これは衝撃吸収サポーターって言ってね、こんなふうに手足に装着するんだよ。ハンマーで殴られても骨が折れない優れものだよ。」


「それはいいわね。兄上には特に役に立ちそうだわ。ありがたく貰っておくわね。あぁアンタに貰ったエビルパイソンロードも兄上とお揃いのコートを仕立てたわ。」


そう言って魔力庫から取り出して見せてくる。膝下まである白いロングコートだ。飾り気がなくシンプルに仕上がっている。


「かっこよくできてるね! 二人ともお似合いだよ! だから新しい魔法教えてね!」


「分かってるわよ。教えるに決まってるでしょ。オディロンよりバカなアンタだってかわいい弟なんだから。」


うおお姉上ー! 高慢で傲慢だから友達もいない容易く人を殺すイカれたクソ女とか思っててごめんよー! 本当は違うんだね! 家族愛に溢れてるんだよね!




それから買い物の話で盛り上がってるおじいちゃん達を尻目に姉上と庭に出て、新しい魔法を教えてもらった。


名前は『衝撃貫通』

氷壁、鉄壁、石壁など硬いもので攻撃を防がれた際に衝撃だけが貫通してダメージを与える魔法だ。

やはりこの姉は……殺すことしか考えてないのか……復讐とか大丈夫なのか?


魔法の威力を上げれば素の威力で貫通するだろうが、この魔法は少ししか魔力を消費しないためかなり効率がいいようだ。

また硬いものに反応するため水壁、土壁などは貫通できないが、騎士団の鎧にはバッチリ効果があったらしい。ならば私の装備には?


試しに撃ってもらったら、効いてしまった。

服にダメージは全くないのに、腹を殴られたような痛みだった。これって威力を上げていけば内臓にも直接ダメージを与えられるやつだ。何てものを開発するんだこの姉は!


自動防御だと貫通した衝撃ごと防御してしまうから無傷なのか。その分余計に魔力を消費したってことだな。


ともあれこれで私の魔法にはホーミングとトランプル属性が付いた。これはエゲツない。実質防御不可能みたいなものだからな。

ありがとう姉上!

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